本当の「安定」とは、地に足のついた生活ができること
――まず、事業の簡単な概要と、会社の特徴をお聞かせください。
メインは石油ファンヒーターと加湿器の製造です。どちらも市場シェアNo.1を獲得しており、弊社の製品は長くお客さまに愛されているという自負があります。この2つに加え、私が在籍しているのが新事業の生産技術部門です。
弊社は、新潟県内の企業や工場と強い結びつきと連帯感を持っているのが特徴です。部品工場を「協力工場」と呼び、「協力工場と一丸となってものづくりをする」という意識で取り組んでいます。
――二ノ瀬さんは、一旦地元を離れて大学院まで進まれた後、地元である新潟に戻ってきたと伺いました。当時、就職活動はどのように進めましたか?
金沢大学で機械工学を学び、就職活動は修士1年生の頃から始めました。国立大学ということもあり、周りは大手志向の学生が多かったですね。自分も就活を始めた当初は、大企業と中堅企業で迷い、夏には某大手電機企業のインターンシップにも参加しました。大企業を直接体感してみたい、と思ったので。
――そうだったんですね。しかし、大企業には入社されなかった。
はい。大企業は不確定な要素が多く、ライフプランに影響を及ぼしやすいと感じたからです。例えば大企業は多くの場合、日本各地や海外に工場を持っており、勤務地が分かるのは入社直前ということも珍しくありません。もちろん入社後も転勤の可能性は確実にあるため、「いつ、どこで、どう働くか」の予測をつけづらい、というのがネックでした。
一方、地方の中堅企業の場合、勤務地や配属先がある程度予測できることが多く、自分が働く姿を想像しやすい。就職活動のタイミングで将来をある程度予測できるほうが良いと感じ、インターン後は中堅企業をメインに選考を受けていました。
――やはりライフプランを考える際に「いつ、どこにいることになるか分からない」というのは不安なものですよね。
そうですね。加えて、私は両親とも公務員の家庭で育ったこともあり、「安定」に対する思いが強かったこともあります。
「安定」というと、多くの場合「会社が健全に経営されている状態」がイメージされますが、私は「地に足がついて生活できる」「居住地や生活環境が変わらないこと」こそ本当の安定だと考えています。「安定志向」という言葉もよく聞きますが、自分がどんな「安定」を求めているのか、就活生は就活を機に今一度考えてみてもいいかもしれませんね。
――環境や仕事内容を軸に企業を絞り込んでいく中で、特にダイニチ工業に関心を持ったのはなぜでしょう?
自分の関わった製品をお客さまに見てもらえることが、やりがいにつながると考え、完成品メーカー5社に絞って選考を受けました。そのなかでもダイニチ工業を選んだ理由は3つあります。
1つ目は「親切さ」です。ダイニチ工業の面接を受けたあと、担当人事が面接後に直接フィードバックをしてくれたんです。改善点をアドバイスしてくれたこと自体に衝撃を受けましたし、何よりも自分のことをよく見てくれていることが分かって、とてもうれしかったです。
2つ目は「改善に対する姿勢」。就職活動中に弊社の工場を見学したのですが、他企業の工場に比べて圧倒的に合理化されていて、無駄がひとつもない。改善することを怠らずにここまで整備された環境を整えたということは、きっと力のある企業なんだろうなと思ったことを覚えています。
3つ目は「新しいことに挑戦する企業文化」。詳細はオープンにできませんが、先端的な技術を用いた開発を進めています。地元の新潟にいながら、ワールドワイドで戦える事業に携われる点が非常に魅力的でした。
魅力は「活発なコミュニケーション」――OJTで鍛え上げ、仕事後は部活やイベントで親交を深める
――入社後はどのような業務を担当されましたか? 現場配属のタイミングも教えてください。
入社して最初に配属されたのは、生産の工程自動を担当する部署。業務は、ファンヒーターの組立ラインで稼働する機械の設計です。私の場合は、入社2カ月ほどで現場配属となりました。研修は長い人でも半年程度。同業他社より比較的早く現場に出ることになります。
OJTが充実しているのは弊社の特徴ではないかと思います。実際に現場で使うかどうか分からない知識を詰め込むよりは、早いうちから配属して現場で鍛え上げるほうがいいという考えが根底にあるように感じられます。
――現在は新規事業の生産技術担当をされていると伺っています。具体的に、どのような業務を行っているのでしょうか?
新規事業の部門で、生産工程や生産手段の整備、必要機材やスタッフの選定まで幅広く担当しています。品質の高さを重視しているので、品質管理には特に注意を払っています。
実は私は、先ほどお話しした先端技術を用いた製品の心臓となる部分の溶接品質の評価を一人で担当しています。途中、予期せぬ大きなトラブルにも見舞われたのですが、先例がないので周囲に相談できる人もいない。大学の専門家にコンタクトをとって話を伺い、それをヒントに試行錯誤を重ね、最近2年がかりでやっと解決にこぎつけました。
この製品の開発に関わっている従業員や関係者は数多くいます。そんな大きなプロジェクトの心臓部を一人で任されているので、やはりプレッシャーを感じることはあります。しかし、それがやりがいにもつながっていると感じますね。
――ダイニチ工業は企業内でのコミュニケーションが活発に行われていると伺いました。その秘訣は何なのでしょうか?
運動会や社員旅行をはじめ、イベントごとの多さは間違いなく影響していると思います。弊社独自のイベントといえば「夏忘れ」。会社の敷地に机をセッティングして乾杯し、「繁忙期の冬も頑張ろう!」と気合を入れる飲み会です。いわば、忘年会の夏バージョンですね(笑)。
部活動が盛んなことも特徴のひとつで、ないものを探すほうが難しいくらいです。部活では部署や役職問わず社員同士が関われるので、そこで親交を深めることで仕事が進めやすくなることもあるんです。活動は平日夜にあるので、比較的参加しやすいですね。
――とても活発な空気に満ちた社風ですね! 二ノ瀬さんはどこかの部活に所属されていますか?
私は軽音楽部に入っています。もともとベースが趣味なので、家に帰ったあとに練習することも。基本的に仕事が終わったらスイッチを切り替えて、趣味や家族との時間を大事にしています。
どの部署も、ワークライフバランスが保ちやすい環境だと思います。土日は基本的に休みで、残業は月20時間もありません。
――二ノ瀬さんは今後、どのような仕事に携わっていく予定ですか?
現在開発中の新製品を、より多くのお客さまに高品質な形で届けることです。品質に差異を出さず安定的に製造できるよう、より生産分野に近い領域で、製造工程の調整に取り組んでいくつもりです。
就職は「ゴール」ではなく「スタート」
――それでは最後に、就活生に向けたメッセージをいくつかいただきたいと思います。学生時代を振り返って、ご自身の就活がうまくいった要因は何だと考えますか?
学内で先輩に話を聞いたり、インターンに参加したりと積極的に行動をしたことです。特にインターンに参加した際は、「大企業と中堅企業どちらに就職するかを決める」という明確な目的意識を持っていたので、得るものが多かったと思います。結果的に周りよりもだいぶ早く就活を終えることができました。
――就活生にとって、ダイニチ工業で働く魅力をぜひアピールしてください。
弊社は、「安定と挑戦」の両方を取れる環境です。理系出身であれば基本的に本社勤務なので、転勤もなく、腰を据えて仕事ができます。先ほども申し上げましたが、単に大きな組織に入ることが安定ではありません。地域に根ざした形で、見通しをもったワクワクする人生を送ることができるのは大きな魅力だと思います。
それと同時に、主力のファンヒーターと加湿器に関する技術は、ピカイチ。しかし、業界No.1の座に安住することなく、新規事業部では常に「最先端」に挑み続けています。特に新潟という土地に愛着を持っている人にとっては、地元にいながらにして技術力で世界と戦える最高の環境です。もちろん、Iターンや他の地方からの方も多く在籍しています。
――ありがとうございます。では、就職活動を控えた大学生に向けて、アドバイスをお願いします。
就職活動の段階で、その企業に入るとどんな仕事をすることになるのか、どのようにキャリアを歩むことになるかを、なるべく具体的に想像してみてください。就職はゴールではなくスタート。本当に目を向けなければならないのは、その会社で何をしたいのかということです。
就活は誰もが初めは手探り状態。そのため、広く知られた企業に目がいきがちですが、学生が知っている企業なんてほんのわずかです。広い視野を持つことが大切だと思います。ダイニチ工業のように、地方都市でも世界と戦える企業があるということを、ぜひ知ってもらえたらと思います。
編集後記
何を重視して就活をするか、その軸が大事だとよく言われる。安定を大事にする人は少なくないはずだが、その本当の意味まで考えている人はどのくらいいるだろうか。ダイニチ工業は、地元に腰を据えて生活しながら、技術へ情熱を注ぐことのできる環境である。新潟へのU・Iターンを検討している就活生には、ぜひとも知ってほしい企業の一つである。
