なぜ「水素」社会なのか？
今、水素が注目されているのは、自然の力を利用した従来の代替エネルギーと比較して、供給において大きなメリットがあるから。太陽光や風力といったエネルギーが天候などの環境要因に左右されやすいことと比較して、長期保存や長距離輸送にも耐える水素は安定供給が可能であることが特徴です。
また、水素を使って走る燃料電池車（FCV）では二酸化炭素や有害ガスを一切出さず、排出されるのは水だけ。温暖化や環境汚染に影響する排出物がないというのも、水素が代替エネルギーとして利用推進される大きな理由になっています。
水素は自然状態にはほとんど存在せず、水や化石燃料などを分解することで生じる物質で、「H」の元素記号で知られています。CO2排出を伴わない方法で水素を生み出せば、製造過程もクリーンに保てることから、 水素は究極のクリーンエネルギーと呼ばれるほど、期待度の高い代替エネルギーなのです。
水素エネルギーは何に使える？
水素の浮力を活用して気球や飛行船を飛ばすことは有名ですが、他にも医薬品やアンモニア肥料の製造など産業分野や、ニッケル水素電池などにも水素は用いられています。
水素エネルギーによる発電の取り組みも始まっています。水素を燃焼させ、空気中の酸素と反応させることでタービンを回し、その動力を電気エネルギーへと変える仕組みです。実際に企業における実証実験も始まっており、2018年1月には三菱日立パワーシステムズがガスタービンの開発において水素を混焼しての発電に成功しています。
また、水素を使った燃料電池 は、発電と同様に、水素と酸素が化学反応を起こすことで電気と熱を発生させる装置です。化学反応による発電の際に排出されるのは水のみで、燃料電池は非常にエコかつサスティナブル（持続可能）なエネルギーのプラットフォームといえます。燃料電池を使った自家用車のほか、燃料電池バス・タクシーの実用化が始まっており、二輪車（バイク）、フォークリフト、鉄道、船舶などモビリティー分野での実証実験や開発が進んでいます。
石油や石炭を使った火力発電所のように、大量の温暖化ガスや廃棄物を排出することがなく、さらに製造過程から発電まですべての工程において環境汚染の心配がない水素は、代替エネルギーとして申し分ないといえるでしょう。
電気自動車（EV）と燃料電池車（FCV）の違い
排気量の少ないエコカーの代表としては電気自動車（EV） の普及が進んでいますが、水素を活用した燃料電池搭載の燃料電池車（FCV）も登場し、トヨタ、ホンダ、日産などの自動車メーカーが既にFCV製品を市場にリリースしています。
現代で最も低排出・低環境負荷な乗り物と考えられるEVとFCVについて、以下のように比較してみました（2018年10月現在のデータに依拠）。EVは、完全な電気自動車（BEV）の場合で、ガソリン併用車（PHEV）は除外しています。
EVは家庭用電源や公共充電スポットが普及しつつありますが、一般的に充電に時間がかかり、航続距離も一般的なガソリン車よりも短い傾向にあります。とはいえ、開発と普及が進んだ結果、航続距離はかなり伸びてきました。
一方、FCVは登場して日が浅いながら1回のフル充填で車種により最大750キロの長距離走行が可能で、水素充填も3分と、ガソリン車並みに高速で行うことが可能。ユーザーにとってのEVの課題をほぼすべて解消した今、水素ステーションのさらなる普及が望まれます。
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