面接は「相互理解」の場
書類審査から面接に進めるということは、企業があなたの経験やバックグランドに興味を持っていることを意味します。そのため、書類通過をした人は、まずはその企業が自分に興味を持っていることに自信を持ってください。
履歴書や応募フォームでは応募者からの情報量が制限されるため、気になる応募者のことをもっと深く知るために企業は彼らを面接に呼びます。また応募者も、企業研究を深掘りすると公式ホームページや就活掲示板などでは解決できない疑問や気になる部分が出てくるはず。面接は、両者が互いに開示してより相手を深く知り、こうした「気になる部分」を解消する場というわけです。
採用面接、理系はどこを見られている?
企業は理系の新卒採用において、専門性以上に気にしている部分があります。それは「情報を伝える能力」です。
理系学生は何かしらの専門分野で研究をした経験があるはず。研究では、未知のテーマに対して必要な知識やスキルを習得し、仮説検証を繰り返しながら課題を解決に導くというフローをたどります。このように、未経験の物事に対して能動的かつクリエイティブに粘り強く取り組む姿勢は、企業に入社してからも活きる理系人材ならではの強みといえるでしょう。
就活の面接において最も重要なのは、そういった経験を相手に的確に整理・要約して伝えることができるか、ということです。なぜなら、バックグラウンドの異なる相手に複雑な物事や難解な話をそのまま伝えても、多くの場合は理解されないからです。
大学の研究室は、共通の研究領域に関わる人が密集している空間です。日常会話で研究テーマの話をする時も、細かな前提や基本知識についていちいち説明しなくとも、たいていは会話が成立するでしょう。
しかし、企業ではそうはいきません。社内には、理系の中で専門分野の異なる人や、文系出身の人材も多くいます。多くの場合、そういった人たちとも協力しながら業務を進めていくことが必要になります。
そういった場面で必要になるのが、必要な要素を整理、要約して相手に伝えること。多くの企業では、理系学生の面接で「研究内容について教えてください」という質問をしますが、それは「あなたの研究について詳しくなりたい」という意味ではありません。この質問を通し、自分の抱えている課題と解決のためのアプローチを、初対面の人間にわかりやすく伝える力が問われているのです。
理系の面接、ここがポイント
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では、共有している知識が極端に少ない相手に対し情報をわかりやすく伝えるためには、一体どうしたら良いのでしょうか。面接で意識すべきポイントについて、具体的に見ていきます。
両親や親戚を相手にしているつもりで話す
面接で研究内容について問われたら、現在の研究内容が応募先の業務に直結するようなごく一部の例外を除き、「相手は何も知らない」つもりで答えましょう。
理系学生の陥りやすいパターンの一つに、話のベースラインを見誤ることがあります。研究室内での、専門分野に関する文脈を省略した会話に慣れていると、つい「これくらいは説明しなくてもいいだろう」と思い、相手が自分の話を理解していないことに気づけないまま一方通行的に研究内容を話してしまいがちです。そうではなく、目の前にいる面接官は自分の専門分野について何も知らない素人だと考えましょう。
例えばあなたがグラフェンに関する研究をしているとして、両親や親戚に研究内容を説明する状況を考えてみてください。予備知識や説明なしに「グラフェン」という名称をいきなり出しても、相手は100%理解できないでしょうし、彼らに「厚さが1原子分の炭素のシート状構造で原子間距離が何々、電子軌道が……」という説明もしないでしょう。
せいぜい「ふつうの炭素は立体的に原子が積み上がっているけど、特殊な方法で一枚の極薄シートにしたものがグラフェン」という非常にかみ砕いた説明になるはずです。
面接で必要なことは、あくまで「相手に伝えること」です。あなた自身も、研究室に初めて配属された時には意味の分からない用語だらけだったはず。その頃のことを思い出しながら、どのような話し方をすれば何も知らない相手に伝わるか、よく考えてみましょう。
一度の受け答えに情報を詰め込みすぎない
しかし、詳しい説明を省略することばかりが全てではありません。どうしても専門性の高い説明をしなければならない場面で意識してほしいのは、「一度の回答に全ての情報を詰め込まずに、分散させる」ということです。
具体的なシチュエーションを挙げてみましょう。グラフェンを説明する場合、自分の研究の独自性を伝えようとすると、原子のドーピングや電子軌道について言及をせざるを得ない場合があります。そのような場合、専門用語はなるべく使わず、大枠の話をしてみましょう。
多くの場合、非専門家は研究のディティールよりも大枠のほうが理解しやすいため、「グラフェンの持つこのような物性に対し、xxという原子を入れると物性がこのように変化します。そのメカニズムを解明する研究です」と説明すれば、聞き手もあなたの研究のフレームを理解することができます。
さらに面接官が興味を持てば「現時点でどのような仮説を考えていますか?」と質問してくるはず。そうしたら、少しずつ専門的な回答をしていきましょう。
理系出身でも、学校を卒業して何年も経っていると、専門的な話にすぐになじめなくなっている場合が多々あります。面接官が文系出身の場合はなおさら注意が必要で、前置きなしに専門用語が交じると、その瞬間に話が伝わらなくなると考えましょう。
まとめると、専門的な話をする場合は極力シンプルな表現に丸めるよう意識し、どうしても詳しい説明が必要な場合は情報を小出しにしましょう。慣れないうちは難しいかもしれませんが、理系ではない友人や家族に自分の研究内容を説明してみると良い練習になります。
流暢さよりも「相手にとっての分かりやすさ」優先で
就活の場でありがちな例として、話し方の流暢さを気にしすぎて話が空回りし、説明の順番がおぼつかなくなって話が伝わらなくなるということがあります。
もちろん、よどみなく話せるに越したことはないのですが、面接で最も重要なのは「相手が理解できるように伝えること」です。特に理系の応募者の場合、たいていの面接官は、応募者が「話の得意なタイプではないかもしれない」くらいの気構えは持っています。話の途中でかんだり、少し間が空くくらいのことを気にする必要はありません。
もし緊張で話が支離滅裂になっていることに気づいたら、話の途中でも「すみません、話題が少々前後しましたが、XXに関する内容は伝わりましたでしょうか?」と思い切って確認してみましょう。伝わらない話を一方的に続けるよりも、コミュニケーションを成立させようとしている努力を買ってくれる可能性が高いはずです。
理系人材としての価値を自覚しつつ、丁寧な受け答えを
本記事で紹介した内容は、理系人材が面接に臨むにあたって意識すべき基本的なポイントです。ここまで述べたことを押さえるだけでも、面接で企業側に与える印象はかなりポジティブになるはずです。
繰り返しになりますが、重要なのは「面接官に話を理解してもらう」ことと「自分が企業にとって有益な人間であると感じてもらう」ことです。どんなに難解で画期的な研究をしていたとしても、相手にその価値が伝わらなければ意味がありません。
面接官から見ても、緊張でガチガチになる就活生はあなたが初めてではありません。毎年、何百人何千人という学生の面接をしている採用担当からすれば、あなた以上に緊張している人とキリがないほど対応しています。たとえうまく話せなかったとしても、必死に伝えようとすしていれば、その情熱は必ず届くはず。
これから就労人口がどんどん少なっていく日本の社会で、理系出身者は非常に貴重な人材です。「自分程度の知識や経験で需要があるのだろうか……」などとネガティブに考えず、理系であることに自信を持って面接に臨んでいただければ幸いです。