パナソニックグループ×東レの若手が語る、化学者として「異分野融合」で多様な専門人材と働く意義

インタビュー

LabBase Media 編集部

パナソニックグループ×東レの若手が語る、化学者として「異分野融合」で多様な専門人材と働く意義

くらしのすべてを領域とする事業で、お客さま一人ひとりと向き合い、持続可能な幸せをつくるパナソニックグループと、あらゆる製品の元となる「素材」から社会を変革すべく既存製品の改良や新規製品の開拓を続け先端技術・材料を生み出し続ける東レ。多分野の専門家を擁し、その相乗効果による成果を社会に還元する革新的な両グループの若手2人に、研究の醍醐味と両社の研究環境の魅力を聞いた。 パナソニック ホールディングス株式会社: くらしのすべてを事業領域とする私たちの原動力は、一人ひとりの挑戦。そのため人づくりに力を入れ、成長を全力で応援しています。誰かの幸せのために、まっすぐはたらきたい。そう心から思える方を募集しています。 東レ株式会社: 東レは、“わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します”という企業理念を掲げる総合素材メーカーです。形の無い素材を、多様なニーズに合わせて形を変えて提案する事で、モノづくりに革新を起こしています。活動フィールドは世界中に広がり、国・地域・業界問わず、ビジネスを展開しています。

想定外の会社が、理想を追求するうちに第一志望になっていた



――お二人の学生時代の研究内容を教えてください。


岡部:環境都市工学専攻で、セラミックの表面に有機官能基を導入し、例えば工場の排水から有機溶剤のみを抽出・再利用できるようにするセラミック分離膜技術を研究しました。


東レさんは水処理膜事業も展開していますよね。学生時代は「東レといえば分離膜」のイメージがありました。


山下:私の仕事内容も、液体から対象物を分離するという意味で、厳密に同じではありませんが似ているところはあるかもしれませんね。


学生時代のことをお話しすると、私は医学に関心があり、神経科学専攻で博士課程まで人間の脳を研究しました。当然、人間での実験はできないので、マウスでの実験です。大学に残るか迷いましたが、大学では基本的に同じ分野の人との研究が続くので、「自分の知識の幅を広げるため、多くの事業分野を手がける企業で働きたい」と就職を決めました。


岡部:博士卒での就活はどうでしたか?


山下:応募できる企業は限られてしまいますね。専門が活かせそうな医薬品・医療機器関連企業をしらみつぶしに調べた結果、当初は医療系のイメージのなかった東レが候補に。先輩社員との座談会に参加したとき、良いところだけでなく課題も率直に話していたことが好印象だったんです。


非工学系では難しい「ものづくり」ができそうなことも魅力的でした。医療機器というかたちのある製品の開発に携われることが入社の決め手となりましたね。


岡部さんは、どのように就活を進めましたか?


岡部:最初は素材や原料を扱う化学メーカーを主に調べていましたが、「社会貢献を実感できる働き方がしたい」と考え、最終製品を扱う企業にも目を向けました。それでも、パナソニックは家電のイメージが強く、あまり応募するつもりはなかったんです。


そんなとき、学部卒ですでに入社していた友人から「パナソニックは家電に限らず、家、街、社会と幅広く事業を手がけている」と聞いて興味をもちました。参加した説明会で、多様なバックグラウンドをもつ人材が職種を問わず協力しながら働いていると分かり、自分が活躍できるフィールドもありそうだったので、パナソニックに応募しました。


専門知識を活かした、命を救う製品開発



――先ほど少し話題に上がりましたが、山下さんの仕事内容を詳しく教えてください。


山下:人工透析に代表される「患者から取り出した血液から、疾患の原因物質を取り除いて体内に戻す」体外循環治療のための血液浄化カラムの研究開発に取り組んでいます。


血液浄化カラムは、簡単に説明すると「特定の物質を吸着する繊維が内蔵された容器」。この繊維が効率よく対象物質を吸着できているか、実験室レベルで設計・試作・評価を繰り返しています。


博士卒だからか、入社直後から課題設定や課題解決のための研究方法も自由に任されています。いまは研究の基礎的な段階で、自由な条件設定で実験ごとに有意義なデータが得られるので、研究者として純粋に楽しいです。


以前、開発中の材料に細胞がどんな反応をするか調べるプロジェクトを任されたときには、リアルタイムでの観察のため映像メーカーさんと分析専門の関連会社さんの協力を得ました。アイデアをもらいながら研究を続け、最終的に期待していた結果を導くことができたときはうれしかったですね。


岡部:他社パートナーや関連会社との共同研究は盛んに行われているのでしょうか?


山下:普段から関連会社の方と分析を行うことも多く、そのつながりで紹介された方と共同研究をする機会は多いですね。私も、周囲の専門家から化学の専門知識を日々学んでいます。


一方で、医療機器は人間に対して使うものなので、化学的な知識だけでは完成しません。患者さんに優しい製品とするために、自身のバイオ系の専門知識が役立っていると思います。患者さんの命を救う製品の開発に携われることは大きなやりがいですね。


「高コストでも歓迎される」エコマテリアルの新文化創出を目指して



――岡部さんはどんな仕事を担当されてきたのでしょうか?


岡部:入社直後はEV電源として注目される全固体電池の工法開発に携わりました。2020年以降は生分解性エコマテリアル(生分解性樹脂と植物由来のセルロース繊維との複合で、微生物によって水と二酸化炭素に分解される材料)の開発を担っています。


例えば現在の農業では、保温性を高めるために畑の表面に張るマルチフィルムや苗木ポットなどに大量にプラスチックが用いられています。生分解性材料への置換が進めば、環境への負荷を大きく減らせるでしょう。世界規模の課題である環境問題に直接貢献できる開発に携われることはいまの仕事の大きな魅力です。


新材料は従来品より高価なので、ビジネスとして成立させるには高コストでも導入してくれる顧客の獲得が不可欠です。そこで、開発中の材料が最終的にどんな性能を備えれば顧客にアピールできるか、デザイナーやビジネス戦略の専門家と定期的に会議で意見交換をしています。


山下:異分野の方との協働は刺激的ですよね。その会議で得た気付きなどありましたか?


岡部物事のとらえ方次第で材料の可能性が広がることを実感しました。例えば、技術者目線で「普及には物性の改善とプロセスの効率化によるコストダウンが必要」と評価する材料があるとします。その材料を、デザイナーの方は「ここをアピールすればこんな顧客層に受け入れられそう」と評価するんですよ。


いまでは、「新材料の導入で製品の付加価値がどれだけ高まるか」「どのような顧客が価値を見いだすだろうか」と、高コストを壁にしない考え方をするようになりました。実用化への課題も多いですが、将来的に従来品を代替するだけでない革新的な用途や、まったく新しい文化を創出していけたらと思っています。


一人ひとりが強みを発揮し、相乗効果が生まれる環境



――それぞれの会社ならではの魅力は何だと思いますか?


岡部:異分野の専門家が同じ目標を見据えて協力しあう環境はパナソニックグループの強みです。あまり化学のイメージがないかもしれませんが、研究開発の環境は充実していますし、社会人ドクターとして働きながら専門性を磨く人も多くいます。


技術者の好奇心を尊重し挑戦を応援する風土があり、予算分配も積極的。最近、所長に企画書も何もない状態で「まだ課題も多い材料だけれど、どんな用途があるか議論するために、デザイナーさんとワークショップをしたい」と話したら予算をいただくことができ、新しい取り組みを応援してもらえる風土を感じました。


山下:これまでのお話を聞いて、パナソニックグループさんでは研究段階でもビジネス戦略を重視しているんだなと感じました。やはり、最終製品メーカーさんの特徴でしょうか?


岡部「どうしたらビジネスが成立するか」は常に意識していますね。基礎研究を1、最終製品を5としたら私は2と3の間くらいを担当していますが、職種にかかわらず、営業職でも研究職でも、5段階のどこにでもアクセスできる環境があります。


東レさんも、幅広い領域で高い専門性を持った方々が多く活躍していそうですよね。


山下:そうですね。東レは化学メーカーのイメージが強いかと思いますが、生物化学などの領域横断的な分野を含め多くの博士卒の人材が在籍しています。現在の研究テーマには有機合成の知識が不可欠なので、先輩から日々勉強しながら自分の知識の幅の広がりも実感できています。


自由な働きやすさも魅力です。やるべきことをこなしていれば、時間があるときに自前で試薬を用意して興味に任せた実験を行うことも。主要業務と直接関係がなくても参加できる有志による全社プロジェクトも展開していて、私もフェムテック領域での活動に参加しました。


未知の領域に踏み出し、異分野融合を楽しめる人と働きたい



――両社の強みや企業風土を踏まえて、どんな人がマッチしていると思いますか? 活躍できそうな人物像を教えてください。


山下東レには、たくさんの専門家とのコミュニケーションが苦にならず、むしろいろいろな人と関わりながら仕事に取り組みたいと思う人が向いていると思います。事業領域が多岐にわたるからこそ、専門家に聞かないと分からないという状況はいずれ発生するので、積極的に質問することは東レでの活躍に不可欠です。


同時に、医療機器には高い安全性が求められます。細かな手続きを取りこぼしなく行ったうえで多くの審査を通過する必要があり、段階が進むほど細かい実験を繰り返さなければなりません。そのため、特に私の部署には、細かい作業を時間がかかってもコツコツ取り組める人が向いているでしょう。


岡部:新しい課題に取り組むための新技術や、異分野融合による目まぐるしい変化を楽しめる人がパナソニックグループには向いています。


就活中は業界や事業分野などで切り分けて考えがちですが、働いていると、異分野融合が進み、業界や分野の垣根が取り払われつつあると実感します。材料系の化学者だけではデジタル化の進んだ最新製造設備を使いこなせなくとも、生産技術の専門家と協力すれば、材料のポテンシャルをこれまで以上に発揮できるかもしれません。


多様な機会がある環境をフル活用し、自分の専門も磨きながら、新しい領域への挑戦を楽しめる人が活躍していけると思います。


編集後記


プロフェッショナルがそろう職場環境を最大限に活用し、他分野の知識も積極的に吸収して生き生きと研究に取り組む2人。分野横断的なテーマで成果をあげているのは、自身の専門を深く理解しているからこそだろう。


研究で培った専門性を活かし、大きな挑戦をしてみたい。そう考える学生には、幅広い事業領域を手がけ、社員の自発性を尊重するパナソニックグループ・東レの両グループのような職場環境は最適なのではないだろうか。


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※所属・内容等は取材当時のものです。(2023年4月公開)


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ライター
三輪 愛
カメラマン
山下 智也
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