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■ 登壇者プロフィール:近藤 誠一(こんどう せいいち)
株式会社レゾナック フェロー / 工学博士
半導体プロセス技術の第一人者。半導体製造に不可欠なCMP(化学機械研磨)において、従来の常識を覆す「砥粒フリー研磨技術」を確立し、傷をつけずに削る”という革新的な技術を発明。半導体の微細化・高性能化を支える基盤技術の進化に大きく貢献。
日立製作所・ルネサスエレクトロニクス(デバイスメーカー)から、日立化成・レゾナック(材料メーカー)へとキャリアを広げ、企業の枠を超えて日本の半導体競争力向上に寄与。
特許出願120件以上、論文170報超の日本の半導体CMP技術を世界標準へと押し上げた立役者。

■ 「自分はノーベル賞を獲れない」と悟ったエリートの逆転術に迫る!

近藤氏は、自身の40年の生々しい現実を語りました。
1. 基礎研究で感じた自分への限界
日立製作所の基礎研究所。そこは、ノーベル賞候補の研究者をはじめ、日本の頭脳が集結する「理系の聖域」でした。ネイチャー誌に論文が載るような輝かしいスタートを切った近藤氏。しかし30歳を過ぎた頃、大きな壁に直面し自信を失って行きます。
「もし無限の予算と時間を与えられたとしても、自分はノーベル賞を獲れるだろうか?」
2.異動先で絶望の中、見つけた「不思議な武器」
絶望の中、近藤氏は所長に直談判し、中央研究所へ異動します。
そこには、すでにその道で7年のキャリアを積んだプロの同期たちがいました。
飛び交う略語、理解できない専門知識。かつて基礎研究にいた近藤氏は、ここでは「何も知らない新人」になってしまいます。同期と同じ土俵で戦っても、7年の差は永遠に埋まらない。他の人が持っていない特徴的なものを早く身に付けなくてはならないと感じました。そこで近藤氏が取り組んだ研究テーマが、当時は実用が難しいプロセス技術とされた「CMP(研磨)」でした。
これが後に近藤氏の未来を大きく左右するきっかけになりました。
3. 「半導体ウエハが、虹色に輝いた!」どん底で見つけた一発逆転のCMP技術
先輩たちが既存のドライエッチ技術で苦戦するなか、近藤氏はあえて「研磨」という新しいアプローチを試みます。基礎研究で培った物理と材料の深い知識を、泥臭い現場の技術に掛け合わせたのです。
結果は、一発で「不良率ゼロ」という驚異的な成功。
それまで誰も成し遂げられなかった完璧な仕上がりに、研究チーム内に衝撃が走りました。
当時、半導体の微細化における最大の壁は多層配線の形成によって生じる表面の凹凸でした。近藤氏は基礎研究で培った物理的知見を総動員し、1ナノメートル(原子数個分)の狂いも許さない「究極の平坦化」をCMPで実現することができました。
これが世界の半導体プロセス技術を大きく変えるきっかけとなり、国際学会で発表することで近藤氏は一躍有名な研究者になりました。
(まとめ)40年を振り返って伝えたい、理系キャリアを生き抜く「2つの真理」
波乱万丈のエンジニア人生を歩んできた近藤氏。日立製作所の基礎研究所から始まり、リストラや8年間の出向・転籍、そして経営層への登用。激動の40年間を経て、今、次世代を担う学生に贈る「生き残るための教訓」は驚くほどシンプルで、かつ鋭いものでした。
1. 追いつこうとするな。異能であり続けろ
新しい環境に飛び込んだとき、そこには既にその道で何年も研鑽を積んできた「プロの同期」が必ずいます。近藤氏が32歳で中央研究所に異動した際も、そこには7年のキャリア差がありました。
「普通に努力して、彼らに追いつこうとしても無理なんです。7年の差はそう簡単には埋まらない。だから私は、追いつくことをやめました」
近藤氏が取った戦略は、「基礎研究の素養を持つ開発者」という独自の立ち位置を確立することでした。近藤氏は物理・材料の深いバックグラウンドを武器に、論理的かつ異分野の視点からアプローチしたのです。
結果として、誰も成し遂げられなかった「新しいCMP方式の確立」という独自の成果を上げました。同じ土俵で戦わず、自分のアイデンティティを掛け合わせることこそが、替えのきかない存在になりました。
2. 「35歳」までに、信頼という名の貯金を作れ
「50代、60代になっても面白い仕事ができるかどうか。その勝負は35歳までに決まっています」
40歳を過ぎてから大きな成果を上げたとしても、周囲からは「たまたま運が良かった一発屋」と見なされるリスクがあります。一方、若いうちに一通りの仕事を完遂し、「この人に任せれば何とかしてくれる」という信頼を勝ち得ている人は、その後の評価の安定感が違います。
35歳までに泥臭い仕事も、難しい課題も、逃げずにやり切る。そこで積み上げた「信頼という名の貯金」が、その後に訪れるリストラや予期せぬ環境変化から自分を守り、長く活躍し続けるための土台となるのです。
理系学生へのアドバイス
今の研究テーマが将来直接役に立つかどうかは分かりません。
しかし、「一つのことを深く掘り下げた経験」と「若いうちにやり遂げたという信頼」は、あなたがどこへ行っても通用する最強のポータブルスキルになります。まずは目の前のことを頑張ってみましょう。
■ 参加した学生の声

イベント終了直後、興奮冷めやらぬ学生の皆さんに、参加した本音を伺いました。
博士就職=不利という思い込みは間違いだったと気づくきっかけになった
Aさん(埼玉大学大学院 修士2年 / 有機合成系研究)
──今回のイベントに参加したきっかけを教えてください。
Aさん:4月から博士後期課程に進学することが決まっているのですが、これからの3年間の生活をどこに向かって歩んでいけばいいのか、その指針を立てるきっかけにしたくて参加しました。
──実際に近藤氏の話を聞いてみて、いかがでしたか?
Aさん:博士進学に自信を持つことができ、未来にワクワクした感覚を得ています!博士の就活は修士に比べて専門性がより見られるので、企業寄りの研究をしていない自分は不利なんじゃないかと、どこか不安がありました。でも、近藤氏にお話を伺って、専門性そのものよりも「自分のテーマに対してどれだけ深く考えたか」や「英語力」といった、もっと普遍的な研究スキルを見ていただけるんだと知ることができました。今取り組んでいることをしっかりやっていけば、きっと道は開けると思えたので、本当に良かったです。
「トップ層との対話で得られた、ネットにはない貴重な経験ができました」
Mさん(慶應義塾大学大学院 修士1年 / ロボット・ガスセンサー研究)
──Mさんは、どのような背景で参加されたのでしょうか。
Mさん:LabBaseに登録した時に、自分の分野に近いイベントがあると軽い気持ちで応募したんです。ただ、登壇者の方にはぜひ質問したいことがありました。「どの会社に入るか」だけでなく、「入ってからどうするのか」ということは、なかなかネットには書いていないので、そこがすごく気になっていました。
──実際に参加してみて、収穫はありましたか?
Mさん:すごく役に立ちました! 実際に1対1でお話しできる機会をいただけて、この上ない貴重な経験になりました。会社のトップの方がどのような経験をされてきたのかを直接聞ける機会なんて、そうそうないですから。本当にいい経験になりました。
「別の環境に行くメリットを知り、配属先選びを考え直す機会に」
Nさん(芝浦工業大学 2年生 / 半導体系研究室配属予定)
──学部2年生という早い段階で参加された理由を教えてください。
Nさん:これから研究室配属が始まるので、どういうことをしようか迷っていたんです。未来の自分の先を考えるために、まずは近藤氏のお話を聞いてみようと思いました。
──講演を聞いて、心境に変化はありましたか?
Nさん:もともと特定の研究室に行こうと決めていたのですが、近藤氏が「別の研究室に行っても視野が広がるからメリットがある」とおっしゃっていたのが印象的でした。自分にとってもう一回考え直す機会になり、すごく勉強になりました。
■ 登壇後インタビュー
──「研究者人生40年」という非常に興味深いテーマでしたが、内容はどのように決められたのでしょうか?
近藤氏:私は普段から社内で、半導体開発の歴史や技術的な話、利益の話、さらには趣味のワインの話まで、幅広いテーマで講演を行っています 。今回、いくつか候補を提示した中から、学生さんの未来に一番役立ちそうな「キャリアと人生」というテーマをLabBaseさんに選んでいただきました。
──実際に学生さんたちと対話してみて、いかがでしたか?
近藤氏:学生さんから直接、特に最後の方で「将来について真剣に悩んでいる話」を聞けたのがとても良かったですね 。彼らのリアルな葛藤に触れることができ、私も刺激を受けました。
──その中で、特に印象に残っている議論はありますか?
近藤氏:やはり「博士課程に進むことで、かえって自分の将来を狭めてしまうのではないか」という不安の声ですね 。私はそれに対して、「狭めるのではなく、広げるために行くんだ」ということを強く理解してほしいとお伝えしました。
──近藤氏ご自身も、同じような経験をされたのでしょうか。
近藤氏:ええ。私が日立製作所の基礎研究所にいた時の経験がまさにそれでした。当時は、修士で就職した同期よりも社会に出るのが遅れたように感じたこともありました。しかし、基礎研究で培った「深く掘る力」があったからこそ、その後のキャリアが大きく広がったんです。
──「遅れ」ではなく「強み」になるということですね。
近藤氏: その通りです。博士課程で得た専門性や論理的解析力は、将来必ず大きなメリットになります。今日の話を通じて、学生の皆さんが一歩踏み出す勇気を持ってくれたなら、これほど嬉しいことはありません。
■ LabBaseは、研究に打ち込むあなたの「挑戦」を伴走します。
近藤氏の話を聞いて、自分も今の学生時代に何か動いてみようと感じた方も多くいるのではないでしょうか。
まずは研究室の外にどんな「面白い大人」や「面白い仕事」があるのか。
それを知ることで将来のキャリアのヒントを得ることができるかもしれません。
・ 近藤氏のいる「レゾナック」をもっと知る
「異能」を歓迎し、年齢に関係なく「楽しく働く」ことを大切にする文化。材料の力で社会を変える挑戦に興味が湧いた方は、こちらから詳細をチェックしてみてください。
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LabBaseのイベントの8割は、研究開発の最前線にいる社員が登壇します。近藤氏のように、直接話して初めて得られる直感や納得感が、あなたの「生涯のテーマ」を見つけるヒントになるはずです。
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