(写真左から株式会社POL代表取締役CEO 加茂倫明、京都大学 小南佑介さん、名古屋大学 永井一輝さん)
■登壇者
株式会社POL代表取締役CEO 加茂倫明
名古屋大学 永井一輝さん
名古屋大学大学院 情報学研究科 修士2年(2019年3月28日時点)
博物館や科学館とテクノロジーを結び付けるための研究に従事。2019年4月より金融系企業(総合職)に就職。就活スタイルは慎重かつ実直。慎重すぎて面接おかわりをするなどアグレッシブな一面も。誠実そうな外見通りの真摯な発言と、その真逆の常識の枠を超えるアグレッシブな言動のギャップで会場を戸惑わせる。
京都大学 学部4年生 小南佑介さん(通称:コミさん)
Twitter:@komi_edtr _1230
京都大学理学部 4年(イベント時は3年)
書店で何となく手に取った本をきっかけに独学でディープラーニングを学んだ後、学部2年のころから日立製作所で研究員として働き、機械学習にどっぷり浸かる。強化学習の本を執筆したり、スイス留学をしたり、「新卒800万」でTwitterで炎上したり、その後も●●や△△で炎上したり(※ 詳細編集部による自粛)人生ネタだらけ。現在強気の就活中。どんな意識高いドヤ系かと思いきや、気さくなパーソナリティで会場を驚かせる。
以下、敬称略
データサイエンティストの就活を考える。
加茂
今回のパネルディスカッションが、就活を考えている理系学生、特にデータサイエンティスト学生にとってためになるようなものにしたいと考えています。まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。
僕は東京大学工学部に在籍しながら、POLという会社を立ち上げました。理系学生と企業をつなぐ『LabBase』というサービスを軸に、オープンイノベーションや新規事業を推進したい企業と、大学・研究者とをつなぐナレッジプラットフォーム『LabBaseX』などの開発を行っています。先日3回目の休学届けを出してきたところです(笑)。
パネリストは名古屋大学大学院 情報学研究科の永井さん、京都大学理学部3年のコミさんの2名です。よろしくお願いします。
永井
名古屋大学大学院で博物館や科学館の来館者の行動分析を研究していました。数日前卒業したばかりで、金融系の企業に就職が決まっています。
コミ
京都大学理学部3年、現在就活中です。Twitter就活と言っていますが、求人サイトには一切登録せず、Twitter上で今何を勉強しているか、自分に何ができるかを発信し、僕に興味のある企業さんはいませんか?という逆求人をしています。10社以上オファーをもらっています。
加茂
永井さんはなぜ金融系を選ばれたのですか?
永井
僕は学部と修士で2回就活しています。金融業界に興味を持ったという自覚は実は全くなく、働く環境として自分に合った、この会社の人たちと働いてみたいなと思えたというのがたまたまその金融の会社だったということです。
追加面接依頼にTwitter就活――王道とは一線を画す就活のしかた
加茂
就活はどのように行ってきましたか(行っていますか)?
永井
何がやりたいかより、自分がどんな環境でどんな人たちと働くのがいいのかを重視しました。それを知るには企業から提供される面接回数では足りなくて、自ら追加面接を要求して何度も話し合いました。
説明会の内容はほとんどパンフレットに書いてあるし、面接も型通りの質問に用意してきた答えを繰り返すのでは大切なことが聞けません。この会社に入ってから5年後の自分はどうなっているのか、具体的にいつどんな研修があるのか、気になることは自分から聞くしかありません。僕の就活はそんなヒアリングがほとんどでした。就職を決めた会社は、それにしっかり答えてくれました。
コミ
僕は最近まで大学院に進むか迷っていて、先輩に相談してみたところ、大学院に行くにしても、一度社会に出て働いてみてから院に戻った方が、研究に対する問題意識が明確化するのではないかと言われたんです。なるほどと思いました。一度働いてみて、大学院に行かないと実現できないなと思うようなものがあれば戻ればいいと考えが変わりました。
加茂
社会人の学び直しはイレギュラーなことではないですからね。ところで大変個性的な就活方法で800万円稼ごうとしていますね?
コミ
Twitter就活を始めたのは、たまたまというか、先輩とTwitter上でやり取りをしていた流れで、今就職したら自分の値打ちはいくらだろうという話になり、800万円くらいか?と。それでTweetしてみたら、2社からオファーが来たという…。炎上しましたが。
今はエンジニアの層が厚い企業を探しています。自分よりすごい人がたくさんいた方がいいなと。なのでベンチャーよりは大企業がいいです。
データサイエンティストの仕事とは。
加茂
お2人はデータサイエンティストの仕事についてどう考えますか?
コミ
2013年くらいにディープランニンングがバズり始め、それからデータを扱う仕事が増えるだろうと言われ出し、今がピークという感覚があります。学生がデータサイエンティストを目指すのも流行っているし、データを扱う仕事が増え、メインになってきてもいます。データサイエンティストにとっては自分のできる仕事が増え、給料もそれなりにいい。そんな印象です。
加茂
データサイエンスを始めたきっかけは?
コミ
2年くらい前、なんとなく始めました。何か勉強したいけど何をやろう?と思いながら書店をふらふらしていて、 『ゼロから作るDeep Learning』を買いました。強い動機があったわけではありませんが、楽しくて独学で勉強しました。その後、日立製作所のアルバイトに受かり、そこで機械学習をがっつりやらせてもらいました。好奇心ドリブンな動き方をしてきたという感じです。
永井
僕の場合は、データサイエンティストとして採用されたわけではないと思います。なので、どういう働き方をするかはまだわかりません。
研究していた中で思うのは、博物館などに協力してもらって、データをもらうのですが、それから得られることを学生側から提案してくれと言われるんです。そこが面白くて、データサイエンティストがいる意味はそこにあると思います。こういうデータがありませんか?あればこんなことができますよと言える、今までにない人材だと思います。広い視野を持ち、自分がパフォーマンスを出すことで会社がどういうプレゼンスを発揮できるかを捉えられる。そんな人が求められると思います。
加茂
AI、データサイエンスをそろそろやらねば…という感覚はどの企業も持っているのに、人材がいない。単にスキルあります!ではなくて、具体的にこういうことができます!という提案が大事ですね。
ところで、永井さんは学部卒と院卒の就活に違いはありましたか?
永井
学部の時は「大学で頑張ったこと」を聞かれます。大学院の時は「何の研究をやってるの?」が聞かれます。専門家として話を聞かれるので、研究をちゃんとやっていないと困るのかもしれません。専門性を求められるので選択肢は狭まると思います。
理系学生が自分の市場価値を高めるには。
加茂
お2人はどのように自分のスキルや社会の中での市場価値を高めていきましたか?
コミ
プログラミングなど、試行錯誤した過程を勉強のログとして残しておくこと。ブログやSNSを使って効果的にアプローチすれば、この人はこれを勉強したんだという認知にもなります。みんな勉強しているし、修士に行けば全員研究しています。 差別化はアウトプットでしかできないと思います。
永井
就活をしていて思うことは意外と自分自身のことを聞かれないなということ。専門や志望動機などお決まりの質問はありますが、なぜそれをしたいのか、何にモチベーションを感じて、どの環境で最大のパフォーマンスが出せるのかを聞かれることはあまりありません。自分はこれがしたい、これがしたくないということを発信できる機会があれば有利になると思います。
就活ルール改変で何が変わる?
加茂
就活ルール改変にあたり、就活の仕方はどのように変化していくのか、お考えをお伺いしたいと思います。型破りな就活を既にされているコミさん、いかがでしょうか?
コミ
今までの古典的な採用スタイルだと、採用される側も画一化してきます。理論武装できる人が勝てる。ルール改変でこれがなくなります。自己発信力や、コミュニティを広げ、自分の市場価値を高めることが大切になってくるのかなと思います。
永井
今まで一斉に行われてきた就活が、気がついたら自分のまわりの人の就活が終わってた…ということもあり得るのかなと。興味のあった企業の選考がすでに終わっていた、とか…。そうならないためにも、自分がやりたいことやりたくないことを早い段階ではっきりさせておく必要があるだろうと思います。
金融業界は理系学生にとってチャンス。
加茂
今回金融業界の企業の方々にお越しいただいていますが、fintechという言葉が流行っているように変革の時期を迎えている業界です。お2人の印象はいかがですか?
コミ
金融は硬いとか固定的な概念に縛られる、そんなイメージがありました。今回イベントに参加して、今まさに変わり始めているんだと感じました。AI技術を取り入れて新しい流れに乗ろうとしている、変わろうとしている姿を見ることができました。伸びる市場だと思うし、僕らのようなIT系スキルのある人材が参入する価値がある世界だと感じました。
永井
やはり硬い印象がありました。金融に就職を決めたわけですが、企業の担当者には「今まで金融業界にいなかったタイプの人が欲しいんだ」と言われてきました。理系学生は実際に求められていて、そういう意味ではチャンスだと思います。時期的にも、チャンスの多い時期だと思います。
加茂
最後に、これから就活する理系学生に向けてメッセージをお願いします。
コミ
僕自身、学生時代、就活に至るまで意識してきたことは、自分は何ができるのか。自分とは何者かを問いかけてきました。皆さんも、対外的に自分をアピールすることに注力してほしいなと思います。
永井
大学院生としての立場で言わせていただくと、就活に失敗したから大学院に行くというパターンはおすすめしません。大学院進学と就職を迷っているとしたら、大学院で何がしたいのか、就職で何がしたいのか、どちらの思いが強いのかで選択するべきです。コミさんはアウトプットが得意ですが、僕は自分を見つめ直す、自分が何がしたくて何がしたくないのかをはっきりさせるということに注力しました。
加茂
データサイエンスはあらゆる業界を変えられる力があります。業界のイメージに左右されるのではなく、自分のやりたいことと会社の本質をしっかり見極めるということが大切ですね。
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これからの就活は、“就活ルール廃止”によって、早期化、長期化、新卒一括採用の廃止など、変化の真っ只中にあります。スキルと専門性を持った学生にとっては、これまでの「王道就活」とは異なる独自のアピール、アプローチでプレゼンスを発揮していくことが当たり前になっていくのかもしれません。
過渡期にあるからこそ、スキルと専門性を高めることに注力すること、自分自身の価値観に向き合うことこそが就活の支柱になってきます。
社会の変化に振り回されずに自分のベストキャリアを模索するためにも、将来を見据えたしっかりとした支柱を作ることが重要だということを実感させられました。