理系大学院生が選ぶ「研究職以外の道」とは？
――大学院での研究分野について教えてください。
岡崎：もともと理系に関心が高い家庭のもとで育ち、小さい頃から科学館や博物館に連れられて興味があったので、自然と理系に進みました。大学院では「バイオミメティクス」と呼ばれる、生物の体の構造を模倣して工業的に利用する研究をしていました。
伊藤：農芸化学を専門とする学科で、植物ホルモンを専門とする研究室に所属していました。研究室では、植物ホルモンが病気に関わる理由について研究。もともと自然が好きで生き物の仕組みや農業に興味があり、大学院まで研究を続けました。
――なぜ、コンサルティング業界に興味を持ったのでしょうか？
岡崎：大学院での研究は楽しかったものの、日本の研究環境があまり良くないことを実感しまして。かつ、すぐに改善する未来も明確に描けなかったことから、研究者以外の仕事を考えるようになりました。
研究環境を良くできるような日本の政策に携われる仕事、社会的インパクトのある仕事はないかと考えたとき、コンサルティング業界に行き着きました。
その後、コンサルティング企業のインターンに参加。仮説を立てて検証するところは研究と似ていると感じましたし、考え方や頭の使い方に楽しさを覚えたため、コンサルティング企業を中心に検討しました。
伊藤：食品メーカーや研究職、博士に対して漠然とした憧れはあったものの、業界は特に絞っていませんでした。大学院1年の夏、早めの就職活動をスタートさせるときに「まずは全体を見てみよう」と思い、インターンランキングで上位だったNRIのインターンに応募したのが最初のアクションでした。
それまでは生物に興味があって大学院で研究していたのですが、「社会についての幅広い理解が欠けている」という感覚がありました。でも、コンサルティング企業のインターンに参加したことで、「社会の構造や成り立ちを知る」という課題を乗り越えられそうな業界だと感じました。
インターンで見た、先輩社員の人のよさが入社の決め手に
――NRIに入社しようと思ったきっかけを教えてください。
岡崎：他社の選考も受けたなかで、NRIは選考ステップが多く、会社とフィットするかどうかを重視し、かつ選考の透明性も感じられました。インターンを通じて社員の方々の優しく親切な人間性に魅力を感じたのも大きかったです。
また、面接段階から「会社に入って取り組みたい社会課題」について聞かれました。私自身、社会課題を解決したい気持ちが強く、「この会社なら目標を実現できそうだ」とイメージが湧いたことが入社の決め手になりましたね。
伊藤：私もインターンに参加して、フラットな社風や社員同士の関係性、インターン生に対する働きかけを見て、居心地が良さそうだと思いました。
私は「何をするか」だけでなく「誰と働くか」も重視していたため、自分に興味をもって接していただける社員さん一人ひとりを見て「一緒に働きたい」と感じたのが入社の決め手です。
――理系からコンサルティング企業を目指すことに抵抗はありましたか。
岡崎：同じ専攻に4、5人ほどコンサルティング企業への志望者がいたので抵抗はまったくありませんでした。
伊藤：エントリーする段階で周辺の理系の人も応募していましたし、NRIの採用資料に「理系が半数を占める」とあったので、理系出身者が珍しい存在ではないことは理解していましたね。
行政・民間問わず「社会課題の解決」に注力できる
――現在の業務内容について教えてください。
岡崎：社会システムコンサルティング部に所属し、官公庁向けの政策立案支援・政策実行支援などに携わっています。基本的にはプロジェクトベースで業務を担当していて、現在はプロジェクトリーダーやプロジェクトのタスクリーダーの役割を担っています。
具体的には、少子高齢化、資源・エネルギー問題、自然災害などの社会課題に対して、NRIが長年蓄積してきた専門的な知識や経験を活かして、官公庁等のお客さまとともに取り組んでいくのが仕事です。
仕事をする上でお客さまに満足してもらうことはもちろん大切ですが、「取り組んだ内容が社会課題を解決できるものになっているか？」というフラットな視点も大切にしています。働くうえで、社会にとって良い影響を及ぼす結果にしたい、調査にしたいと日々考えて取り組んでいます。
伊藤：グローバル製造業コンサルティング部の化学素材グループに所属し、化学メーカーや食品メーカーとお仕事させていただくことが多いです。
業務内容としては、経営戦略や理念、ビジョン、中期経営計画や事業戦略の策定支援など。入社3年目からは、プロジェクトリーダーとして業務に関わっています。
日本の製造業は刻々と変化しています。デジタル化や人材育成などお客さまが抱えるさまざまな課題に対し、NRIがこれまで培ってきた専門的なノウハウを掛け合わせることで、日本の製造業の再生、再成長を手助けするのが仕事です。メーカー企業の悩みに対し、自分たちにどのようなサポートができるかを常に意識して仕事しています。
――特にやりがいを感じた仕事のエピソードをお聞かせください。
岡崎：入社2年目のとき、災害の復興支援政策の実行支援業務を担当しました。どこに課題があるかを仮説を立てて探し出し、大きな問題になる前に対応する仕事でした。
復興支援は、誰かが必ずやらなければならない仕事。「自分が働かなければ困る人が出てしまう」という強い責任感をもって業務に取り組みました。社会に良い影響を明確に与えられるという意識のもとで働けたのは良い経験でしたね。
5年以上続く長期プロジェクトのなかで、私が携わったのは1年だけでしたが、お客さまに「あなたたちがいないと仕事にならない。本当に良い働きだよ」と言っていただけたのは本当にうれしかったです。
伊藤：一番やりがいを感じたのは、あるクライアント企業に対する半年間の人材育成プロジェクトでリーダーを務めたことです。若手有志の社員と一緒に経営テーマをワークショップ形式で考えながら人材育成をするものです。
ワークショップに参加してくださったメンバーの方々もモチベーションが高く、皆さんの成長を間近に見ながら最後まで伴走できてよかったです。
ワークショップでアウトプットしたことが高く評価され、研修として終わらず実際のビジネスにまで反映されたことがうれしくて心に残っています。
論理的思考やデータ検証に理系の強みを活かせる！
――「大学時代の研究活動が役立った」と思うのはどんなシーンでしょうか？
岡崎：研究室で培った仮説検証やロジカルな思考法は、仕事上でも非常に役立っています。
また、環境系のプロジェクトや調査だとデータとして数字を扱う機会が多いので、研究室で数字やエクセルを使った経験も生きています。数字を扱う業務に、自分から取り組んでいくことも多々あります。
特に、もともとデータを活用して検証していなかったことに対して、データをもとにした検証や定量的な考え方を提供できたときは、研究活動で身についたスキルが役立っていると実感しますね。
伊藤：知識面では、化学メーカーとの業務で化学構造式などをパッとイメージできる点が役立ちました。
また、研究も仕事も「決められたことをやるのではなく、どうしたらいいかを自分で考える」ことが共通しています。どちらも最初は、過去のプロジェクト事例や先行事例を探し、どのようにアプローチするべきかを考えて行動に移すというプロセスがあるので、大学院時代の経験が活かせていますね。
私の場合、過去に代替タンパク質の調査業務を担当したことがあったのですが、大学で食品・農業系の研究をしていたことから、より高いモチベーションで調査に取り組むことができました。
――現在就職活動中の理系学生に向けて、メッセージをお願いします。
岡崎：仕事も研究と一緒で、「やりたくてやる」「楽しみながら取り組む」ことが大切です。自分が楽しめるからこそ良い提案ができることもあるので、仕事を楽しめる人と一緒に働きたいですね。「研究は好きだけれどなにか違うな」と少しでも感じたら、ぜひコンサルティング業界も検討してもらえたらと思います。
伊藤：仕事では大変なこともあるので、一緒に粘り強く頑張ってくれる方だとうれしいです。加えて自由度の高い職種なので、挑戦心がある人とコラボレーションしながら私自身もどんどん成長していけたらと思います。
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編集後記
理系出身者が半数を構成する野村総合研究所のコンサルティング業務。理系分野で培った論理的思考や仮説検証、調査などは、実際の業務にも十分応用できそうだ。社会課題に対して貢献したいと考える理系学生は、コンサルティング業界をぜひ検討してみてほしい。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2023年5月公開)
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