「医薬品」を通じて「人とのつながり」を実感できる仕事

――学生時代はどんな分野を専攻していたのでしょうか。
津田:生命科学を専攻し、タンパク質の研究を行っていました。感染症の原因になる寄生虫が持っているタンパク質の機能を明らかにして、薬剤標的になり得るかを調べるのがテーマでした。
多田羅:私は薬学部で主に脳梗塞の研究をしていました。脳梗塞になったラットを観察し、脳の障害が起きる過程や、薬を投与することで脳の組織がどのように修復され、ラット自体の行動がどう変化するのか研究していました。
――どのように就職活動を進めていきましたか。
津田:修士の1回生で就職活動を開始したときは製薬企業、CROメーカー、体外診断薬メーカーなどを回りました。
沢井製薬は、テレビCMで目にしてきた馴染みのある企業でした。病気による不利益を薬によって解決したいという思いと、スローガンである「なによりも患者さんのために」に込められた思いがフィットして、就職先として意識するようになりました。
多田羅:祖父が医薬品卸の仕事をしていた影響もあり、自然と薬学部へ進学を決めました。初めは薬剤師になるつもりでしたが、新卒としてのアドバンテージを活かして製薬会社の研究職に就くのもいいなと思うようになったんです。
ですがいざ就職活動をしてみると、一つのことを突き詰める研究職よりも、幅広い情報を収集しながらマルチに対応する職種のほうが、自分の本来の持ち味を活かせるのではないかと思うように。そこで製薬会社のなかでも、生産に関わる職種を中心に就職活動することにしました。
工場の窓口と品質の番人として。安全、確実に薬を届ける

――お二人が働いている生産技術職・品質保証職のミッションは何ですか?
津田:生産技術職は、より効率的な製造方法を検討し、高品質な製品を安定して世の中に届けることをミッションに、日々業務にあたっています。
主な業務は次の3つです。研究開発で作り方を決めたものを工場で生産するにあたっての準備や実験の調整を行う「新製品の立ち上げ」。工場で製造している製品にトラブルが起きた際に、技術的なフォローを行う「既存品のフォロー」。原薬の仕入れ先を変えても、品質の変わらない医薬品を製造することができるかを検討する「マルチソース化の検討」です。
多田羅:生産技術部は工場の窓口、品質保証部は品質の番人と例えられます。研究開発や原料の調達に関わる質問、工場内での技術的な困りごとは、生産技術部が真っ先に対応します。一方で品質保証部は、医薬品生産プロセスの全ての工程で安全性や有効性をチェックする役割を担っています。
品質保証部と似た名前の部署である品質管理部は、できた製品が品質基準を満たしているかを、試験を通じて判定するのが主な仕事。私たち品質保証部では、製造工程でトラブルがないかだけでなく、品質管理の試験プロセスが適切に行われたかどうかも含め、第三者的な視点から品質確認を行い出荷の可否を決めています。
――お二人が現在携わっている業務も教えてください。
津田:今は生産技術部で新製品の立ち上げと既存品のフォローを担当しています。立ち上げ業務では、研究開発でスケールアップを担当している部署と連携して、工場で本当に生産可能かどうかを検証し、製造許可を都道府県から取得します。
既存品のサポートでは、「いつもより粗い粉ができた」「錠剤が欠けている」などといったトラブルに対する相談を受けることが多いです。その場合は、他の部署と協力しながら過去のロットの製造データを調べて、問題点を探して解決策を示します。
多田羅:出荷判定を行う前の製造及び試験プロセスの確認を担当しています。例えば、その製品で予定されていた変更が正しく実施されているか、発生したトラブルの処理が適切に完了しているかなどを確認しています。
他にも各工場で受け持っている製品の1年間の製造実績を振り返り、通常と異なる傾向が発生していないか、または改善の余地がないかを確認し、製品に関する情報の取りまとめを行っています。問題があれば改善案も検討します。
大切な人たちの服薬生活を縁の下で支える責任とやりがい

――生産技術職・品質保証職の仕事で苦労するのはどんなところでしょうか。
津田:製造が止まると他の製品にも影響が出ますし、かといって私たち生産技術がチェック項目を多くするとその分サンプリングや試験が増えて、他の部署の業務を圧迫してしまいます。一つの決断が、さまざまな部署に影響を及ぼす大きな責任が伴うということが大変なところです。
多田羅:トラブルが起きても、医薬品は患者さんのもとへ供給し続けなければなりません。急いで手立てを講じて製造を再開する必要がある一方で、品質も妥協はできないため、迅速かつ的確な判断が求められます。外からは見えづらいですが、医薬品の品質と安定供給を縁の下で支えている存在だと考えています。
また品質保証の仕事は最終判断をする部署なので、求められる知識も膨大です。製造も、試験も、法律も見ながら、さまざまなタスクをこなす必要があります。
――責任を伴う分、やりがいも多くありそうですね。
津田:生産技術の仕事の性質上、自分たちが考えたことを他の部署に伝え、実行してもらうことが多くなります。連携がうまくいったときにはバトンがつながったような一体感が得られ、うれしくなりますね。
また、伯母が沢井製薬の医薬品を長年服用しているのですが、伯母が飲んでいる薬を担当することになったんです。伯母の服用生活を支える仕事をしているんだと、誇らしい気持ちになりましたね。同時に、沢井製薬の医薬品を待っている人がいると思うと、一層仕事に真剣に取り組まなければと身が引き締まる思いにもなりました。
多田羅:沢井製薬は業界トップクラスの製造品目数を誇るだけに、トラブルの種類もさまざまなことが想定されます。そうした環境下で鍛えられ成長できるのは、この会社ならではのやりがいでしょう。
患者さんからの喜びの声を耳にする折には、世間からの沢井製薬に対する信用は、自分たちが思っている以上に高いものがあると実感します。時には厳しい声をいただくこともありますが、世間の期待とそれに伴う責任を感じます。
――職場環境や福利厚生について教えてください。
津田:最終面接では多くの企業が時間に制約があるなか、沢井製薬では自由な雰囲気の中、1時間ほどの時間をかけて自分の強みや想いをじっくりと引き出してもらいました。
実際に入社すると面接での印象通り、入社1年目でも役職者から意見を求められることも多く、社員の意見に耳を傾けてくれる風通しの良い会社です。
多田羅:休暇も取得しやすく、ゴールデンウイークといった長期の連休には工場全体を休業して、連休にします。沢井製薬の工場は、都心にも出かけられる場所に立地しているので、余暇も充実させられると思いますよ。
津田:WELBOXという福利厚生制度では、1年間で約6万円分のポイントが支給され、医療費や生活のさまざまな場面で利用することができ、家計の面で助かっています。 8年間は家賃の7割が補助される制度も社員から人気です。
教育制度も整っており、右も左も分からない入社したての頃には、電話応対の仕方や会議室の予約方法、メールの送り方など、メンターがきめ細かくビジネスの基本から指導してくれます。一番身近な相談相手として、メンターの先輩社員には独り立ちするまでお世話になりました。
視野を広げると見えてくる、「自分だからできる仕事」

――どんな人がこの仕事に向いていると思いますか。
津田:私がこの仕事に必要だと思っている能力は、バックグラウンドが異なる方とのコミュニケーションを円滑に取ることができること。守らないといけない法律が多い職場環境なので、決められたルールをきちんと守ること。そしていろいろなことに興味を持って、自分自身で知識を深める努力ができることです。
他部署との連携が欠かせない工場の仕事は、自分の部門以外の業務への理解が必要になります。相手の事情にも配慮しながら協力関係を築いていけるような人が向いているのではないでしょうか。
多田羅:工場でいざ一つのことを動かすとなると、いろいろな部署との連携が不可欠です。自分さえ良ければいい、自分の部署さえ良ければいいという考え方では、円滑に工場を動かすことはできず、結果として医薬品を待ち望む患者さんに安定供給することができません。
コミュニケーションをとることが好きで、ものづくりに関わりたいという学生さんにはぴったりの仕事ではないかと思います。
――最後に、就職活動中の学生さんにアドバイスをお願いします。
多田羅:学生時代に研究畑にいると、どうしても仕事も研究職ありきで就職活動をしてしまいがちです。ですが、自分の性格や得意なことを振り返ってみると、活躍できる場は研究職だけでないということに気付くはず。いろんな人と関わりながらマルチタスクで動くことが得意だと思える人は、生産技術職・品質保証職も選択肢の一つに入ってくるのではないかと思います。
津田:「本当に自分は研究に向いているのかな」と少しでも迷いがある人は、ぜひ私たちのような工場での仕事にも視野を広げてみてほしいですね。
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編集後記
今年は理系を中心に、100人以上の新卒採用を目標にしているという沢井製薬。高いコミュニケーション能力に自信がある人、ものづくりへの興味がある人にとって、自分の持ち味を活かしながら、やりがいをもって働くことができる貴重な職場といえる。仕事を通じて、患者さんの服薬生活を支えるという社会貢献ができる生産技術職・品質管理職・品質保証職。医薬品の命ともいえる品質に携わる仕事に興味がある人は、一度工場で働く社会人の先輩の話を聞くことから検討してはいかがだろうか。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2024年7月公開)
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