デジタルインフラで挑むDXとサステナビリティ

――シーメンスの沿革と事業について教えてください。
江戸時代にドイツのシーメンス製の電信機が日本に持ち込まれたことを皮切りに、当社は発電機などの供給により日本における「電気」の普及に貢献してきました。日本の電気の周波数が東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツと異なるのは、東京地区で最初に導入された発電機がシーメンス製、大阪地区がGE製だったことによるんです。鉄道や製鉄所などさまざまな用途の電気機器の開発・供給を通して、産業の変革を進めてきた会社といえます。他社に先駆けて明治時代に日本オフィスを開設した外資系企業でもあり、130年以上にわたり私たちの社会インフラを支えています。
現代はデジタル技術によるビジネス変革が進む第4次産業革命の真っただ中。インフラのDX需要を受け、当社はソフトウェアとハードウェアの両面でデジタルインフラの提供を推進しているところです。
――シーメンス日本法人のミッションを伺えますか?
「日本のDX実現を支援する」ことが当社のミッションです。DXとは単に作業のデジタル化ではなく、仕事のプロセス自体を変えること。当社はデジタルツイン(現実世界のデータをもとに、デジタル上に現実世界を再現する技術)なども駆使して工場制御、設計、検査、監視などのシステムを提供し、ビジネスのプロセス改革を支援しています。
――ミッション遂行にあたり、特に意識していることは何でしょうか?
品質、速さ、コスト、サステナビリティの四つが大きなテーマです。技量や熟練度だけで四つ全てを成立させる最適解を導き出すことは難しく、当社ではこれらの情報を連携させた思考や計画をサポートするデジタルプラットフォームで、お客さまのサステナビリティに貢献しています。
例えば、お客さまが作る製品の脱炭素化には、構成部品の炭素消費をチェックするトレーサビリティが重要です。デジタルツインを使えば、製品企画、設計、製造、販売などものづくりのプロセスの連続性が見えやすくなり、カーボンフットプリントなどの情報も連携できます。設計段階で実現可能性や製造コストも分かるので、製造時に不具合や非効率が発生するのを防げます。
日本企業の「デジタルの標準」を作る

――DX推進にはどんな産業トレンドが影響しているのでしょうか。
特に注目すべきは自動車、航空機、電機の3業界です。
自動車業界は電気自動車(EV)の盛り上がりに伴い、バッテリー生産が加速しています。でも、日本の新車に占めるEV比率は約3%と低く、バッテリー供給量も海外と比べて極端に少ない状態。この状況を踏まえ、トヨタ自動車は2027〜28年までに航続距離の長い全固体電池のEVを実用化する計画です。自動車設計の概念そのものが変わるわけで、今後は電気部品・組み込みソフトウェアと車体との連携がポイントとなってきます。
航空機業界については、日本には国産の旅客機がありません。しかし現在の米中の緊張関係から防衛用の戦闘機を作る動きがあり、設計基盤にはシーメンスの提供するソリューションが採用されています。この動きは今後さらに拡大していくでしょう。
電機業界は、コンピューター端末にソフトウェアをインストールしないクラウド型の使い方が一般化。クラウドにアクセスすれば最新版のソフトウェアをどこからでも使えるため、端末がハイスペックである必要がなくなりました。クラウド化はインフラコストの低減と、常に最新バージョンを使用できる環境を提供しています。
――日本市場全体にはどんな課題がありますか?
日本企業は「2025年の崖」という問題を抱えています。企業・部門ごとの利便性を追求して独自にカスタマイズを重ねてきた既存システムは新しい技術に対応できず、高いセキュリティリスクなど課題が山積。IT投資の9割を保守費用に回さざるを得ない状況のため、コスト対策でシステムのバージョンアップを踏みとどまる企業も多いです。こうした事情が2025年以降に最大で年12兆円の経済損失を生むといわれており、ビジネスを成長させるためには解決が急務です。
――業界のトレンドや課題に、シーメンスはどのように切り込んでいるのでしょうか?
これからは「デジタルの標準」を作ることがシーメンスのミッションです。
カスタマイズに頼った道具の進化のサイクルから脱し、グローバルスタンダードのシステムへの移行をお客さまに提案しています。シーメンスのプラットフォームを導入し、クラウドに入れてすぐ使える「Out-of-the-Box(OOTB)」方式のソフトウェアで社内のインフラ系統を整備するというDXです。
OOTB方式にすることで業務プロセスが変わりますから、戸惑うお客さまも当然います。既存システムからのスムーズな移行のために、最初に業務プロセスの現状を確認し、それをどう変えると業務が変革されるかを議論したうえでDXを進めるようにしています。
――「デジタルの標準」が行き渡った未来では、ビジネスの在り方も変わっていきそうです。
明治維新以降、日本では自動車も飛行機も欧米を追いかけることで進化してきましたが、昨今のデジタルの世界は目指す未来像が分かりにくいことが課題です。日本人が得意なチームワークを活かせるよう、まずは「ビジュアル化」により課題や目標をメンバー間で直感的に共有する必要があると思います。
さらにビジネス教育という面では、デジタルの時代には教科書だけでなく議論からの学びが必須。オープンディスカッションやブレーンストーミングを活発化させ、議論から出た発想をビジネスに活かすのが理想的です。
「就社」ではなく「就職」。「やりたいこと」を見つけて

――堀田さんは2020年にCEOに就任されました。仕事において重視している価値観を教えてください。
「ワクワクすることを追求する」のが仕事だと思うので、私は会社を移りながらも40年近く自分が楽しいと感じる仕事を続けています。
就職活動中の人は、「就社」と「就職」を分けて考えてみてください。就社は、志望する会社に入ること。就職は、「ウェブに関わりたい」「AIを開発したい」などと希望の職に就くこと。私は就社ではなく就職が人生の充実につながると考えてきました。
就職に値するやりたいことを見つけるコツは、時間を忘れるほどワクワクしながら取り組めるかどうか。自己分析でやりたい方向性を探るのもいいですね。
――やりたいことを実現する環境選びの大切さにも気付かされます。シーメンスで働く魅力は何だと思いますか?
一般的な外資系企業より広い業界に関わりながら、グローバルの仲間やお客さまと一緒に仕事ができることですね。AIやサステナビリティなど各領域の世界トップの人たちと直接対話して課題を解決するという、ダイナミックな活動ができます。
多様性のある従業員がともに働くグローバル企業なので、性別の面でも区別なく一人の人間として働きやすい環境です。産休・育休の取得も何ら支障になることなくキャリアを形成できます。
チームで経験を磨き、海外で活躍のチャンスも

――求める人材像や、活躍するためのヒントを伺えますか?
「ものづくりをする企業を支援したい」という思いを持ってグローバルな働き方を志向し、自身の専門性を活かして何かを変えていく熱意を持つ人に入社してほしいです。私は機械工学科卒で、専門性を軸に経験を広げることが他者との差別化にもなると実感しています。
当社では1〜50人程度の規模のプロジェクトチームがあり、若手は小規模チームでお客さまの対応方法や技術のアピール方法などを学びます。成長したらドイツやアメリカのシーメンスで大型プロジェクトに参画するチャンスもあるので、積極的に手を挙げる人が活躍できますよ。
私も含めエンジニア職の理系人材はやがて、マネージャー職という道も視野に入ってきます。マネージャー職も一つの専門職なので、例えば機械設計に振動学や材料力学が必要であるように、マネジメントにも基礎知識が必要です。マネージャー職を目指すときは、MBAの社会人向けコースなどの受講を考えてみてください。
――これから入社する理系人材に身に付けておいてほしいスキルはありますか?
英語は読解力より、会話力。そして異文化の相手と相互理解を深める力が鍵です。学生期間に自身のアイデンティティーを明確にし、英語で説明できるコミュニケーション力やプレゼン力を養っておくといいと思います。
世界で活躍するなら、運転免許証も取得しておいてください。日本の大都市のように交通機関が発達した場所ばかりではないですからね。
――最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
日本には世界随一の整った社会インフラがあり、それはデジタル化を推進するうえで大きな強みと考えています。時刻表通りにバスや電車が来て乗り継ぎもスムーズなのは、デジタルによる情報管理とリアルの作業を連動させ、一人ひとりの努力とチームワークで支えているから。工場規模以上に、社会規模でDXを実現しやすい基盤があるということです。
こうした日本の底力をもっと発揮して、世界初のデジタルソリューションやアイデアを生み出し、世界をリードする若手を輩出していきたいですね。
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#### 編集後記
日本有数の外資系企業としての歴史と実績を礎に、シーメンスは日本の産業界に「デジタルの標準」をもたらすことでものづくり企業を力強くバックアップしている。理系の専門性に軸足を置き、国内での経験を基にグローバルに活躍の場を広げるキャリアには、エンジニア職を超えるやりがいも期待できそうだ。明確なビジョンと戦略を持つ同社で、自身の「やりたいこと」をぜひ形にしてみてほしい。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2023年12月公開)
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