形骸化していた就活ルールの廃止。具体的な変更点は？
今回の廃止にともなう、具体的な変更点について説明しよう。これまで経団連が定めていた就活ルールの代表的な内容は以下の2つだ。
- 採用に直接関わる広報活動は3月からスタート、面接や試験の解禁は6月
- インターンの内容や評価を採用に直結させてはならない
このルールの廃止に伴い、政府主導で経済界・大学と連携しつつ、学生・企業のことを考えた新たなルールが模索されることとなる。
2021年卒の就活スケジュールについては、これまで通り3月に説明会スタート、6月に面接解禁を維持することが決定された。インターンに関する規定は未定だが、引き続き採用とは切り離すべきという方針だ。
2022年卒についても現行の日程を維持する方針が示されてはいるものの、状況は流動的である。
また、2016年の調査によると、経団連加盟の企業においても31.4%が6月前から選考を始めている。
引用元： 日本経済新聞 解禁前に選考31% 経団連ルール形骸化
日程の面において、既に就活ルールは形骸化していると言ってよいだろう。ルールを破った場合の罰則規定がないことも加担して、経団連から政府主導へと変更されても、このままスケジュールは無視され続けるのではないだろうか。
インターンについても、ルール撤廃の発表後、サイバーエージェントが4次選考としてのインターンを必須化するなど、早速動きだした企業もある。
2017年度に経団連が会員企業向けに実施した、新卒採用に関するアンケート調査では、78.2%の企業が「インターンシップで得た学生情報」を選考活動に使えるようにすべきと回答している（※1）。選考を効率よく進めるために、インターンを活用する企業も多そうだ。
今後はどの方向に進む？ 予想される就活の未来
では、これらの変更によって、今後どのような事態が起こるのだろうか。ここでは就活の未来予想として、①就活早期化・長期化による長期インターンの増加 ②新卒一括採用の見直し・通年採用開始 ③問われる企業に対する本気度の3つについて紹介する。
就活早期化・長期化による長期インターンの増加
より優秀な人材を早い段階で確保するべく、企業と学生が双方を深く理解することを目的とした長期インターンが増えることが予想される。これまでの「顔合わせ的な短期インターン」から「双方の見極めのための長期インターン」へインターンの意味合いも変わってくるだろう。これまで「インターンは3年生から」という認識を持っていた大学1、2年生も、今後はより早めにインターンへの参加を想定したほうがよいだろう。
新卒一括採用の見直し・通年採用開始
これまでは4月入社の新卒一括採用が通例であったが、ルールの廃止によって通年採用が採用ルートの一つとして台頭していくだろう。2016年から「ポテンシャル採用」を実施しているヤフー株式会社や、2019年1月からの通年採用を宣言している株式会社ユーグレナのように、既に取り組みを始めている企業もある。
留学や研究活動に熱心に取り組む学生は、就活の時期が一般的なスケジュールとは重ならないケースが多い。通年採用を行うことで、そうした学生との接触機会を増やしたいと考える企業は今後増加すると考えられる。
問われる企業に対する本気度
これまでは「とりあえず大手」という志向や「とにかく多数アプライする」というスタイルで就活を進める学生も多かったが、今後は企業、学生双方の相性の見極めがより深くなることが予想される。そのため、「早期に志望度の高い企業群を見極めたうえで、アプライ企業を絞りこんでいくこと」が重要になってくる。
講義や学生実験などが1年次から通年で入る理系学生は、就活の早期化により常に学業の時間が削られる可能性がある。さらに、研究が始まると定期的な進捗報告やゼミの準備、それにともなう調査など、タスクの量が膨大になる。就活にリソースを割くことで本業がおろそかになっては本末転倒だ。
そこで、学生生活と早期化する就活を両立させるためにも、早めに志望度の高い企業を見極めたうえで、自身とのマッチを探り続ける「就活の深化」を図る必要がある。
理系キャリア相談のプロに聞く！ ルールなき就活の歩き方
新たな時代の就活を上手に乗りきるには、一体どうすればよいのだろうか？ 毎月およそ150人もの理系学生のキャリア形成に携わるLabBase事業責任者・松崎氏に、今後の理系就活の生存戦略を尋ねた。
――就活ルールの廃止とそれに伴う就活の早期化や長期化などによって、研究活動等への影響が予想されます。理系就活生はどのように就活に取り組めばよいのでしょうか？
目の前の研究への没頭と、長期的な視点に立ったキャリアデザインを行き来する複眼的な視点が求められます。大学時代もこれまでのような「モラトリアム」は許されず、社会で活躍する準備期間として過ごし方そのものが問われるようになるためです。
就活の早期化により、就活へのはやる気持ちも生まれるかもしれませんが、就職活動は自分の「実」がないと成功しません。理系の場合、その最たるものは研究です。就活に気をとられるあまり研究がなおざりになっては、本末転倒。4年間や6年間という期間のなかには、研究や留学、インターンなどのさまざまな選択肢が用意されています。いかに主体的にスケジューリングをし、自分の学生生活をデザインするかが就活成功の鍵を握ります。何となく……で時間が過ぎていってしまうことのないよう、目の前の研究に集中しつつも、それを長期的な展望にどう位置づけるかといった試行錯誤が常に求められます。
――長期的な展望を描くことの重要性は分かるものの、なかなかイメージしづらいように感じます。具体的にどうすればできるようになるのでしょうか？
社会で求められている研究や技術、スキルの実態をつかむためにも、まずはガチではない「カジュアルな就活」をしてみることをオススメします。インターン参加といった負担が発生するものだけではなく、SNSで企業のアカウントをフォローして情報収集をするだけでもいいんです。たとえ大学院進学を考えていたとしても、「カジュアルな就活」を行う中で、社会でどのような研究や技術が求められているかを知れば、自身が取り組む研究テーマの意義を再確認でき、研究への向き合い方も変わるはず。「研究」と「就活」を相反するものとせず、「研究」は「就活」に、「就活」は「研究」につながるものと捉え直し、それぞれに相互作用をもたらすアクションを繰り返すことで、長期的に目指したいキャリアビジョンが徐々に精緻化していくでしょう。
――カジュアルな就活で「研究」と「就活」のシナジーを生み出すためにオススメのサービスなどありますか？
研究室で就活を進めていけるスカウトサービスをオススメします。スカウトサービスというと、何か華々しい成果や受賞歴などないと難しいのでは……と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
例えば理系に特化したスカウトサービスの LabBaseでは、プロフィール内に自身の研究内容や研究のアピールポイントを載せるだけで企業からのスカウトを受けることができます。しかも、そのほとんどが研究室推薦等でつながりがある企業以外であるはず。自分の経験がこんなところにも求められるのか……という新鮮な気づきとなるのではないでしょうか。研究の時間を確保しつつ「研究とキャリア」をチューニングする一つの手段として、自信を持ってオススメできるサービスです。
知らなかった企業や検討したこともなかった企業からのスカウトは、新たな情報を得るきっかけにもなります。今後さらに激しい情報戦が予想される就活において、「スーツを来て説明会に行かなくても向こうから情報がやってくる」というのは大きなメリットではないでしょうか。
LabBaseだけでなく、就活への気軽な第一歩として、さまざまなスカウトサービスを試してみてほしいですね。
ライトに、カジュアルに、就活への一歩を踏み出そう
これからの就活では、自身のキャリアパスをより意識的にデザインしていく必要がある。松崎氏の推奨する「ライトでカジュアルな就活からのスタート」「研究と就活の相互作用の繰り返し」は、新たな時代の就活に一歩踏み出す有効な手立てと言えるだろう。
スカウトサービスの活用は、キャリア観における思いがけない化学反応を生む。自身の研究をいかに社会とつなげ、活かしたいのか――そんな悩める理系就活生は、ぜひとも本記事で紹介した就活にトライしてみてほしい。