【理系就活生必見!】今さら聞けない注目技術分野−自動運転技術編–

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LabBase Media 編集部

【理系就活生必見!】今さら聞けない注目技術分野−自動運転技術編–

実質上の就活解禁を目前に控え、業界・企業研究を深めておきたいところ。しかし、研究に忙しい理系生にとって研究室の中からでは、最新の業界動向はみえにくいかもしれません。本記事では、業界区切りでなく、理系が気になる技術やテーマから、業界動向、企業紹介も交えながら就活に活かすエッセンスをお届けします。

今回のkey word:自動運転技術


日本の産業の要とも言われる自動車の中でもIT化が進み、自動運転車の開発はその初めの一手とされています。また、自動運転技術においては自動車メーカーにとどまらず、大手IT企業であるGoogleとAmazonといった新たな海外企業の競合も増えてきています。早期に自動運転技術開発をスタートさせていたAppleも唐突に自動運転に関する計画を表明する可能性もあり、自動運転分野は、もはやハードウェア専門の領域とは言い難く、企業の生存競争が激化している状態です。


一方で2019年の東京モーターショーにおいては、自動運転に関して積極的な進展があるとはいえなかったとの論もあります。背景には、画像認識の技術は着実に進化し、法整備なども進んでいる中、社会受容性についてはまだ大きなハードルがあるということ。完全自動化になる社会にはもう少し時間を要するようです。とは言え目覚ましい技術革新が進み、また、今後必ず拡大する領域でもあります。2020年1月初旬にラスベガスで開催された「CES」ではソニーが自動車をお披露目したことも話題を呼びました。そこで、本記事では日本企業の動向を中心に、各自動車メーカーが取り組む技術開発、事業戦略の現状と今後の展望について話していきたいと思います。



ソニーが自動車をお披露目したCES2020の様子


そもそも自動運転技術とは?


人に代わってシステムが車の運転を担う、それが自動運転。搭載される技術によって0〜5までのレベルに分けられています※1。レベル2までが現在、市販車に採用されていますが、「運転支援車」という位置付けで「自動運転車」ではありません。


一方で高度な自動運転に係る市場化等を見据えた制度整備の検討が開始され、今後法改正により自動運転車の実現が進めば、交通事故の防止、渋滞の解消や緩和、地方部での高齢者を中心とした移動手段の確保などが期待できると言われています。
※1 官民 ITS 構想・ロードマップ 2019参照


現在の「自動運転」の技術レベル


自動運転技術レベルについては以下の通りです※2



レベル0(運転自動化なし)


  • 運転者が全ての運転操作を実施する(操縦の主体は運転者)

レベル1(運転支援)


  • システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかの車両制御に係る運転操作の一部を行う(操縦の主体は運転者)

レベル2(部分運転自動化)


  • システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う(操縦の主体は運転者)

レベル 3 (条件付運転自動化)


  • システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行
  • 作動継続が困難な場合、システムの介入要求等に運転者が適切に応答

レベル 4 (高度運転自動化)


  • システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行

レベル 5 (完全運転自動化)


  • システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に実行

自動運転レベル2までの運転主体はあくまで運転者であり、システムは安全運転を支援する装置という位置付けですので完全な自動運転とは呼べません。自動運転レベル3から運転者とシステムが混在して対応することになり、自動運転レベル4からはシステムが運転主体となります。
※2官民 ITS 構想・ロードマップ 2019を基に作成



日本における自動運転市場と政策動向


マーケティング事業を展開する富士キメラ総研は、2019年4月の発表で自動運転システム市場は2030年には2兆2100億円規模に達すると予測、2017年比で451.2倍ほどにもなるとも言われており、今後伸びていく市場であることは間違いありません。一方で法規制が追いついていない状況から、理想的な「完全運転自動化」には、まだ時間がかかるというのが現状です。


また、政策動向としては、内閣府が2018年4月に発表した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム研究開発計画」によると、2020年を目途に自動運転レベル3、2025 年を目途に自動運転レベル4の市場化がそれぞれ可能となるよう、研究開発を進めて必要な技術の確立を図るとしています。
2018年12月には警察庁が道路交通法の改正案を発表しました。自動運転レベル3稼働時に人がシステムと運転を交代できることを前提に、スマートフォンや携帯電話の利用のほか、読書をすることなども認める内容で、2020年前半の施行を目標としています。

参考)自動運転中のルール整備 改正道交法が成立


このように日進月歩で進んでいく技術と共にこれまでのルールも変化させていくことで先の未来とされていた自動運転の世界が、現実へと近づいてきています。


また、自動運転産業に参入しているのは大企業だけではありません。ベンチャー企業で目立つのは、「自動運転の目」と呼ばれるコアセンサー開発が多く見られます。現在、LiDARなどのコアセンサーを市販車に搭載するとなれば、高価格となり現実的ではありません。要素技術ベンチャーが高品質で低価格のセンサーを開発することが今後のコアセンサー領域の潮流となってくると言われています。


自動運転技術 企業紹介


自動運転技術はイノベーションに次ぐイノベーションによって、常に前進しています。2017年遂にドイツの自動車メーカー・アウディが自動運転レベル3(条件付運転自動化)に該当するシステムを世界で初めて量産車に搭載。2020年前半にはいよいよ日本国内の道路法が改正し、自動運転レベル3の市場化が可能となります。この自動運転の大きなターニングポイントと言える2020年。日本企業における自動運転の開発・導入状況などを調べてみました。


1.株式会社デンソー


世界屈指の自動車部品メーカーであるデンソー。部品製造という「ハードウェア専門企業」という面を剥がし、近年、自動運転に注力しておりパターン認識やAIなどADAS/AD(高度運転支援システム・自動運転)と呼ばれる「ソフトウェア面」の事業にも注力を当てている。



同社では「周りを見る」「先を読む」「人とつながる」「社会とつながる」「もしもに備える」の5つを、自動運転を支えるキーファクターと位置づけている。その上でヒトの視覚能力を超える知覚を提供し、周りを見るための多様なセンサをはじめとした、正確な道路状況を先読みするためのシステム、眠気などドライバーの状態を見守るシステム、スマートフォンなどと連携するシステム、高度な情報セキュリティシステムなど、自動運転技術の開発を進めている。


2018年4月には自動運転分野の新拠点としてGlobal R&D Tokyoを開設。R&Dを機能集約し一般道におけるレベル2~3の自動運転や、限定領域内におけるレベル4までの自動運転に焦点を当てて研究開発を行う。2020年6月には、羽田空港跡地エリアに自動運転技術の試作開発・実証を行う新拠点を発表。2020年度にはADAS分野で売上高2,000億円を目指す


さらに、自社開発だけではなく、2019年12月にはトヨタとの合弁会社MIRISE Technologies」を設立。自動運転技術開発をさらに加速させるため今後、次世代の車載半導体の研究や半導体関連企業との連携に積極的に取り組んでいくものとみられる。


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2.本田技研工業株式会社


同社は2020年夏をメドに、条件付きで運転を自動化する「レベル3」の自動運転車を発売すると2019年12月に発表。「自動運転レベル3」を市販するのは国内自動車メーカーでは初となる。一定の条件下であれば緊急時を除きシステムが運転し、乗車している人は前方を向かずにスマートフォンの操作やテレビの視聴などが可能となる。


同社が開発した安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダセンシング)」は、衝突軽減ブレーキやアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、車線維持支援システムなどを備えている。また、2020年1月の米国ラスベガスで行われたCES 2020では、ドライバーの意思を読み取り自動運転と手動運転を切り替え意のままに自動車を操れる最新のシステムを開発。今後は、自家用車では高速道路における自動運転の実用化として2020年を目処に高度なレベル2を実現し、レベル3へと発展させるとしている。2025年以降にはレベル4の高速道路での完全自動運転の実現を目指している。


3.株式会社豊田中央研究所


同社は、自動車関連技術の研究開発を目的として1960年にトヨタグループ9社の共同出資を受けて設立された研究所であり、自動運転技術の主な開発拠点である。


トヨタは自動運転に関して「人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築く」という理念をベースに開発を進めている。これまでに車両運動統合制御・状態推定技術や顔画像処理技術、ナイトビュー向け歩行者検出技術の開発などで成果を上げている。


2019年2月にはトヨタ自動車と共同で、クルマの衝突事故における人体の傷害発生メカニズムをコンピューター上で解析できるバーチャル人体モデル「THUMS(サムス:Total HUman Model for Safety)」を改良、「THUMS バージョン6」として発表。乗員の身構え状態やリラックス状態など様々な筋力状態を模擬可能し、自動運転車両などの普及による将来の乗員姿勢の多様化を想定した、より精度の高い解析が可能となった。自動運転には「認知」「判断」「操作」が必要。今後も同社はそれらをセンサや信号処理技術、学習判断、車両制御によって実現する。



4.ソフトバンク


ソフトバンクと言えば、通信会社のイメージが大きいが、ソフトバンクグループは非通信領域においてロボットやAIなど新規事業を強化していく方針を明らかにしている。その一つに、モビリティ分野の参入を進めており「自動運転」を突破口とし、市場の席巻を狙う。


2016年4月、自動運転技術を活用したモビリティサービスの事業化を目指し、自動運転技術を研究・開発する先進モビリティ(東大生産研・次世代モビリティ研究センターを母体として設立された大学発ベンチャー)と合弁でSBドライブを設立。自動運転バスの実用化に向けた周辺サービスの開発を進めている。2019年7月には、自動運転「レベル2」に対応する自動運転車両の公道走行実証実験を東京都内で開始。多人数が乗るバスによる自律走行の実証実験は国内初となり、今後2025年までに自律走行バス1万台の普及を目指す。



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5.ITD Lab株式会社


同社は“スバル・アイサイトで使用されているステレオカメラ” の発明者である元東工大准教授 実吉敬二(現在ITD Lab代表取締役 会長 兼CTO) が創業メンバーの一人として加わって2016年5月に創業した会社。


AI(人工知能)が自動運転車の「脳」であれば、自動運転車の「目」はセンサーである。同社はぶつからない世界を実現する“超高速3次元画像認識技術”を核としたステレオカメラを開発。これは高解像度で物体の輪郭を抽出し、且つ物体までの距離を高速で自動計算が可能。アイサイトでも実現できていない高速リアルタイム自動調整が搭載されており、ステレオカメラが本質的に抱える問題も解決している。また、LiDAR、ミリ波レーダーといった他のコアセンサーよりもシステムのコストや大きさ、消費電力を大幅に抑えることができるという。


2018年6月には、ニッセイ・キャピタル株式会社と三井住友海上キャピタル株式会社、ミナトホールディングス株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の4社から計4億8000万円の資金調達を行い、自動運転レベル4(高度運転自動化)〜自動運転レベル5(完全運転自動化)のシステム構築を視野にさらなる開発を目指す。


テレビ東京のバーチャルアナウンサー「相内ユウカ」がWBS解説陣に聞く「夢の「自動運転」 日本って進んでるの?遅れてるの?」も併せてみると、日系企業の取り組みの今が分かっておすすめだ。



writer:保 美和子(タモツ ミワコ)
神戸大学大学院理学研究科分子生理学研究室にて、ハエをモデルとした摂食に関わる分子機構と神経基盤を研究。2017年パーソルキャリア株式会社に新卒入社後、eiicon companyに配属。外部から新たな技術やアイデアと連携し、革新的な製品、またはビジネスモデルを開発する手法「オープンイノベーション」を実践する企業を支援するプラットフォーム「eiicon(エイコン)」の企画・営業を担当。2019年にフリーライターとして独立。


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