多様な研究分野のコラボレーションが未来を創る! 戸田建設の社員が語る「建築業界の挑戦」

インタビュー

LabBase Media 編集部

多様な研究分野のコラボレーションが未来を創る! 戸田建設の社員が語る「建築業界の挑戦」

多くの顧客の活動にも注視し、非建築系分野の知見とのコラボレーションを通じて新たな価値を創出・提供する戸田建設株式会社。エンジニアリングと工事統轄の異なる部門で活躍するお二人から、建築業界の現状と展望、求められる人材像について話を伺った。 戸田建設株式会社: 1881年創業、連結売上は約5000億円超を誇る総合建設会社。歴史的建造物など戦前から官公庁関連や大学関連に数多くの実績を持ち、超高層建築物や医療関連施設を多く手がけている。近年では、地方都市と提携したスマートシティ構築や、浮体式洋上風力発電なども手がける。

充実した学生生活ののち、教授の推薦で戸田建設に入社



――学生時代の活動や戸田建設入社後の業務内容など、簡単な自己紹介をお願いします。


鈴木:鉄骨構造に関する研究室で、建物の揺れ方を解析する構造解析のプログラムを作っていました。本当は実験がやりたかったのですが、与えられた研究テーマが構造解析だったんです。授業のほかはサッカーをするか、バイクであちこち走り回るか。ときどき先輩に誘われ、設計事務所で模型作りのアルバイトもしていましたね。


戸田建設には教授推薦をいただいて入社しました。入社時点の業務は構造設計でしたが、まだパソコンを使える人が少なかったため、研究室でプログラミングをしていたことを理由に研究開発業務の担当に。情報系の知見を生かして社内システムの構築にも携わり、現在はエンジニアリングソリューション統轄部でのマネジメントが主な業務内容です。


白石:私は美術や工芸が好きで、数学や物理も得意だったため「建築家なら芸術家と技術者を両立できる!」という気持ちで建築学科に入学しました。大学時代は旅行漬けの日々で、就職活動の時期になって「このまま社会人になったら後悔する」と不心得な思いから、試験前に猛勉強して大学院に進学しました。


大学院では、材料施工の研究室でまた2年間隙を見ては旅行して(笑)。修士修了時に教授に薦められて戸田建設に入社しましたが、建築に関する知識はほんのわずかでした。現場に配属されて数年は、現場を走り回りながら現場監督の仕事を覚えましたね。


30余年、東京支店の施工部門で働き、その間には大手町の再開発案件にも携わりました。その後3年間本社の調達部門に行き、昨年1年間は横浜の支店長を務めました。つい最近本社に戻り、施工部門全体を統括する建築工事統轄部長として働いています。


専門知のコラボレーションで顧客を支援し、仕事の幅を広げる



――建築業界を取り巻く現状と、戸田建設の取り組みを教えてください。


白石:一言でいえば、建築業界は過当競争状態ですね。談合という悪習がなくなった代わりに、低価格での仕事の奪い合いが生じており、以前と比較すると利益の確保が難しくなっています。


低価格路線に舵を切った建築会社の中には、過当競争の影響が現場を直撃し、厳しいコストで仕事を消化しなければならない状況になる会社もありました。最近までは厳しい条件下で長時間労働を強いられる現場もあり、建築産業を若者が敬遠する状況も見られました。


しかし今では、当社を含め業界全体で「業務改革に取り組み働き方を改善しなければ優秀な人材を確保できない」と意識が変わってきています。


鈴木:異業種への参入や建物の建設後の不動産業務を手がけることによる業務の多角化も過当競争状態への対応策の一つですが、戸田建設ではコストカットや異業種への参入よりも、本業である建築業でお客さまに提供できる価値をより増大することに注力しています。


とくに私の所属部署が携わっているのが、建物だけでなくその建物の機能に言及し、お客さまの生業を支援することで仕事の幅を広げる取り組みです。


――「建物の機能を売る」ことについて詳しく説明していただけますか?


鈴木「われわれが建設する建物でお客さまは何をしたいのだろうか?」に着目し、これに合わせてカスタマイズした価値提供を行っています。


例えば化粧品工場を建設する際、お客さまは通常ゼネコンに建物を、プラントメーカーに工場内で使う設備を別々に発注しています。ですが、戸田建設ならこの両方を一括で受注できます。


化粧品製造プロセスを理解している人材がいるので、何をどのような規模で製造したいかを聞けば「ではプラントがこういった仕組みになるから建物のほうも工夫しましょう」と提案ができるからです。その後の運搬方法など物流面に詳しい人材もいるので、「こういう建物も必要になりませんか? 」という提案も可能です。


このほか、製薬工場なら薬学の、石油精製プラントならコンビナート関連の知識が必要になるため、建築以外の多様な分野の専門知識を持つ人材を新卒や中途採用で積極的に採用しています。


部門を超えた協働でジェネラリストを積極養成



――多様な専門人材を新たに採用する以外に、社員の専門知識の習得を助ける制度などはあるのでしょうか。


鈴木社員教育は手厚いです。将来を見据えてきめ細やかに教育プログラムを計画・実行しています。座学はもちろん、最近はOJTで現場で実践を重視しています。


具体的には、指導役と呼ばれるベテラン社員が若い社員に一定期間マンツーマンで付き添うことで仕事のやり方のアドバイスをしたり、品質管理の専門知識を持った社員が若手社員に不具合の出ない建物のつくり方を伝授したり。現場もゼネコンという会社の在り方も昔と違うので、最適な方法は日々アップデートしていますね。ちなみに、OJTは配属先に全て任せるのではなく、全社的に対応することも心がけています。


先ほど例に挙げた化粧品工場のプロジェクトマネジャーの一人は農学部出身ですが、過去の業務を通じて建築の知識も把握し、プラントのコストや機械の知識も身につけています。働きながら自分の専門を磨いてスペシャリストとなりつつ、広範囲の知見を得てジェネラリストにもなれるんです。このように、複数のスキルを磨けるのは戸田建設で働く大きな魅力ですね。


白石:現場の人間が工事技術部門に行ったり、生産設計(施工図)部門に行って図面の勉強をしたりと、他部署での実務を体験する「社内留学」制度が整っています。現場の仕事も、図面のとおりに施工するだけではありません。追加の要望があれば要求性能を細かく聞き取り、「この部屋は本当にこの形、性能で良いのか?」を技術部門や各関連部門に確認しながら設計内容を吟味していくことも必要です。


社内留学によって専門知識が身につくのはもちろん、留学先との人脈もできるので、現場に戻って他部署との連携が必要になったときの太いパイプ(スムーズなコミュニケーション)につながっています。


鈴木:私の部署でも、受注した案件と併せて担当者を設計部署に送りこんでいます。一緒に設計作業に参加させ、設計スキルと設計の分野の人脈の両方を獲得してもらうことで、新しいお客さまの事業のお話をうかがうときに設計的な観点から提案できるようになる。このように、ジェネラリスト養成のため部門をまたいだ仕事のシェアや人事交流が盛んに行われています。


――戸田建設の社風はどのようなものだと考えていますか?


白石:失敗してもリカバリーができる寛容さがありますね。「誰もが最初は初心者だ」という意識を社員たちみんなが共有しているからこそ、一生懸命やった結果の失敗や、チャレンジした結果期待した成果が出なかったときは、良い経験として次に生かせばいいとする社風があります。


鈴木:社内留学制度があることで同業他社と比べて部門間の垣根が低いことも、スキル習得中で不慣れな人を許容し合う環境の醸成に一役買っていると思います。「どうせやるなら真面目に一生懸命に」取り組む気質があります。


「のびしろ」重視。「得意」を強みに自ら学べる人材になろう



――ともに働きたいと思える、戸田建設に向いている人材の素質などがあれば教えてください。


白石:施工現場では、「QCDSME」といわれる品質(Quality)・コスト(Cost)・工程(Delivery)・安全性(Safety)・士気(Morale)・環境(Environment)のどれが欠けてもダメ。一つでも弱みがあると現場は大きなリスクを抱えることになるため、オールラウンダーであることが望まれます。


とはいえ、学生時代の知識や経験は現場ですぐには役に立ちませんし、入社直後から十分なマネジメント力を持っている人はそうそういません。結局、右も左も分からない状況から現場で失敗しながら身につけるしかないんです。


だからこそ、学生さんには「のびしろ」を持っていてほしいですね。いろいろな物事に疑問を持ち、常に頭を使って貪欲に知識を吸収していく。そうした自主的に成長する意識が肝要です。これは「誠実さ」を持って臨んでいけば自然と身につくのではないでしょうか。この「誠実さ」は戸田建設の社風の一つといえます。


鈴木建築以外のことでも構わないから、何か一つ得意なものを持っていてほしいですね。得意なものがあると本人の自信になり、お客さまや上司と話すときにおじけづかずに話せるコミュニケーション能力につながります。


上手にコミュニケーションがとれる人は、他人から学ぶ吸収力も持っています。これは、スペシャリストにもジェネラリストにもなるための重要な素質です。


――最後に、現在就職活動中の学生へのメッセージをお願いします。


白石「学生時代にしかできないこと」に全力で取り組んでほしいですね。20歳前後の1年は人生にとって、とてつもなく貴重な時間です。何となくアルバイトして過ごすのではなく、一つでいいので、将来自分の誇りとなるようなことを見つけて邁進(まいしん)してください。


鈴木:今私が仕事で取り組んでいることに必要な知識は、ほとんど全て入社してからの経験で培われています。だから、戸田建設に入社できて良かったと心から実感しています。知識や資格はあるにこしたことはないですが、それよりも「どうなりたいか」のビジョンを持つことが大事。臆することなく一歩踏み出してみてください。


(取材日:2022年3月4日)


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編集後記


学生の「のびしろ」を重視し、建築関係に限らない強みを持つことを評価する二人の姿勢に、激しい競争を生き抜くためにジェネラリスト養成にも注力する戸田建設株式会社の社風を強く感じたインタビューだった。現在建築や関連分野を専攻していてさらにほかの強みを持ちたい学生にとっても、他分野を専攻しているが建築にも少し興味がある学生にとっても、さまざまな分野の知見のコラボレーションによる価値提供を行う戸田建設は、複数の専門性を磨き自分を大いに成長させられる魅力ある職場ではないだろうか。

ライター
三輪 愛
カメラマン
児玉 聡
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企業情報

戸田建設株式会社

戸田建設株式会社

◆戸田建設はお客様に最適な技術とソリューションを提供する総合建設会社です。 ◆創業以来140年以上の歴史と伝統を持つ総合建設会社として、  数多くの建築物・土木構造物を手掛けています。  新規事業分野では浮体式洋上風力発電実用化や農業6次産業化の取り組みの実績等もあります。  「伝統」「技術力」「挑戦心」を当社の特長として、  ゼネコンの枠にとらわれない事業展開を行っています。 <主な事業内容> ・建築一式工事、土木一式工事等に関する調査、企画、設計、監理、施工、その総合的エンジニアリングおよびコンサルティング業務。 ・地域開発、都市開発等に関する調査、企画、設計、監理、施工、その総合的エンジニアリング及びコンサルティング業務。 ・不動産の売買、賃貸、仲介、管理および鑑定。 ・再生可能エネルギー等による発電事業等。 <プロジェクト事例> ・新本社ビルが2024年11月2日に開業しました。 隣接街区と共同して「芸術・文化拠点の形成」と「地域の防災力強化」をテーマとした超高層複合用途ビルを建設する大規模開発プロジェクトです。    https://www.todabuilding.com/ ・広瀬アリスさんが出演するCMを絶賛放映中。    https://www.toda.co.jp/company/library/buildtheculture/ ・国内初となる浮体式洋上風力発電設備を実用化し運転を継続中。    https://www.toda.co.jp/business/ecology/special/ ・農業6次産業化を軸に地域社会の未来づくりに挑戦中。    https://www.toda.co.jp/business/newbusiness/ <実績ご紹介> ・慶應義塾創立50周年記念図書館(重要文化財) ・早稲田大学 大隈記念講堂(重要文化財) ・パシフィコ横浜・ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル ・有楽町イトシア(有楽町マルイ) ・丸の内オアゾ ・大手町フィナンシャルタワーグランキューブ (大手町再開発事業) ・常盤橋タワー ・ミュージアムタワー京橋 ・国際医療福祉大学成田病院 ・虎の門病院 ・ぎふメディアコスモス ・東京国際空港(羽田空港)国際線旅客ターミナルビル ・東京湾アクアライン ・西日本道路新名神箕面インターチェンジ ・北陸新幹線高丘トンネル ・宮ヶ瀬ダム ・JAPAN HOUSE(ブラジル) ・ケラニ河新橋(スリランカ)  いつも目にする建物から特殊な建造物まで、戸田建設が手掛ける建物は多岐にわたります。    URL:https://www.toda.co.jp/solution/ <ミッション・ビジョン> ・戸田建設グループは、「価値のゲートキーパーとして、協創社会を実現する」ことを目指し、  創業150周年となる2031年に向けて、「未来ビジョンCX150」を策定しています。    URL:https://www.toda.co.jp/pickups/vision.html ・当社の気候変動に対する活動は、ロンドンCDPより世界的な先進企業として最高評価を受賞。 (2022 Climate Changeで六度目、ゼネコン唯一の5年連続Aリストに選定)    URL:https://www.toda.co.jp/news/2022/20221215_003152.html