大手企業との取引実績も豊富。安定したビジネスモデル

――オークラ輸送機はどんな事業を行う会社かお聞かせください。
物を運ぶ「マテリアルハンドリング(マテハン)」の総合メーカーとして、物流・製造業界向けの設備やシステムの開発・生産・販売をしています。工場で生産された商品や物流倉庫に保管された商品が消費者に出荷されるまでの搬送仕分けに関する物流工程が、オークラ輸送機の専門領域です。具体的には、コンベヤやロボット、仕分けシステムなどの装置を開発しています。
納入先は食品、飲料メーカーなどの生産工場のほか、医薬品や日用品などの物流ハブとなる大型の流通センターなどから引き合いが増えています。ネット通販の商品も各流通センター内で仕分けされて出荷されますから、当社の設備やシステムは日常的に我々が使う商品の物流を支えています。また、国外にも拠点を持ち、海外の生産工場などの設備も手がけています。
大手通販会社や家電量販店、大手日用品メーカーなど、誰もが知る会社への導入実績が多く、安定したビジネス基盤の上で、スケールの大きな仕事ができることも当社の特徴です。
――物流機器の業界には、どのようなトレンドや課題があるのでしょうか?
日本の物流においては、少子高齢化が1つ大きな課題といえます。多数のパートタイム労働者を要する流通センターでは人手不足が深刻で、同時に高齢者比率も上昇しています。人手不足に対応するために、DX対応は急務であり、このジャンルは今後も堅調な需要が予測されます。
これまで、作業スピードや正確性を求める声が多かったのですが、昨今はGTP(Goods To Person)、現場で働く人のペースや体勢に合わせた「人に優しい機械」の需要が高まっています。また、使い方が難しい機械はトラブルの要因となり得るので、すぐに誰でも使える簡単な操作性への配慮が欠かせません。
産業用ロボットを「自社開発」できる強み
――業界内で、オークラ輸送機がもつ競争優位性について教えてください。
物流の全工程をカバーする設備・システムを取り扱っている点です。総合的にお客さまの物流をサポートするシステムを提案できるのは、当社を含めて日本に数社ほどしかありません。
また、箱や袋、ケースといった荷物をパレットに積み付ける作業を自動化する「パレタイザ」などの産業用ロボットを自社開発していることも独自の強みと言えるでしょう。高速動作に強い4軸と、柔軟な動きが可能な6軸の多関節ロボットアームを開発し、なかには3DカメラやAIコントローラーなどを搭載した製品もあります。
――創業90年を超える物流機器メーカーとして、高い技術力の蓄積もありそうです。
パレタイザには、ロボット型以外に長い歴史を持つメカ式もあります。もともとオークラ輸送機はパレタイザに注力していましたが、メカ式は能力が出やすいメリットの半面、大型で広いスペースを要する難点があります。省スペース化の要望を受け、早い段階からロボット型を開発し、技術力を磨いてきました。
ロボットに関しては主要機器の一つと認識し、開発に人的リソースを割き、能力アップや操作性向上のために日々改善を図っています。
当社は、コンベヤや仕分けシステムなどの領域でも時代のニーズを捉えた製品を生み出し、業界に変革を起こしながら市場シェアを拡大してきました。特許取得済みのシステムや技術も多数あります。現在はより複雑な現場のニーズに対応すべく、外部とも連携しながらソリューションを構築しています。
――オークラ輸送機では、技術者はどのようにスキルを習得していくのでしょうか。
技術者向けの手厚い研修制度や学習サポートを用意しています。入社後3カ月はビジネスマナーや当社の事業について学び、機械、電気、制御などの基礎知識も横断的に学習します。
その後の3カ月は配属部署で専門知識を身に付けます。OJT形式で確実に技術を習得していくことができます。
また、「社内大学」という教育制度もあります。ここでは、入社10年目までの技術者を対象に、技術のフォローアップ研修を提供しています。現役技術者を講師として、実践的なノウハウや社内に蓄積された知見を習得できる機会です。2年に1回、技術習熟度を判定する「技術者資格制度」や、資格取得費用の全額補助などもあり、積極的に技術者のレベルアップを支援しています。
理系の論理的思考が物流機器のトラブルを解決
――オークラ輸送機の技術部門で、特にこだわっていることはありますか?
品質を追求するのは当然のことですが、ここ数年はDXによる効率的な品質チェックを推進しています。特に製造部門ではいち早く品質管理システムを導入し、作業フローやデータの見える化を進めています。製造工程のどこに何があるかを可視化し、問題が起きたときに確認しやすくしたことで、人為的な原因なのか、それともシステム由来の原因かを素早く判断して対処できるようになりました。
工場では、管理者や各部署のリーダーが月1回現場を視察して問題点を指摘し、改善活動を推進する取り組みも継続しています。「製造設備やオペレーションを見直し続けることは、製品の品質アップのために必須」という考えです。作業者ごとに品質にムラが出ないよう、ビデオなどの教材を使った学習方法で業務の標準化にも努めています。
――会社としての今後の展望をお聞かせいただけますか?
ネット通販市場は間違いなく需要の伸びる分野なので、今後も注力していきます。「人に優しい機械」のトレンドにも柔軟に対応することで、他社とのさらなる差別化を狙っていきたいですね。
――電気電子分野の理系人材は、オークラ輸送機でどのような役割を果たしていくことになるのでしょうか?
当社は機械メーカーですが、コンベヤやロボットには機械設計の他に、ソフトウエアのプログラムを書いて命を吹き込む制御設計が必要になります。心臓であるプログラムが正しく機能することではじめて、工場や流通センターから人の手に物が届くわけですから、電気電子系の出身者が担う制御設計は当社に不可欠な役割といえます。
私を含む設計部門の仕事は正常に作動する機械の納品だけでなく、イレギュラーな事態への対処がかなりのウエートを占めています。制御設計者の論理思考が、致命的なトラブルからお客さまを救うともいえますね。
物流工程で多品種の物を流す場合、品種の組み合わせは無限にあり、テストでは起きなかったトラブルが本番で発生することも。月1回程度でしか発生しないトラブルだと、プログラム解析が非常に困難です。動作テストをして原因を究明して得た知見は、次回の設計に活かすことができます。
100点満点の製品を作るのは簡単ではありませんが、80点や90点との差は大きいので、1点でも上げられるように制御設計の経験を積んでスキルアップしていってほしいです。
「縁の下の力持ち」として社会に貢献

――技術者にとって、オークラ輸送機だからこそできる経験があれば教えてください。
当社の設備やシステムは、「ワンクリックで注文した商品が、翌日に届く」といったネット通販の利便性を陰から支えています。「絶対にユーザーに商品を届ける」というプライドを持ち、誰もが知る大手企業のサービスを支えるものづくりができるのはオークラ輸送機ならではですね。
時代の変化に伴い、当社の技術者が関われる幅も広がっています。従来は倉庫の中を人が歩いて商品をピッキングしていましたが、重い物を運ぶ、低い位置から持ち上げる作業は、年配の労働者には負担が大きいです。そこで発想を転換し、ピッキングする商品がやって来るような設備を開発できれば、働き方を変革できます。
人材市場の多様化を考えれば、今後は外国人労働者でも使いやすい、多言語対応のタッチパネルを搭載する必要も出てくるでしょう。社会の変化をイメージしながら設備を開発する経験は、技術者のクリエイティビティとスキルの向上に必ず役立つはずです。
――最後に、理系学生に向けてメッセージをお願いします。
物流や製造業界の中でも、特にマテハンは消費者から見えにくい分野です。しかし、物流業界で働く人やエンドユーザーに価値を届ける「縁の下の力持ち」として、社会貢献度が高い仕事といえます。電気電子系のバックグラウンドを活かし、活躍してくれる人を歓迎しています。
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#### 編集後記
オークラ輸送機が生み出すロボットやコンベヤといった物流機器は社会課題解決の一端を担い、働き方の変革や社会の多様性にも寄与できる存在だ。同時に、消費者が享受する「当たり前」の物流サービスの裏側には、物流機器の制御設計や品質チェックの絶えまない努力がある。もはや社会インフラの一部ともいえる同社の物流機器づくりに、自身の専門性を活かして挑戦してみてはいかがだろうか。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2023年2月公開)
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