平均年収1位常連キーエンスの凄みは、営業利益率50%を生むニーズ先取り開発にあり

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2018.10.08

LabBase Media 編集部

昨年に続き、2018年も「平均年収が高い会社」ランキング1位のキーエンス(*1)。気になるその平均年収額は1861万円。大手総合商社では最高位の4位に入る三菱商事の1386万円と比べても、段違いに高い。 世界44カ国、200箇所以上に拠点に展開し、取引先は自動車工場をはじめ、半導体や電子・電気機器、通信、機械、化学、薬品、食品など、製造業のあらゆる分野で20万社以上。時価総額7兆円超の一部上場企業だ。 *1 「就職四季報・総合版」2019年版(東洋経済新報社)


主力商品は工場自動化のセンサー


同社が圧倒的な年収の高さを誇る理由は、なんといって50%超えという驚異的な営業利益率の高さにある。営業利益率とは、売上高から販管費などを差し引いた中で営業利益の占める割合、ざっくりいうと儲けの効率や収益性の指標になる。


例えば、日本を代表する自動車メーカートヨタ自動車の営業利益率は10%前後。製造業は10%を超えると優良企業と言われる中で、50%超というのは驚異的な数字であるとお分かりいただけるだろう。キーエンスは売上高の半分以上を営業利益として回収しているのだ。


さらに特筆すべきは、有利子負債ゼロの無借金経営。銀行などの金融機関から融資を受けることなく、経営のすべてを自社の自己資金と内部留保でまかなっている。そのため、仮に資金繰りや収益が悪化しても、借入先から介入を受けることはなく、倒産リスクが低い。まさに「超優良企業」の名を背負うにふさわしい経営体制だ。


キーエンスはBtoBの産業用エレクトロニクス製造業。公式ホームページでは「ファクトリー・オートメーション総合メーカー」と銘打ち、自動車業界や化学・プラント業界、電機・電子業界など、主に6種類の業界に対し自社製品を提供している。多種多様な業界のニーズに応える鍵は「現場における生産性向上」を目的とした商品の提供だ。


主力商品は工場内の製造工程で活躍する「センサー」。たとえば、製造過程への非接触型センサーの導入、製造工程における製品シリアルナンバーの管理、食品パッケージの不良品検査など、工場における検出や計測、制御の自動化する製品が目立つ。


近年は途上国の製造業の発展が著しく、人件費も世界的に高騰しつつあるため、工場自動化のニーズはますます高まっている。またこれら以外にも、タッチパネルやマイクロスコープといった、自動化に必要な幅広い製品ラインナップを揃えている。


ニーズを先取りするオンリーワン商法


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※画像はイメージです。フリー写真素材ぱくたそ


さて、それではキーエンスの歴史をたどってみよう。


主力商品であるセンサーの歴史は、1971年にインテルが世界で初めてマイクロプロセッサーの発明から始まる。やがてこれが産業用のセンサー技術に応用され、時代の潮目と言えるほどの大きな変化をもたらした。コンピューターだけでなく工場にもさまざまな電子制御装置やセンサーが導入されるようになり、より高品質なものが低コストで大量に作れるようになったのだ。1975年にMicrosoftが、1976年にAppleが創立されたのは、その時代背景と無縁ではない。


1973年、キーエンス創業者の滝崎武光氏は、プレス加工の送りミスを検出する磁気センサーを開発し、トヨタ自動車への納入に成功した。このときから、「前例のない商品は直接価値を説明しないと伝わらない」と、商社などを通さない直販体制を採用。


1974年には前身のリード電気を創立。まだ工場のセンサーやロボットが普遍的ではない時代に勝負をかけた。時代を先取りし、これからは産業界の合理化が重要になると踏んだのだ。


それまで続いていた高度経済成長は前年1973年のオイルショックで止まり、その影響で、生産現場の合理化の機運が高まっていた。当時からすでに、顧客すら気づいていない潜在的なニーズを掘り起こし、他社は作らない付加価値の高いオンリーワン商品を先取りしていた。


その後は順調に業績を伸ばし、1985年にアメリカ現地法人を設立。1986年にKey of Scienceに由来してキーエンス(KEYENCE)へ社名変更した。


1990年に東証一部上場を果たし、アメリカやアジア、ヨーロッパへと販路を拡大していく。2015年、創業者の滝崎氏が会長職を引退。それまでに44カ国、200拠点体制を確立し、2017年は純利益1206億円を達成した。現在も旺盛な世界需要を背景に、業績を伸ばし続けている。



### 強さの秘密は、直販ができるコンサルティング営業&ファブレス


キーエンスがこれほどまでに成功したのは、現役社員も語るとおり「徹底した合理化」を突き詰めた生産体制と経営への姿勢にその理由がある。その裏側を見てみよう。


1 ファブレスによる経費削減


ファブレスとは、自前で工場を持たないビジネスモデル。任天堂やappleもファブレスを採用している企業として有名だ。工場を持たないことで世界の潮流や時流に合わせて柔軟に生産体制を変えられるだけでなく、固定費を抱えずに済むという利点がある。


2 コンサルティングセールスで「新製品」を「業界標準」に


同社が提供する新商品の実に7割は「世界初」や「業界初」。キーエンスの特徴は、営業部隊の徹底したコンサルティングセールスとPDCA回転で、新製品を業界の標準品へと変える力強さだ。


新たな製品を開発したら、まずテスト機をクライアントの現場に持ち込み、自動化の改善提案をおこなう。そこで得た評価や新たに発見したニーズを企画・開発部門へフィードバックし、製品の改良に取り組んでいる。このサイクルを回し続け、自社製品をどの工場でも使える”標準品”にまで高めることで、数多くの工場に導入。


このようにして、キーエンスは世界初や業界初の製品を「世界標準」や「業界標準」変えていく仕組みを作っている。コストのかかるカスタム品を減らし、標準品だけを組み合わせてニーズを満たせるように製品を作ることで、。量産効果が生まれコストを下げることもできる。標準化した商品で市場シェアを握ることで横展開を可能にし、高い利益率を達成しているのだ。


オンリーワン商品のため安売り競争になりにくく、価格競争に巻き込まれにくい点も見逃せない。顧客ニーズに合うものがキーエンスの商品しかなければ、たとえ高くてもそれを買うしかないからだ。


3 直販スタイル


センサーなどのメーカーは、製品を販売する際に代理店や商社、卸売業者を通すのが通例だ。しかし、キーエンスでは世界中にダイレクトのセールス部隊を配置している。このしくみによって、正確な需要予測と見込み生産、「全世界当日出荷」を可能とし、このスピーディーなプロセスが顧客満足度に直結する。


4 企画開発は「より小さく」「より強く」「より速く」


メーカーにとって営業力と両輪を成す企画・開発力は、「より小さく」「より強く」「より速く」というこだわりのもと製品づくりに携わる。


より「小さく」することで、これまでどの製品も届かなかった場所でもセンシングをおこなえる。より「強く」することで交換頻度を下げ、コストを下げられる。より「速く」精度を高めることで、一日に何千何万と製造するラインの生産性を向上させる。


この理念に則り、寸法測定器やデータロガー、レーザマーカーなど、工場自動化に必要なあらゆる商品を網羅。現在ではほかにも、研究開発・設計や品質管理、物流・倉庫管理システム、さらには小売まで含めたトータルソリューションを提供している。


工場では生産性を上げることが正義だ。生産性が上がれば不良品が減り、使うエネルギーの省資源化につながり、コストを下げられる。
これらの超合理的な企業文化から、高い利益が生み出されているのだ。


おわりに


こうしてみてみると、顧客からニーズを探り、世の中にないオンリーワン商品を合理的に作り続けてきた姿勢が伺える。


「ものづくりに携わりたい」とメーカーや関連業界を志す就活生は多い。BtoCの「ものづくり企業」が目立つなか、BtoB企業にも目を向けてみてはどうだろうか。徹底した顧客目線と合理的な生産体制を貫くキーエンスは、世の中にない価値を生みだしたい就活生にとって、魅力的な企業であると言えるだろう。


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ライター
山岸 裕一

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