*所属・内容等は取材当時のものです。(2020年8月公開)
*事業会社制への移行に伴い、2022年4月よりこちらの記事の仕事はパナソニック ホールディングス株式会社へ移管されました。
ゼロから、ものづくりの現場を作りだす
――川上さんが担当されている生産技術とはどのような職種なのでしょうか。
パナソニックの自社工場に導入する生産設備をゼロから作り、製造現場を作りだす仕事です。いくら素晴らしい研究をし、商品企画をしてもそれらを形にする私たち生産技術がいなければパナソニックの製品が皆さんに届くことはありません。
例えば、店頭に並んでいる製品を買ってきてバラバラに分解すると、どのような部品が使われているかは分かります。しかし、どのように加工、組み立てると良いかが分からないと製品にはなりません。そんな他社が簡単にはまねできない製造現場を作っていくことが私たち生産技術の醍醐味です。
また、設備のムリ・ムダ・ムラを徹底的に改善していくことで生産性が向上し、結果的には経営への大きな貢献につながります。こういった長年積み重ねてきた技術力や知見をパナソニック内だけにとどめておくのではなく、事業拡大・成長の面からも他社に設備提供もしています。
生産設備を作るときは、私が所属しているマニュファクチャリングイノベーション本部の開発部門と研究部門、そして製品を企画、設計をしている事業部門が1つのチームとなります。生産設備の問題点を改善したり、どうすれば実装可能になるか検証したりするとき、私たち生産設備の開発部門だけでは分からない現場の観点から考えられます。実際に使用する現場の声を活かした生産設備をスピード感を持って作ることができます。
――パナソニックの生産設備にはどのような特徴があるのでしょうか。
パナソニックは炊飯器や冷蔵庫などの家電製品で広く知られる企業ですが、そもそもその家電を生産する設備もパナソニックの1つの部門で作っていることは他社にはない強みだと思っています。
また、パナソニックには研究開発部門があり、基礎研究している方々と一緒に基礎研究で明らかになった最新の生産設備の理論を開発に落とし込んでいけることも特徴です。ものづくりの川上から川下まですべてに関わり、ものづくりの要となっているのがパナソニックの生産設備に携わる魅力です。
根本にある「メカが好き」という想い
――学生時代に研究していたことを教えてください。
工学部でシューティングロボットを研究していました。学内でもロボコン(全国の学生が集まり競い合うロボットコンテスト)部に所属していて、ずっとロボットに触れている学生時代でした。
もともとNHKの「高専ロボコン」(高等専門学校の学生が対決するロボットコンテスト)という番組がとても好きだったんです。「これはどうやって動いているのだろう」と思いながらいつも見ていました。ロボコン部に入ってからは大会に出場したこともあります。
ロボコンは毎回条件やゴールが変わるので、課題解決の面白さがあります。この点は現在の仕事にもつながりますね。私はロボット製作の中ではメカ担当で構想・設計から製作までしていました。
一方で、プログラミングに詳しい情報系のメンバーに助けてもらうなど、専攻の違う学生同士で教え合えたのは良い経験でした。ロボコン部の活動では、チームワークの重要性を学んだと感じています。
ただ、ロボコンの全国大会に出場するチャンスは3回ありましたが、結局1回しか出られませんでした。今でも悔しい気持ちでいっぱいの思い出です。
――川上さんは本当にメカが好きなんですね。大学院卒業後、研究を続けるために博士課程に進もうとは思いませんでしたか。
進学し、研究を深めるか迷ったこともありました。しかし、私の原動力である「自分が努力して成し遂げたことで、誰かをうれしい気持ちにしたい」という想いをかなえるためには、1日でも早く社会に出て働くことの方が近道だと思ったんです。
大学の研究やロボコンなどで考え抜いたものが形としてできあがったときのワクワクする感じや達成感をもう一度味わいたいという、不完全燃焼だったロボコンへの想いをぶつける場所が早くほしかったのかもしれません。
私はプログラムを駆使した「人型ロボット」より、仕組みに工夫をこらす「からくり人形」的なものに魅力を感じています。工場の生産ラインを紹介するテレビ番組も小学生のときから大好きでした。そういった理由から、からくりのような機構設計ができる企業を探しました。
さまざまな会社の工場見学などで生産設備というのは徹底的に無駄を排除し、考え抜かれた機構が多い印象を持ち、設備を作っている会社を中心に就職活動をしていました。
実際に工場見学で生産設備を間近で見たとき「あー、めちゃくちゃわくわくする! この設備はどうやって動いているんだろう」と思いました。そのとき、子どものときからの「メカが好き」という感情が自分の原点だと改めて実感しましたね。
そんな中でパナソニックを就職先に選んだ理由は、最先端の技術を駆使しながらパナソニックの新しい生産設備や製品を基礎研究や設計開発などさまざまな部門の人たちと作っていくという姿勢に魅力を感じたからです。
「みんなで協力しながら新しい設備を作るんです」とキラキラした表情でおっしゃっていた先輩社員の言葉が決め手でした。
信頼できるメンバーと、世の中にまだないものを生み出す
――入社前と入社後でギャップはありましたか。
入社前に想像していたよりもたくさんの人と関わる仕事だったのは良い意味で意外でした。
また、メカ設計はすでに最終スペックの決まっているものの中から、一番良い構成を選び、作り上げるものだと思い込んでいました。しかし、実際にはどのレベルのスペックアップが必要かを決める段階から関わっていき、他部門とコミュニケーションを取りつつ、動かし方やレーザーを溶接する方法などを細かく決めていくことが多いです。
さらには、生産設備を作るのにかかる価格や納期までのスケジュールなどを決めることにも関わります。生産設備の立場から「こうすればもっと検査が楽になるので、形を変えてみませんか」などの提案もしています。立場や職種が異なることを気にせず、意見を自由に言い合える風土が根付いているからこそ、こういった仕事の進め方ができているのだと思います。
意見を自由に言い合えるだけでなく、分からないことを気軽に聞ける風土にはかなり助けられました。入社当時、私はレーザーやレンズに関する知識がほとんどありませんでした。もちろん、自分で勉強はしますが行き詰まったときに質問すると、皆さん快くメカニズムをきちんと教えてくれました。また、優秀な方々に囲まれて仕事ができるので成長にもつながっています。
2年目でプロジェクトリーダー、責任とやりがい
――仕事は、入社後どのくらいの時期から任されるようになりましたか。
私の場合、1年目は研修で、2年目にプロジェクトリーダーになりました。同じチームの制御や製造に関わるメンバーに助けてもらいながら、必要な改造や制御、部品を換えたことによる組み立て方などをリーダーとして取りまとめています。
――2年目でプロジェクトリーダーは早いですね。仕事の中での苦労があれば教えてください。
そうですね、苦労はたくさんあります。特に設備の構想段階における、1つ1つの部品の図面を作る時期が一番大変です。ここで1つでもミスがあると、その後の工程へ大きく影響を与えてしまうからです。
ただ、自分が作らなければこの世の中に存在しなかったものが生まれる瞬間は言葉にならないぐらいやりがいを感じます。CADで見ていたものが形となって目の前に現れ、無事に動いていることが確認できると本当に感動します。
――仕事で大切にしていることがあれば教えてください。
お客様の期待に応え続けることです。私たちにとってのメインのお客様は生産設備の発注元である事業部門の方々になります。
例えば、そんな事業部門の方々が向き合っている市場の変化に伴い、「生産設備の納期を短縮してほしい(生産設備が稼働できるようになる日を前倒しする)」という要望が発生したとします。こちら側の関係部署だけでなく、お客様である事業部門と1つのチームとして連携しながら生産設備の開発を進めていきます。納期を短縮するにはどうすればよいか、どんな情報が先にあればスムーズに各担当が仕事を進めやすいか意見を徹底的に出し合い、情報共有し、スピード感を重視しながら対応します。
パナソニックの場合、生産設備の発注元と発注先など立場は違えど、同じパナソニックの仲間です。目標達成に向けて一致団結して、「一緒に達成しよう」「問題があったら解決しよう」と言ってくれる仲間がいることは心強いです。
そんな風に、いつも助けてくれる仲間でもありお客様でもあるメンバーの期待に常に応え続けていきたいと思っています。
――最近、話題になっているスマートファクトリーについての取り組みがあれば教えてください。
私の担当ではないのですが、パナソニックとしては工場ごとの「縦割り」をなくし、コスト削減や効率性、利益率を高める取り組みをスタートしています。中国には約60拠点の工場があります。そのすべての工場について「IoT」技術を使い部品の調達や物流、生産設備の稼働状況に関するデータに至るまでを一元管理するものです。
さまざまなデータを工場間で共有し合うことで、機構部品や電子部品を共通化したり、稼働状況に余力のある工場に生産をまわすことができるようになります。このように、パナソニックの資産をフル活用することができれば外注費や固定費の削減で全工場の生産性の向上が可能になります。
また、製造現場には人に依存するさまざまなノウハウが多く存在します。いわゆる、匠の技と呼ばれるものです。そういった匠の勘や経験をデジタル化、可視化することで判断を自動化し新人作業者の習熟期間の短縮や発生頻度が少ない製品もミスなく作ることができるようになります。こういった形で、生産設備の現場にもIoT化の流れがきています。
学生時代の専攻は気にしなくても良い
――パナソニックの生産技術に向いている理系学生はどのような人だと思いますか。
1人ではなくチームで仕事をしたい人に向いていると思います。学生時代の専攻は気にしなくても大丈夫です。専門的なことを勉強する機会は会社の研修で用意されています。配属される部門によって研修内容は異なりますが、私の場合は材料研修や構想研修などを受けました。
例えば、材料研修では提示された条件を満たすように混ぜるものの配合を変えてエポキシ接着剤や基板に使うはんだ材料を作成し、引張試験(基準より小さな力で引っ張ってもちぎれてしまわないかなどの評価)までを行いました。そこで、材料開発の大まかな流れを学びました。
また、構想研修では3つのグループに分かれて小さな装置を製作し、一番良かったものが実際に採用されたりしました。どの研修も丁寧に教えていただけるので、専門外でも安心してください。
それから、現場の雰囲気や仕事の進め方を知りたいという人のためにOJT型のインターンシップがあるので、興味のある人はぜひ応募してほしいです。広大な工場で生産設備が生き物みたいに動いている様子を見たらきっとワクワクできますよ。
また、変化を好む人にも向いていると思います。当たり前ですが、時代とともに社会から求められるものは変化します。その変化に伴い、パナソニックが作る製品も変化します。つまり、生産設備も時代とともに変化します。
例えば、以前は太陽光パネルを生産する設備を作り、現在は電池を生産する設備を作っている人もいます。そんな風に手掛ける生産設備も製品もどんどん変わるので新しいことをやってみたい人にも向いていると思います。
――最後に、パナソニックと川上さんのマッチングポイントを1つあげるなら、何だと思いますか。
「社会をより良くしたい」という想いです。会社は社会の公器であり、より良いくらし、より良い社会の実現のために一翼を担うことがパナソニックの創業当時からのミッション。その会社のミッションと私の「手掛けた設備で、社会に役立つものを次々生み出したい」というミッションがマッチしているのを日々実感しますし、それがやりがいにもつながっていますね。

パナソニック採用サイト新卒採用ページは こちら
編集後記
仕事やメカの話になると、川上さんはとびきりの笑顔を見せてくれる。メカ好きだからこそ楽しめる生産設備の仕事、研究所もあるパナソニックだからこそ得られるやりがい……。「だからこそ」という感覚は、就職先としてパナソニックを考える上で、大きなポイントになるだろう。