日本航空の企業史と躍進のカギを握る技術分野を紹介した前編は こちら
フラッグ・キャリアの座をかけて――全日本空輸との比較
言わずと知れた競合キャリアは、全日本空輸(ANA)。2017年3月に公開された2016年の決算データによると、売上高に関しては日本航空の1兆3,366億円に対し、全日本空輸は1兆7,911億円を記録し、日本航空を上回っている。
しかし、利益という視点で見ると、全日本空輸が1,364億円に対して日本航空が2,091億円と大きく差をつけている。 経営破綻後、堅実な経営にシフトしたのが功を奏すかたちとなった。
両社の中期経営計画を比較すると、全日本空輸が「事業規模と利益の成長」と拡大路線なのに対し、日本航空は「費用増を克服して増収増益に転じる」という経営破綻時に残した課題を回収しながら利益を増やしていくスタンスを示している。
当面の最大の争点は、2020年に迫った東京オリンピック時における羽田空港の増枠獲得に他ならない。この枠のほとんどは国際線に割り振られる予定だ。インバウンドによる追い風で国際旅客収入は全日本空輸が15%、日本航空が10%といずれも好調だが、両社がどれだけの比率を獲得できるかが業績に大きく関わってくることは言うまでもない。
国際線と言えば、航空業界の視線はLCC(格安航空キャリア)に注がれている。これまでに日本航空は2012年にカンタス航空、三菱商事との共同出資によって日本を拠点としたジェットスター・ジャパンを設立するなどの動きを見せてきた。しかし、ライバルの全日本空輸が傘下にLCCを2社擁していることに比べると、インパクトで後塵を拝しているのは否めない。
そんな日本航空が大胆な事業に乗り出した。2018年7月31日に中長距離LCCの準備会社として ティー・ビー・エル(TBL)を設立。従来のLCCは国内線やアジア圏を中心とした短距離圏で運航されるのが一般的であり、機内食や座席指定などを追加料金制にする代わりに低価格で目的地まで飛べる交通手段としての側面が評価され、近年人気を博していた。
今回TBLの狙いは、長時間のフライトが必須のアメリカやヨーロッパに向けた運航である。リーズナブルな反面、シートが狭いといった欠点もある。長時間のフライトによる顧客のデメリットをどう補うかが注目される。
TBLは2018年秋よりパイロットの募集を開始し、2020年夏に成田空港就航予定だ。成長の見込まれる国際線のシェアをTBLによってどれだけ獲得できるかが、フラッグキャリアの座を大きく左右することは間違いないだろう。
イノベーションに貪欲に――華やかなエアラインを支える技術集団
インバウンド需要やLCCの台頭といった時勢の追い風で、ますます注目を集める国内航空業界。花形であるパイロットや客室乗務員がかねてより人気の職種として知られているが、航空会社は実に広い職種の裾野を抱えている。日本航空では、理系人材に以下のポジションが用意されている。
- 業務企画職(地上職 数理・IT系)
- 業務企画職(地上職 技術系)
※自社養成パイロット、地上職 事務系、客室乗務員も応募可
業務企画職(地上職 数理・IT系)の中でもセクションによって、売上、品質、事業運営とコミットする目的はそれぞれ異なる。日本航空グループに蓄積されたビッグデータの分析を駆使し、収益の最大化計画から、IoTやロボットなど将来の新たなサービスの構想まで、ITを横串に展開されるさまざまな活躍の舞台が用意されている。
前述のとおり、現在の日本航空は新技術やITにおける挑戦を歓迎する風土にある。ITリソースの重要性を認識しており、全社的な人材底上げのため文理問わず配属される職種だ(全日本空輸には同様の職種枠はない)。
IT部門では、社内教育はもちろん、乗客向けのアプリ開発も行っている。「JALカウントダウン」では、出発までの残り時間や搭乗口、遅延情報を表示したり、保安検査場の待ち時間を確認することができるなど、IT技術を駆使しながらもユーザーの満足度や全社的な利益への接続感を味わうことができるのが業務企画職(地上職 数理・IT系)の魅力だ。
前者が企業運営やユーザーの満足度向上にたゆまぬ努力を図るセクションだとすれば、業務企画職(地上職 技術系)は日本航空の生命線である機体に関わる仕事だ。
事実、航空会社のエンジニアは派手な存在ではない。機体自体は航空機メーカーで製造されており、あくまでもモニタリング、メンテナンス、不具合の解析・改修といった水面下の仕事が業務領域だ。長時間のフライトを終え、次のフライトを迎えるまで(国内線で30分、国際線で2時間)に機体・エンジン・装備品まで細部を緻密に確認する必要がある。
直接的な称賛は得られず、その上、ほんのわずかな失敗も許されない。しかし、破綻前のように航空機メーカーに専ら依存しきった日本航空の姿は今や見られない。それはひとえに、同社の技術者集団のレベルの高さゆえである。
これまでにも機体やエンジン、装備品に備わったセンサーより収集したデータをまとめ、1回の飛行単位に集約し、あらかじめ設定した基準値と照合することで異常を発見するという順に施策を行っていた。
そしてさらなるスピードと正確性を求め、2017年4月より日本航空では成田空港・羽田空港のすべての整備士に上述の目的を集約したアプリ「Inspect&Turn」と「Assign Tech」を搭載したiPhone/iPadを用意。これにより、OAG Aviation Worldwide Limitedの公表した定時運航遵守率ランキング
「OAG Punctuality League 2018」にて見事世界一に輝いた。
しかし、過去に世界から受けてきた多くの評価におごることなく、最高品質の機体と揺るぎない信頼を確立すべく今日も運航技術の研究に尽力する。イノベーションを歓迎する日本の翼は積極果敢なエンジニアや理系人材を求めている。
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