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自分が好きなことを、追求してもいい――「ミス理系」五十嵐美樹さんが語る、サイエンスコミュニケーターのミッション

インタビュー

2019.02.13

LabBase Media 編集部

型にはまった就活に喝! 自分の「好き」や興味を極めに極め、誰にもまねできないユニークな理系キャリアを築いている人に話を聞き、キャリア選択への”ドキドキ”や”ワクワク”を刺激する連載「理系キャリアの拓き方」。 第2回に登場いただいただく五十嵐美樹さんは、学生時代に科学の面白さに目覚めて理系を選択。卒業後は大企業のエンジニア、ベンチャー企業の人事・広報を経て、東京大学大学院に籍を置きつつ「サイエンスコミュニケーター」として科学を伝える活動を続けている。「自分らしい働き方」を模索し続けている彼女の生き方について伺った。

  • 五十嵐 美樹

    東京大学大学院学際情報学府(科学コミュニケーション専攻)修士課程在学中

    東京大学大学院科学技術インタープリター14期生

「ミス理系」を社会に役立てるために、何ができるのか?


――五十嵐さんは中学生の頃の授業がきっかけで、科学に興味を持ったそうですね。そこから現在に至るまでの経緯を教えていただけますか?


初めて虹を作る実験をしたときに、日常生活と科学がつながっていることに感動し、科学の勉強を始めました。もともとそんなに理系の科目は得意な方ではなかったのですが、この体験から”勉強してみたい”と思うようになったことを覚えています。


大学では科学について広く学ぶために、理工学部機能創造理工学科に進学。自作したレースカーでタイムを競う競技への出場など、さまざまなことを経験しました。


転機は、理系の面白さを伝えることを目的とする「ミス理系コンテスト」でグランプリを獲ったことです。これまでの多様な経験を活かせたことや、選んでいただいたのだからその分精進したいという想いで、「社会と科学をつなげること」をキャリアの柱にしようと決めました。


その後、株式会社東芝で社会インフラを支える機器のエンジニアとして働き、ベンチャー企業エルピクセル株式会社では理系の広報・人事を担当しました。現在は全国各地でサイエンスコミュニケーターをしながら東大の大学院に在籍し、研究も行っています。全て社会と科学がつながっていることが実感できるお仕事です。


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――変化に富んだキャリアですよね。大企業に入社した後にベンチャー企業に転職したのはなぜだったのですか?


社会に出て気づいたのは、社会や経済の動きについて、自分はまるで知らなかったということです。科学の専門領域のことはよく分かっていたつもりですが、お金の動きやビジネスに対する知見があまりにも不足していて、「このままではマズいのでは」と危機感を覚えました。


そんなときに出会ったのが、2社目として勤めることになる エルピクセル株式会社です。ライフサイエンス分野の画像解析というとがった科学技術があるところに魅力を感じただけでなく、科学技術を社会に実装していくまでの多くのプロセスに携わることができるのではないかと感じました。自分のキャリアに感じていた危機感と、純粋な好奇心から代表と会ったその日にそのまま転職を即決したんです。


――かなり大胆な決断をされたんですね! エルピクセルではどのようなお仕事をなさっていたのですか?


入社した当初はまだ正社員が6名ほどでしたので、人事や広報、教育事業など、希望した多様なお仕事を任せていただきました。科学技術がどのようなメンバーによってどのように社会に実装されていくのか、一から知ることができた、非常に貴重な経験です。


そして、社会人になってからはずっと、これらのキャリアと両立して平日の夜や土日に副業としてサイエンスコミュニケーターを続けていました。大企業、ベンチャー企業で学ばせていただいたことを活かして、次第にこの活動に専念したいと思うようになりました。


というのも、サイエンスコミュニケーターは研究者などによりボランティア同然で行われているケースも多く、職業として確立されているとは言い難い状況です。しかし、経験を重ねていくうちに楽しくて「サイエンスコミュニケーターを職業にしたい」と思うようになりました。そんなときに東大大学院にこの領域を体系的に学べる”科学コミュニケーション”という領域があることを知り、勉強をして進学したんです。


失敗よりも後悔が怖いから、若いうちにリスクを負う


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――新卒入社の頃からたどってみると、かなりの紆余曲折を経ているのですね。


そうですね。ただ、やはり応援していただいたミス理系での活動をどうにかして社会に役立てたいとの想いはずっと変わらないです。企業に勤めているときも実験教室の企画書をたくさん書いて、さまざまな科学館や科学施設に送ったんです。そうしたら、意外にも働かせていただいていた東芝の科学館が受け入れてくださって、そこで多くの方々に支えられながらサイエンスコミュニケーターとしての経験を積ませてもらいました。どんな道を歩んでも、無駄なことはないんだなと思う経験でした。


――理系学生は研究室一本の生活を送る人も多いのですが、五十嵐さんは違いますよね。キャリア選択についてはどう考えていましたか?


私はさまざまな道を経ていますが、「社会と科学をつなぐ」という軸だけは一貫して持ち続けているんです。そのときはただの「点」だったとしても、チャレンジを続けていくことで、多くの方々の支えによって点と点が「線」になっていく瞬間がたまに訪れます。自分のやりたいことにどうしてもあらがえない性格なので、”今日をやり直したい”と思わないように行動するようにしてきました。


人生の選択をするのに、若いうちのほうがリスクは確実に少ないと思っています。”今しかできない”ということも多くあると思うのでそれを逃さないように、若くてリスクを負えるうちに、どんどん挑戦しようと思ってきました。


――失敗を恐れない決断力も大切ですよね。キャリア選択には「決断」がつきものですが、五十嵐さんは何を大切に決断してきましたか?


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最終的には、直感です。自問自答したときに感じた気持ちがワクワクしているかで判断してきました。直感は、自分のこれまでの人生で蓄積された膨大なデータがもとになっているので、自分が進むべき道を示してくれると考えています。ピンと来たらやる、迷うのであれば何かあったときに言い訳が出てきて最終的に周りに迷惑をかけることになるのでやりません。直感を磨くだけでなく、自分の気持ちを信じることも大切にしています。


それから、失敗するなら早めに失敗しようと思っています。実は、私は失敗よりも後悔のほうが怖いんです。失敗は次につなげばいいけれど、後悔が次につながったことはないので。


科学実験に関しても、子どもたちには、完璧な成功だけではなく失敗も見せていこうと考えています。実験はほとんどの場合、初めはうまくいかないものです。だから失敗して、何が分かって何が分からないのか自分で気づいて、学んでいってほしいと思っています。失敗は必ず糧になるはずですから。


スキルや能力は、人生を必ず守ってくれる


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――五十嵐さんの今後の展望についてお伺いします。まず、この先実現したいことを教えてください。


マイノリティーの環境に置かれる子どもたちが科学を学んでいくことをサポートしたいと思っています。例えば、日本はOECD諸国の中でも工学系に進む女性の割合はワースト1位です。理工学部に在籍していたときも男女比が9:1でしたし、エンジニアの職場も女性が極端に少ないことを経験してきたので、自分にできることからサポートしていこうと思っています。


信じられないかもしれませんが、サイエンスショーなどを行うと「男性ばっかりの中で大変ね」というイメージを持っている方もまだまだいて、そのせいか「自分に理系は向いていない」と考えている女の子も多くいます。ですが、私も最初から理系だったわけではないですし、虹の実験をして初めて科学を「好き」と気づくことができました。だからこそ、早い段階で女の子が自然と科学に関わり、「科学が好き!」「I want to that!!」と思えるような機会をこれからも作り続けていきたいです。


――強い使命感が伝わってきます。研究活動も今後継続されるのでしょうか?


科学コミュニケーションの研究と実践をつなげることは実はとても難しいのですが、両方を行っていることが自分の強みでもあると思いますし、なによりも研究で学んだことを子どもたちにも還元できることがうれしいので、今後も両立を頑張りたいと考えています。


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――女性はライフイベントと仕事の両立に悩むこともあると思います。五十嵐さんはどうやって両立していこうと考えていますか?


仕事が楽しく「ライフイベントよりも仕事が第一」と考えていた時期もありました。しかし最近は、自分の裁量で仕事をすることが増えてきたためか、女性としての人生も楽しむことで子どもたちによりよいパフォーマンスが届けられるのではないかという考え方に変わってきました。


今の仕事が大好きなので、自分のスキルや職業の確立に力を注ぎながら、ライフイベントも含めてその時々で決断できたらいいなと思っています。スキルさえあれば、どこにいても仕事は見つけられる。そういう意味で、スキルは人生を守ってくれると思います。とはいえ、今の時代1年ごとに環境が激変するので、あまり先のことを”〇〇すべき”と決めすぎて苦しまないようにしています。


――最後に、理系就活生に向けて、進路を選ぶ上での考え方についてメッセージをいただけますか?


人に相談することは良いと思うのですが、最終的な選択を自分以外に委ねたり、自分の判断基準以外のモノサシに惑わされて物事を決めたりすると、どちらに転んでも”自分を信じなかった”と自信を失う選択になると思います。何かを選ぶときは、「それは本当に自分がやりたいことなのか」と自問自答して、純粋な自分自身の反応を信じてもいいのではないかと思います。私ももともとは頭で考えすぎて悩みやすい性格なので、これが意外と勇気のいることなのですが、人生一度しかないと思って自分の手で人生を選び取ってほしいと思います。


編集後記


いきいきと話す五十嵐さんから、自分で人生を選び取ってきた自信を感じた。一度きりの人生、「失敗よりも後悔をすべきではない」という彼女の潔さが、彼女の人生をより一層強く照らしているのではないだろうか。女性として、人としてのパワフルさを感じさせてくれるインタビューだった。


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ライター
金指 歩
カメラマン
森屋 元気

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