中国発のモンスター企業HUAWEI、豊富な研究資金で世界を席巻

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LabBase Media 編集部

中国発のモンスター企業HUAWEI、豊富な研究資金で世界を席巻

信じられるだろうか。今から20年前、今あなたの手に握られているスマートフォンの存在を知る人はほとんどいなかった。 その小さなデバイスは何千曲もの音楽をダウンロードし、世界中から届くニュースを瞬時に受けとり、財布にもカメラにもなる。撮影した写真や動画は思うままに編集が可能で、即座に世界中の人々へと共有される。たとえ親しい友人が明日地球の反対側へ行ってしまったとしても、毎日無料で顔を見て会話ができる。 デバイスにはもはや、親指で押すはずのボタンすら存在していない。20年前、こんな未来を誰が想像できただろう。世界はいよいよ手のひらへと収まりつつある。   特筆すべきは、スマートフォンが決して経済的な豊かさを象徴していないということだ。途上国の地下鉄やバスでひっきりなしに着信音を鳴らすそれは、見覚えのあるスマートフォンばかりだ。 スマートフォンがここまで世界に拡大したきっかけは、Appleが2007年に販売を開始したiPhoneに他ならない。それから5年と経たないうちに、林檎のロゴを街で見かけない日はなくなった。 しかし、かつてAppleが独占したスマートフォン業界に、新たな勢力が存在感を増しつつある。中国の通信機器メーカーHUAWEIだ。2018年の全世界シェアでAppleやSAMSUNGと熾烈な争いを繰り広げている。名だたる競合を相手取るHUAWEIは、端末だけでなく、自社の持つネットワーク事業との連携を強みとし、スマートフォン業界における次世代の覇者となりつつある。 今回は、徐々に世界を席巻する中国発のモンスター企業の歴史と戦略、惜しみない研究投資の真意に迫る。


中国発のモンスター企業HUAWEI、短く太い30年史


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現在170カ国に進出し、世界で18万人以上の社員を抱えるHUAWEI。その歴史は30年ほどであり、伝統的な電機メーカーと比較すると浅くはあるものの、すでに大きなインパクトをグローバル規模で残している。世界の通信事業者トップ50社のうち45社がHUAWEIの通信ソリューション・製品を使用していることからも、同社製品サービスの普及具合がうかがえよう。


1988年、HUAWEIは香港にほど近く、近年経済特区として注目される深圳市に設立された。創業者は元人民解放軍の任正非(Ren Zhengfei)。初期はインフラ整備用の通信機器ベンダーを担っていた。通信事業者向けのネットワーク事業は2017年度の売上構成比において49.3%を記録し、HUAWEIのコア事業として君臨している。2012年には、携帯用基地局数でスウェーデンの通信機器メーカーEricssonを上回り、世界一の通信ベンダーとなった。


設立当初は顧客の多くが中国電信をはじめとする中国国内の企業であったが、1997年に香港のHutchison Whampoaと契約したことを契機に、その後続々と海外クライアントとの契約を結んでいく。アジア、ヨーロッパ、アフリカ方面を中心に大企業向け事業を拡大。2017年度の地域別売上高比率でEMEA(欧州、中東、アフリカ)は、中国本国の50.5%に次ぐ27.1%を占めている。


2003年7月に端末事業部が設立された。スマートフォンの販売当初は安価な普及品としての印象が持たれ、同業他社からはコピー製品として非難を浴びた時期もあった。


日本法人であるHUAWEI JAPANは、2005年より創業。中国本国や世界に与えてきたインパクトと比較して日本での存在感はさほど大きくなく、当時はAppleやSAMSUNGの後塵を拝していた。


この状況を大きく変えたのが2014年の日本における通信の自由化である。まだスケールの小さかったSIMフリー市場へと参入し、低価格ながら高いスペックを実現した「Ascend P7」や「Ascend Mate7」がヒットした。


docomo、au、Softbankの3大キャリアが通信事業のほとんどを握っている日本において、他社から無線通信インフラを借りて音声通話やデータ通信をするMVNOの認知を広めた。これにより、日本で新たなスマホ市場を創造したことが、HUAWEIの成功につながった。


快進撃の一方、近年では政治的観点から見た懸念要素もある。


2018年12月、アメリカのトランプ政権は対イラン制裁に違反したとしてHUAWEI副会長兼CFOの孟晩舟(Meng Wanzhou)をカナダで逮捕。これには、トランプ政権が脅威と見なす中国製品を排除したい思惑が垣間見える。同時に、創業者の任が中国共産党が指導する人民解放軍の出身ということもあって、HUAWEIが国策企業なのではないかという見方もされている。


HUAWEIは国との関係を断固否定しているが、政治的な理由でのネガティブキャンペーンの苦境をどう乗り越えるかが今後の業績を左右するだろう。なお、今回の事件はデジタル冷戦の勃発につながりうるとして、多方面でその動向が注目されている。


躍進を続ける強さの理由ーー人材起用法とネットワーク×端末


HUAWEIの事業は


①通信事業者向けの事業
②コンシューマー向け端末事業
③法人向けICTソリューション事業(エンタープライズ事業)


の3つに大別される。


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参照元: 2017年度アニュアルレポート|HUAWEI


2017年の総売上高は、日本円にして約10兆4,336億円、前年比の15.7%増にもなる。SAMSUNG 、Apple、Ericssonなどのライバル企業の業績が近年停滞しているのに対し、HUAWEIは本国を中心に爆発的な成長を続けている。


各国のライバル企業と比較したHUAWEIの特徴として、大きく分けて2点の強みが挙げられる。


1つ目は人材の起用方法。競合メーカーの多くは、自国の社員を各国の現地支社に派遣しているのに対し、HUAWEIではそれぞれの地域のUIに対応するために各国出身者でUIチームを構成。UIが命とも言えるスマートフォンにおいて、デザイン思考の重要性を早期から認識していた。


2点目は、通信事業を軸としてきたがゆえに、他社に先行して最新の技術を実装できる点が挙げられる。5G時代が目の前に迫る今、5G端末の新市場においてユーザーのパイをいかに取るかは各社が最も注目している課題の一つである。ソフトとハードの両軸を迅速にアップデートし続けられるという強みは、5G市場において強力な武器となるだろう。


「中国製」の認識を変えるーー豊富な研究開発費と最強の技術集団


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低価格帯の商品で市場を席巻したHUAWEIだが、近年は日本円にして10万円を超えるMate 20 Proなどの高級機も発表。技術とクオリティーの向上に投資を惜しまない姿勢によって、「安価」のイメージは変わりつつある。


全従業員の45%である8万人がR&D分野に従事し、2017年度の売上高のうち14.9%の約1兆5,509億円がこの分野に投資された(10年間では計約6兆8,123億円)。Appleの同年の研究開発費の売上高比率が5.1%であることに比べると、注力の具合がうかがえる。


世界知的所有権機関(WIPO)の発表した「 2017年に国際出願された特許の件数」では、4,024件の特許を取得したHUAWEIが世界トップ。保有する特許の数は合計で74,307件に上る。世界で初めて5Gに対応した「HUAWEI 5G CPE」をリリースするなど、今や端末事業の先頭を走っている。


ハードウェアに関しても、競合が新製品を発表すれば即座に対抗製品のリリースに取り掛かる。カメラの性能やユーザーインターフェースなど、確かな技術力に裏打ちされた品質は各国で評判が高く、同社の質とブランドイメージは大きな転換点を迎えていると言えるだろう。


2018年、日本の学士卒新卒エンジニアの月給40万円以上という雇用条件が話題を呼んだが、今、世界では優秀なエンジニアの激しい争奪戦が繰り広げられている。


コミュニケーションテクノロジーやコンピューターサイエンスに関連する優秀な人材を見つけることを目的として始まった Huawei Innovation Research Program(HIRP)には、30以上の国や地域から400を超える大学が参加。同社は参加者に研究資金や長期のプロジェクトへのアサインを提供し、世界の優秀な大学や学生とのパートナーシップを強化している。


もしも研究の社会実装に興味があるのであれば、先端技術や製品開発への惜しみない投資をもってして広くスケールできるHUAWEIの現フェーズは極上の環境と言えるだろう。研究者を最大限に評価するHUAWEIは、エンジニアにとってこの上なく野心的でチャレンジングな環境を用意している。


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ライター
岩辺 智博
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