「IoTのTを武器に、世界一を奪還する」 生活とともにあるパナソニックだから持てるAI時代の戦略

インタビュー

2018.12.17

LabBase Media 編集部

家電製品から産業機器、さらには住宅設備など多角的な事業を展開しているパナソニック。超一流のモノづくりで世界をうならせる同社が今、本気で取り組んでいるAI領域についてAIソリューションセンターの戦略企画部、部長である井上氏に話を伺った。

  • 井上 昭彦

    パナソニック株式会社

    部長


IoT時代への変化でチャンス到来!目指すは現代の覇者


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――近年の時代の流れのなかで、パナソニックがたどってきた道のりを教えてください。


2000年頃から、デジタル家電を皮切りにITへの投資にも力を注ぎ始めました。この頃は高機能な家電が飽和していた時代だったため、弊社だけでなく、各社が多機能化をはじめとした付加価値で勝負をしていた時代です。


その直後にiPhoneが登場。流れに乗って北欧系のIT企業が台頭してきた頃、家電を主力としていたパナソニックは、その存在感や持ち味を十分に発揮できず、2015年頃まで苦戦を強いられました。


――そのような危機的状態から、どのように立て直しを図られたのですか?


今、時代がITからIoTに変わりつつある。弊社は高品質な製品を企画製造し、多くのお客様にとどけてきました。その点において超一流の企業であるという自負があります。IoTのT側、つまりモノ視点から見ると、私たちにまたとないチャンスが到来しているのです。


IT業界の人たちはI側から攻めてきていますが、パナソニックはT側から攻める力と、巨大企業を相手に戦う力を十分に持っている。今は、Tを基点にIの方に攻めているところです。詳しくは後ほどお話ししますが、家電とAIを組み合わせてイノベーションを起こそうとしています。


デジタル家電で培った技術にAIの技術を活かし、IoT時代の覇者になること。それが今パナソニックが目指している姿です。


スローガンは「A Better Llife」と「A Better World」


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――「IoT時代の覇者になる」という目標を達成するために、社内で何か改革などは行われたのでしょうか?


パナソニックは創業100周年の2018年に向けたパナソニックグループの目指す姿として、「A Better Life, A Better World」を新たなブランドスローガンとして制定しました。


”A Better Life”とは、人が幸せになる世界の実現を目指すべく、AIやIoT、ロボティクスの技術でお客さまへの貢献を目指す。”A Better World”は、社会全体を幸せにすべく、主にエネルギーの分野で社会貢献を目指す。そんな思いを込めたスローガンです。


また、2015年には社内にAI強化推進室という部署を作り、パナソニックもAIの研究開発に本腰を入れ始めました。


――AIという新たな領域に踏み込むにあたり、どのような戦略を立てて取り組まれてきたのでしょうか?


質の高い人材の確保が最も重要であると考え、「内部人材の育成」「ワンストップ採用」「外部からの招聘(しょうへい)」の3つに取り組みました。


まずは育成について。デジタル家電時代にソフトウェアの技術者の採用を強化し、社内で育成していました。そうした素地を持つ技術者が既に社内に多くいるため、AI技術に関する飲み込みも早い。社外からコストをかけて優秀な人材を採用するのではなく、社内の人材を強化する形で伸ばしていくという方針です。


とはいえ、内部の育成だけでは競争に勝てないので、もちろん採用にも注力しています。特に、生まれたときからインターネットがある環境下で育った世代は、我々の世代と比べるとモノの捉え方や考え方が異なり、当然開発スタイルもまったく違う。これからの時代の製品や技術を作り上げるためには、そうしたデジタルネイティブの視点も不可欠です。


また、当時は日本で初の「AIコース」の採用枠を作り、ワンストップ採用を実施。これまでは事業部ごとに採用を行っていましたが、特定の事業にとらわれないことでより広い層に訴求することができ、その分野に長けた優秀な人材を獲得できました。


3つ目は、クロスアポイント制度の活用や他社の買収を通じた、外部のノウハウや有能な人材の獲得。こうしたことで、これまでにない新たなディスカッションやアイデアが生まれ、研究開発をより高度化させることに成功しました。


これら3つの戦略を立てて実行し、常に質の高い人材を確保できるよう努力し続けています。


――AIの分野において、パナソニックだからできることや、新しい価値を生むために今後注力する分野があれば、お話しください。


「世界中で既に開発されてるAIの技術を、弊社の事業にいかに活用するか」いう方針で開発を進めています。つまり、既存の技術と弊社の強みをかけ合わせ、いかに新しい価値を創造できるかということです。


AI領域に新たな価値を生むために、 ”E3−AI(イーキューブAI)”というコンセプトを打ち出しました。”Embedded”と“Evolution”と“Explainable”、3つのEの頭文字を表したものです。


”Embedded”が意味するのは、高性能化かつ小型化の実現。巨大なディープラーニングのネットワークを小さなチップに組み込んで製品に搭載するため、面積を小さくしても精度を落とさない技術を開発しています。


“Evolution”は、日々フィールドで技術や製品をアップデートして、製品を出したあとの品質も担保するという心構えです。これは、技術の精度を上げることや、最先端を開拓していくことよりもより重要であると考えています。


最後に“Explainable”。これは、AIの学習に関する指針です。AIにデータを学習をさせた結果から、認識・学習できないデータの同定と分析を行い、より精度を上げるための追加学習の手法を提案する。課題の原因と改善を分析し説明可能であることが、AIの性能を向上させる上で非常に重要であると考えます。


名だたる世界企業から、「世界一」を奪還したい


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――谷口先生も関わられる有給インターンについて伺います。このインターンではどのようなことをして、どういう人材に来てほしいのかをお聞かせください。


参考)
「家電の雄パナソニックだからこそ、意味を解するAIが求められている」 立命館大学谷口教授が語る、国際学会を見据えた有給インターン
トップレベルの国際学会も視野に入れ、企業と学生がともに成長するパナソニックのAI有給インターンとは


今回のインターンは学生の皆さんには専門家として参加いただき、優れたメンターと一緒にトップクラスの国際学会への論文投稿や商用フェーズでの実装も視野に入れた共同研究を行います。


各インターン生のテーマはコミット決定後に相談をして決めますが、このミッションを達成するために力を貸していただける、世界レベルへの挑戦に意欲的な学生さんにぜひとも来ていただきたいですね。


われわれにはデータもあるし、テーマもある。アルゴリズムの議論に入っていただき、ときには学生さんのアイデアも取り入れながら、実装までお願いしようと考えています。それらをこなせる方と連名で、世界トップレベルの国際学会に研究を通したいですね。


また、今は自動車分野にAIを活用する流れが社内でホットなため、この領域でディープラーニングを商用フェーズに実装する仕事がしたい学生さんも歓迎しています。


――井上さんご自身は、パナソニックでAIに携わる中で、どのような志を持って活動されていますか。


パナソニックって、世界トップレベルの会社だったんですよ。ここ数年は時代の潮流もありIT企業に押されていましたが、屈したままでは絶対にダメだと。


世界中探しても、お客さまが日常で直接触れる製品をこれだけ多く持っている会社はありません。先ほどお話ししたように、IoTの時代がトレンドとなった今、これまで積み重ねてきた強みと実績を新たな技術とうまく組み合わせられれば、パナソニックというブランドを再び復活させることができるはずです。


また必ずや世界一の称号を奪還したいという思いを、ひそかに胸に秘めています。


――最後に、パナソニックのAI領域の中枢部から学生に伝えたいことを教えてください。


パナソニックにはものづくりを通して培ってきたデータとドメイン知識が豊富にあります。積極的にAIを社会で実装したいと考える方々にとっては、有給インターンは絶好の機会だと思います。皆さんの持つ最新の技術と、われわれの積み重ねてきたものづくりの技術をかけ合わせれば、きっとお客さまの感動を呼ぶ技術や商品が生まれるはずです。


また、技術力だけでなく、問題が与えられたときに、どの道具を使って解くべきかを判断できる「目利き力」も重要です。ちまたではディープラーニングがはやりですが、必ずしも全ての場合においてディープラーニングが最適解であるとは限りません。時にはベイズ理論や従来のSVM、機械学習のほうが課題をクリアするために適しているケースもあります。


全てを解決できる万能な手法はない。「この課題はどんな手法を使えば解決できそうか」を見極め、ケースに応じて柔軟にたくさんの手法を使い分けできるような、そんな人材を求めています。


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編集後記


幅広い分野で活躍しているパナソニックがAIに本気で取り組み出した今、産業としてのAIではなく製品やサービスとしてのAIが、私たちの生活に溶け込む日はそう遠くない。リアルAIプロジェクトのミッションである世界最難関の国際学会に論文を通すことも、パナソニックだからこそ実現できるミッションである。同社が若手AI研究者の注目すべき企業であることは疑いようもない。


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ライター
古谷 麻衣
カメラマン
児玉 聡

企業情報

パナソニック株式会社

◆経営の考え方  2018年創業100周年を迎えるパナソニックは、ブランドスローガンA Better Life, a Better World のもと、より良いくらしを創造し、世界中の人々のしあわせと、社会の発展、そして地球の未来に貢献しつづけることをお約束します。 ◆事業内容 部品から家庭用電子機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、および住宅関連機器等に至るまでの生産、販売、サービスを行う総合エレクトロニクスメーカー ◆4つの事業領域 パナソニックは現在、「家電」「住宅」「車載」、そして「B2B」の4つの事業領域に注力しています。「家電」「住宅」「車載」3つの事業については、、「最終のお客様に広く価値を提供すること」を通じて、成長を目指しています。「B2B」事業は、パナソニックの強みを活かすことのできる、「業界」、「商材」、「地域」を明確にすることで「お客様の競争力強化に貢献すること」を目指します。 ◆重点技術分野 パナソニックでは10年ビジョンを掲げ、より良いくらしと社会の実現へ向けて、以下の領域の技術開発に注力しております。 <IoT/ロボティクス領域> 人工知能技術、センシング技術、メカトロニクス技術、UI/UX技術、ネットワーク技術 <エネルギー領域> 創エネルギー技術、蓄エネルギー技術、エネルギーマネジメント技術、パワーエレクトロニクス技術、水素関連技術 パナソニックの研究、技術に関する詳細につきましては下記HPをご参照ください。 ・パナソニックの技術について   https://www.panasonic.com/jp/corporate.html#technology-design ・AI特設HP   http://tech-ai.panasonic.com/jp/

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