半導体設計の「縁の下の力持ち」として、日本のものづくりを支える──シーメンスEDAが描く技術営業の新キャリア

インタビュー

LabBase Media 編集部

半導体設計の「縁の下の力持ち」として、日本のものづくりを支える──シーメンスEDAが描く技術営業の新キャリア

理系大学院生にとって、技術的な知識を活かしながらビジネスの最前線で活躍できる環境を見つけることは決して容易ではない。多くの学生がエンジニア職か営業職かの二択で迷う中、その両方の魅力を兼ね備えた「アプリケーションエンジニア」という職種が注目を集めている。 半導体設計の根幹を支えるEDA(電子設計自動化)分野のリーディングカンパニー、シーメンスEDAジャパンでは、新卒採用再開を機に、理系学生の新たなキャリアパスを提案している。技術と営業の橋渡し役として、日本のものづくりを陰から支える仕事の実態と魅力について、現場で活躍する2名のアプリケーションエンジニアに話を聞いた。 シーメンスEDAジャパン株式会社: 1983年設立(旧メンター・グラフィックス・ジャパン)のEDA(電子設計自動化)分野における日本のリーディングカンパニー。本社は東京都品川区。ドイツ・シーメンス傘下で、ICおよびPCBの設計・検証から製造まで、半導体開発に必要なソフトウェアツールを提供。特に物理設計検証ツール「Calibre」では業界標準的地位を確立し、先端半導体の開発を世界規模で支えている。

「お客様のお話を聞くこと」から始まる技術営業


──まず、アプリケーションエンジニアという職種について教えてください。


石田:私たちの仕事の目標は、お客様に当社製品を知っていただき価値を実感していただくことです。お客様もエンジニアですから、しっかりお客様と技術的な会話をしながら、製品の良さをご理解いただき納得いただく必要があるんです。だから、この仕事は「技術の知識とコミュニケーションを活かして信頼を築く仕事」と言えますね。


渡辺:私は入社して1年足らずですが、先輩からは「まずは何かしら頼られる人材になりなさい」と教わりました。小さなことでもお客様のお困りごとを聞く役割から始めて、お客様との関係性を築いていくこともアプリケーションエンジニアの仕事だと認識しています。


──会社内での位置付けはいかがですか?


石田:シーメンスEDAのワールドワイドの従業員の約8~9割が、このAE(アプリケーションエンジニア)で構成されています。それだけ重要なポジションということですね。


半導体開発を支える「設計・検証ツール」


──EDAという分野について、詳しく教えてください。


渡辺:昔は人が紙に回路を描いたり、手作業で設計していたものを、コンピュータのソフトウェアで自動化・効率化できるようにしたものです。電子回路の設計や動作確認から、設計したものが実際に工場で作れるかどうかをチェックするところまで、半導体づくりの流れ全体を支えるのがEDAの役割です。


石田:特に弊社の強みは「Calibre(キャリバー)」という物理設計検証ツールです。これはアナログ・デジタル関係なく業界標準となっており、圧倒的なシェアを持っています。半導体がどんどん微細化していく中で、物理設計のルールチェックに必要なノウハウが蓄積されているのが強みですね。


──将来性についてはいかがでしょうか?


石田:微細化が進むにつれ、検証工程が2030年までに今の5倍程度に増えるという予測があります。このままでは工程がパンクしてしまうため、AIを活用して5~10倍の効率化を目指す開発を進めています。まさに成長分野といえるでしょう。



新卒でも挑戦可能──求められる人材像と成長環境


──新卒採用が久しぶりということですが、新卒でもこの仕事はできるのでしょうか?


石田:知識だけでなくコミュニケーション能力も求められるので大変だとは思いますが、新卒からでも十分に挑戦可能だと考えています。お客様に貢献するスペシャリストとしてのキャリアを、最初から築いていくことができます。


渡辺:世の中ではコンサルブームで新卒の方がコンサルに行かれることが多いですが、みなさん仕事経験がない中で、日々、知識や経験を積みながら相談業務を行っているケースが多いかと思います。EDAでも同様と考えることもできます。


──どのような人材が適しているでしょうか?

石田:工学系の基礎知識(数学・電気・計算機)があることは前提ですが、エンジニアリングだけに固執しない柔軟性のある人が適していると思います。「工学部・理学部所属だけど文系就職も視野に入れている」など、技術一筋というより、幅広い興味を持てる人材ですね。


渡辺:半導体専攻は必須ではありません。半導体業界への強い興味と学習意欲があれば十分です。


グローバル環境で働く醍醐味


──グローバル企業として、海外とのやり取りはどの程度ありますか?


渡辺:より複雑な技術課題に対しては、アメリカやインドのエキスパートに相談することがあります。主にメールやチャットでのやり取りですが、週単位で複数回、多いときは毎日、海外メンバーとコミュニケーションを取っています。


石田:年に2回程度、全世界の同僚が集まるイベントがあります。表彰や目標共有、ネットワーキングを行う、まさにお祭りのような雰囲気です。外資系企業らしく派手な演出で、音楽やライティングもあって、パーティーのような感覚ですね。


──英語力はどの程度必要ですか?


石田:グローバルとの技術連携に必須なので、高い英語力を求めたいと思っています。読み書きはツール支援もできますが、聞く・話すは本人の能力が重要です。


渡辺:明確な基準は特には無いですね。入社後に学ぶ意欲があることの方が重要だと考えています。



日本のものづくりを支える使命感


──お二人のキャリア目標を教えてください。


石田:いろいろな日本の会社のものづくりに貢献したいと思っています。この仕事の魅力は、幅広く様々なお客様のものづくりをサポートできることです。そのためにも、ツールの知識や検証技術についての知識・スキルを更に高めていきたいと考えています。


渡辺:将来的には、技術面とビジネス面の両方をバランスよく扱える人材になりたいと考えています。まずは、チームメンバーやお客様から信頼され、頼られる存在になることを目標にしています。その基盤を築くことで、売上目標の達成に向けた選択肢を広げられると考えています。


──職場環境について教えてください。


渡辺:週2~3回程度の出社が推奨されていて、テレワークも可能です。経験を積んだエンジニアは裁量労働制が適用となるので、平日の日中に市役所や病院に行けるのも嬉しいポイントです。


石田:基本、1アカウントを1人のAEが担当する為、責任は大きいですが、その分自由度も高く、自分なりのソリューションを提案できます。また、シーメンスグループ会社のオフィスが近くにあるため、新卒で入った場合はグループ内で同期との横のつながりも作ることができます。


新卒への門戸と未来への期待


──研修制度やサポート体制について教えてください。


石田:新卒採用は久しぶりなので、体系的な研修制度は限定的です。Globalの研修で各国の仲間と一緒に参加する研修もありますが、基本的にはOJT中心で、チーム全体でサポートしていく形になります。


渡辺:人数が少ない分、周りの人がカバーしやすいメリットもあります。まずはお客様の前に立たない技術問い合わせ対応などのバックオフィス業務から始めて、技術的な知見を深めていく形で慣れていただけると思います。


──最後に、新卒の方へメッセージをお願いします。


石田:日本のものづくりを支えたいという熱い想いを持った方に来ていただきたいです。この仕事の魅力は、一つの会社の製品だけでなく、様々なお客様のものづくりをサポートできることです。


渡辺:何事にもくじけずに、積極的にコミュニケーションを取って仕事を進めていく熱意を持った方をお待ちしています。半導体関連のニュースや論文を日常的にチェックして、業界の動向に興味を持ち続けることも大切ですね。また、自分から取りに行くという主体性も重要です。分からないことがあれば即座に社内外のエキスパートに相談し、学習ループを回していける人が向いていると思います。



編集後記


半導体業界の急成長を支える「縁の下の力持ち」として、技術とビジネスの両方に携わる魅力的なキャリアパスがここにある。新卒でも挑戦可能でありながら、高い専門性と国際的な視野を身につけることができるアプリケーションエンジニアという職種は、理系学生にとって新たな選択肢となるだろう。


特に印象的だったのは、両名が共通して「日本のものづくりを支える」という使命感を持っていることだ。グローバル企業でありながら、日本の顧客に価値を提供するという明確な役割は、理系人材が社会貢献を実感しながらキャリアを積める理想的な環境といえる。技術への探究心と人との関わりを両立したい学生にとって、シーメンスEDAの門戸は輝ける未来への入り口かもしれない。


シーメンスEDAジャパン株式会社の 「企業情報」をチェック!

ライター
五十嵐 裕樹
カメラマン
先方 提供
X Facebook

企業情報

シーメンスEDAジャパン株式会社

シーメンスEDAジャパン株式会社

半導体の進化は、EDAなくして語れない。 ──“技術をわかる”からこそできる、アプリケーションエンジニアという選択。 ■事業概要 シーメンスEDAは、シーメンスグループの一員として、世界の最先端半導体の設計・製造を支えるEDA(Electronic Design Automation)ツールを開発・提供しています。私たちの製品群は「ICが正しく動作するか」「物理的に製造できるか」といった課題をシミュレーションや検証で支援。いわば**半導体設計における“デジタルツイン”**として、設計ミスの早期発見や製造歩留まりの改善を実現し、半導体の“品質”と“開発スピード”を大きく高めています。 当社は、EDA業界で「グローバルBig 3」と呼ばれるトップ企業の一角を担っています。世界有数の半導体メーカー(ファウンドリを含む)が当社製品を採用しており、とりわけ「Calibre」や「Tessent」といった製品群は、最先端チップの設計・製造に不可欠なグローバルスタンダードとして広く利用されています。 シーメンスEDAの仕事は、AR/VRデバイスや自動運転車、データセンター向けAIプロセッサ、HPC、さらには医療機器や通信インフラなど、多彩なアプリケーションを支える“半導体IC”の開発基盤を担うことにつながります。あなたの技術が、社会を変える最先端製品の裏側に生きています。 ■シーメンスEDAジャパンで働く魅力は? シーメンスEDAジャパンの仕事は、単に自社プロダクトを“売る”だけではありません。お客様であるプロのエンジニアと共に、技術課題を“解決する”ことが本質です。大手半導体メーカーと未来の開発ロードマップを描くパートナーとして、設計の初期段階から深く関与できる点が大きな魅力です。 さらに、海外メンバーと連携しながら課題解決に取り組むため、グローバルな視点と経験を磨き、世界で通用する人材へと成長できます。理系的な思考力や専門知識を活かしつつ、ビジネス創出にも携われるため、「ものづくりを支えるエンジニア」であると同時に「ビジネスパーソン」としてのキャリアも築けます。 ■半導体設計に不可欠なEDA半導体の設計・検証・製造を支えるEDAは、最先端の半導体開発に欠かせない存在です。EDAは、製品が実際に作られる前に設計を仮想空間で試行・検証できるため、まさに半導体におけるデジタルツイン技術といえます。EDAなしでは新製品の開発も既存製品の改良も不可能であり、社会に不可欠な基盤技術です。 こうした高度なEDA技術を持つ企業は、世界でも米国を中心とした数社のみ。当社シーメンスEDAは、その中でも圧倒的な競争力を誇る製品群を軸に、世界中の半導体メーカーから信頼を得ています。代表的な製品群は業界のグローバルスタンダードとして、最先端の半導体設計・製造を支えています。 シーメンスグループは「Customer Impact」「Empowered People」「Technology with Purpose」「Growth Mindset」の4つを成長戦略として掲げています。特に重要なのがGrowth Mindsetです。社員一人ひとりの成長が、会社の成長、そしてお客様への価値提供につながるという考え方です。 シーメンスEDAジャパンで働くことは、世界に不可欠な半導体産業を支えると同時に、自らも成長し続けられる環境で挑戦できるということ。自分の努力と成長が、社会を動かすテクノロジーに直結する――そんな誇りある仕事に、私たちと一緒に未来を創りましょう。 ■企業情報・製品情報など https://mentorg.co.jp/company/ https://mentorg.co.jp/ https://eda.sw.siemens.com/en-US/