新しい価値を創造しつづけるモダンな「資生堂」
1872年、漢方薬が主流の時代に、日本初の民間洋風調剤薬局として東京・銀座に誕生して以来、140年以上の歴史を持つ資生堂。中国の古典「易経」の一節に由来する「資生堂」という社名には、「人々の生活の中に新たな価値を生み出す」という決意が込められている。
海軍病院の薬局長であった福原有信は、世間に広まる粗悪な薬品の多さを憂い、日本にはない医薬分業システムの確立を志して資生堂を開業。当時このような薬局スタイルは珍しく、また品質の高い薬は高価だったため、はじめは経営が苦しかった。しかし、「高品質、先進性、本物志向」という理念が理解されるにつれて、徐々に評判が広まっていく。
1897年には、化粧水「オイデルミン」のほか数点の商品を発売し、化粧品業界に進出した。オイデルミンの成分は、日本薬学会の初代会頭であり「日本の近代薬学の祖」ともされる長井長義教授の研究によるもの。化粧品業界への進出当初から、資生堂は薬品に傾けた情熱と同じ熱量を化粧品事業にも注ぎ、高品質志向を貫いている。同製品は改良を重ね、現在は高機能化粧液として人々に愛用されている。
1916年には、薬局から化粧品部門が独立し、化粧品の販売を行う化粧品部が開店。1918年に発売された「資生堂コールドクリーム」の品質の高さから、同社の化粧品に対する信頼度は跳ね上がった。この製品を皮切りに20年代以降に国内各社が次々にコールドクリームを発表するが、同製品の人気は根強く、改良を重ねながら40年以上も人々に愛用され続けた。
高度経済成長と共に、国内外で目覚ましく花開く
1927年、初代社長の福原信三のもとで「株式会社資生堂」が発足し、1931年には東南アジア向けに「ローズ化粧品」の輸出をするなど、本格的な海外進出にも乗り出す。翌年には「化粧品の資生堂」のイメージを決定づけることとなった大人気ブランド「ドルックス」が登場するなど、株式会社化してからの数年で資生堂は劇的な成長を遂げた。
1949年には上場も果たし、1960年から70年かけてはハワイやイタリアなど欧米で製品販売や店舗展開が盛んに行われる。70年にはシンガポール、71年にはニュージーランド、72年にはタイランドに拠点を設立するなど、高度経済成長期の海外展開は華々しいものだった。
国外での活躍だけでなく、国内での発展も目覚ましい。事業の多角化を進め、59年には美容学校設立、73年には今も「最高級のフレンチレストラン」と称されるロオジエを開店した。70年代後半にはパリからデザイナーを招いたファッションショーを主催したり、アートハウスを設立したりなど、「美と先進的な流行」を強く印象づける。
高度経済成長期からバブル期にかけて需要が著しく増大する世相の中、同社はこの時期に「既成概念を破るような新しいライフスタイルのあり方」を社会に発信し、このコンセプトは、多くの女性の心をつかんだ。
事業の多角化にあたり、1989年には企業理念を「Our Mission, Values and Way」と制定。各国に増えゆく現地法人とも、根幹にあるコンセプトのすり合わせを続け、現在の資生堂は日本随一のコスメブランドに至る。
女性社員のライフタイムをサポート――女性からの人気の理由とは
資生堂は、女性社員に対するサポートが非常に手厚いことで有名だ。女性誌『日経WOMAN』と日本経済新聞社グループは日経ウーマノミクス・プロジェクトにおいて「企業の女性活用度調査」を実施。その結果から選出される「女性が活躍する会社BEST100」では、2014年から2016年にかけて3年連続総合ランキング1位を獲得。さらに、キャリタス就活2019が集計した
就職希望企業ランキング大学院・女性部門でも、前年に引き続き人気ランキング1位を獲得するなど、同社は「女性を大切にする企業」として広く認知されている。
CSRでは冒頭で女性への活躍支援を表明し、事実、技術職からビューティーコンサルタントにおいてまで、幅広く女性社員をサポートする制度を整えている。以下、その一例を紹介しよう。
女性リーダー育成塾“NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN”の開催
将来的な女性社長の誕生に向け、部門長などの上位管理職の女性比率向上を目指すことを目的とし、社長自らが塾長となり、女性リーダー育成塾“NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN”を開催しています。継続的な女性リーダー育成のため、2017年を第一期とし、第三期まで継続開催することを予定しており、社外の女性リーダー講演や、馬から学ぶワークショップ、個別コーチング等を組み合わせた、10ヵ月に渡る包括的なリーダーシップ開発プログラムです。本プログラムは、今よりも大きな責任や影響力のある仕事のイメージをもつこと、女性ならではの自分らしいリーダーシップスタイルを発見し自信を深めること、経営スキルをアップすることをゴールに、一般的なリーダーシップ開発だけでなく、女性ならではの課題や悩みに寄り添った内容となっています。
資生堂公式HPより
研究助成金を支給する女性研究者サイエンスグラント
「資生堂 女性研究者サイエンスグラント Shiseido Female Researcher Science Grant」は指導的研究者を目指す貴女を支援する研究助成です。自然科学分野の幅広い研究テーマ(理工科学系・生命科学系全般)を対象に、2007年度の設立以来、毎年10名の女性研究者へ研究助成を行ってきました。新規性・独創性があり、ご自身の研究分野を切り拓く意欲のある研究計画を歓迎します。
育児休暇のためのカンガルースタッフ採用
次の世代を担う子供たちが健やかに育つ社会でありたい、そして何より、女性のさまざまな一生を支えていきたい。そのためのひとつとして、仕事と育児の両立のサポートの重要性を、資生堂では考えています。そのため小学校3年生までの子供を持つ社員に「短時間勤務」という育児時間制度があります。カンガルースタッフは、そんな育児期のビューティーコンサルタントが育児に専念できるよう、店頭活動のお手伝いをしていただく美容スタッフです。 ※ビューティーコンサルタントとは、お客さまお一人おひとりの肌と心にあわせ、さらなる美しさをご提案する「美のコンサルタント」です。
このように、同社の女性社員向け制度の充実度がうかがえるだろう。さらに、社内の女性に対して手厚いサポートを行うだけでなく、CSR活動の一環としての女性支援にも余念がない。
バングラデシュ女性の活躍支援に向けた取り組み と銘打たれているプロジェクトは、東南アジア地域内でも依然として男女格差が根強く残るバングラデシュにおいて、その社会課題解決とビジネスの両立を目指す。現地の女性販売員と強力し、健康・美容知識や生活習慣の改善に関する啓発活動を行ったり、ハラル専用化粧品の展開をしたりなど、多面的な活動を行っている。
第一線を走る研究職――技術を掛け合わせ「価値」を開発
資生堂が力を入れているのは、to Cの華やかな化粧品事業や女性支援だけではない。化粧品のための研究技術を医化学製品へと転用し、法人向けに商品やサービスを提供するフロンティアサイエンス事業は30年の歴史を誇る。さらに、中学生・高校生以上を対象としたサイエンスカフェを開催した実績を持つなど、研究事業への注力度合いがうかがえるだろう。
化粧品は肌に直接触れるものであるからこそ、安全性の担保と品質の高さが何よりも重要である。同社製品の高いクオリティーに裏打ちされたブランド力は、多方面にわたる莫大な研究への投資の結果なのだ。
同社が理系就活生から人気を集める理由の一つに、活躍できる研究分野の幅の広さが挙げられる。
- 化粧品を作る「物質科学」
- スキンケアを向上させる「生命科学」
- 美しさという概念を探る「人間科学」
物質科学分野においては、原料や香料の開発から用具機器の開発、製剤化技術や計測技術の先鋭化など、まさに資生堂の事業の柱そのものに携わることが可能だ。生命科学分野では、基礎研究や医学を中心とした研究活動が求められ、人間科学では脳科学研究や行動科学研究など、心理学分野の素養を持つ人材が活躍する。
このように、同社には実に多種多様なサイエンスのバックグラウンドを持つ人材が集まる環境が整えられているのだ。
また、研究者のための定年退職後の再雇用制度も充実している。2014年度から「ELパートナー制度」 を導入し、希望者全員の再雇用が可能に。さらに、研究開発領域において専門性の高い開発技術や研究ノウハウを持つ定年退職者に対して高待遇での雇用を実現する「シニア・サイエンティスト制度」も設置し、ベテランの研究員の技術を資産とした強固な研究体制を完成させている。
ものづくりの会社としての古き良き伝統企業の在り方を体現しながら、資生堂は時代に合わせた美の概念と共に歩みを進めてきた。同社の「人」と「高い技術力」へのこだわりは徹底している。世界的に新卒の人材獲得競争の激化が予測される今後も、同社は多くの人々のあこがれの的であり続けるだろう。
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参考元
https://www.shiseidogroup.jp/company/past/history/index.html#timeline02
https://www.shiseidogroup.jp/rd/development/