「たばこと医薬」に挑戦するJT――伝統産業と新規事業の両輪を走らせる

インサイト

LabBase Media 編集部

「たばこと医薬」に挑戦するJT――伝統産業と新規事業の両輪を走らせる

長年日本のたばこ産業を牽引してきた日本たばこ産業株式会社(以下、JT)。たばこを嗜むかどうかに関わらず、CMや広告でその名前を誰もが一度は聞いたことがあるのではないだろうか。 「JT=たばこ企業」というイメージを抱く学生は多い。しかし一方で、JTは時代の流れに合わせて医療事業も展開し、新薬開発等の実績も残している。健康支援を通した社会貢献は、JTのシンボルの一つでもある。 JTの特徴は「技術志向の強さ」。特に医薬事業においては、ベンチャー企業への資金支援や技術提供への取り組みを通し、自社技術の進歩を目指す。 本記事ではJTの歴史をひもときながら、基盤となるたばこ事業に加え、今後成長が見込まれる医薬事業についてご紹介していく。


JTでは理系人材が企画・経営の場でもチャレンジできる


!uploadedImage


JTの主な事業は、「たばこ」「医薬」「加工食品」の3つであり、従業員数はおよそ58,000人(2017年12月現在)だ。


売上は2017年度で21,397億円。そのおよそ57.8%(12,376億)を占めるのが海外たばこ事業である。次点で国内たばこ事業が29.2%(6,268億)、加工食品事業が7.6%(1,631億)、医薬事業が4.8%(1,047億)と続く。


これはすべての企業に言えることだが、研究開発職だけでなく、事業企画やマーケティングなどの仕事においても、自社の研究や、その技術的な側面を理解した上での活動が求められる。


JTの場合には、たばこ事業でも医薬事業でも医学や薬学、生物学や化学の知識が大いに役立つ。そのため、経営企画やマーケティングなどの事務系職種においても、理系人材が重宝されるのだ。


また、これまでの研究・専門知識はもちろん、学問を通して養ってきた探究心や好奇心、他者を巻き込みながら議論を展開できる論理的思考やファシリテート能力などは、どの職種でも生きてくるはずだ。


理系の強みをもってさまざまな働き方を選択できるJTは、政府によって独占販売されていたたばこ産業の民営化のため、1985年に設立された。これと同時に海外企業がたばこの国内市場に入ってくるようになる。1987年には輸入紙巻きたばこの関税が無税となったことの影響もあり、JTの国内たばこシェアは、1985年度の97.6%から90.2%に低下した。


たばこ産業のみで事業を進めることにリスクを感じたJTは、1990年にかけて「医薬」「食品(のちの加工食品)」事業も開始。これらの事業は、たばこ事業とは収益性・投資期間といった事業特性が異なるため、JTの利益成長に貢献するものと判断されたのだ。現在では、これら2つの事業がJTグループの中長期的な成長を補完している。


ここからは、JTの収益を支えるたばこ事業と、今後成長が期待される医薬事業について説明する。


健康・環境を考慮したたばこ事業


!uploadedImage


JTのたばこ事業には大きく2つの事業が存在する。国内で紙巻たばこや電子タバコPloomTECHの販売に取り組む「国内たばこ事業」と、海外におけるたばこの販売に取り組む「海外たばこ事業」だ。これらの事業がJT全体のおよそ87%の売上を占める。


しかしJTは、ただたばこを販売しているだけではない。喫煙者の健康リスク低減のための科学的指標の研究や商品開発を進めているだけでなく、副流煙による健康被害を減らすべく、煙や匂いの少ないたばこの開発も並行して行っている。近年では環境問題を考慮して、燃焼しても空気中に影響を与えないたばこの開発にも着手している。


たばこを吸う人だけではなく、製品に接する可能性のある全ての人たちの健康や、環境にも考慮したテーマで研究・開発を進めるたばこ事業では、理学系の学生はもちろん、薬学や医療、工学などの広い分野から学生を募集している。


研究・開発のみにリソースを集中させた医薬事業


!uploadedImage


医薬事業の主な研究対象は、「糖・脂質代謝」「ウイルス」「免疫・炎症」とされており、1993年に設立された医薬総合研究所を中心に、医薬品の研究・開発を行っている。


1998年には、医薬品の製造・販売を行う鳥居薬品(株)をグループ会社に迎え入れ、製造・販売並びにプロモーションを鳥居薬品が担当し、研究開発はJTが主体的に進めるスタイルを確立した。


海外市場については、米国にある子会社アクロス・ファーマ社が臨床試験を担当し、製造・販売並びにプロモーションについては導出(医薬品を開発、販売するために必要な知的財産権の相手による使用を許可)した国で提携先を見つけている。


研究開発に特化するビジネスモデルに絞り、プロモーションや販売を外部に出したことで、JTは医薬品の研究に専念できる環境を手に入れたのだ。


2017年に発表されたJT医薬事業の概要によると、JTは2012年から2016年までの5年間で、毎年300億円前後の研究開発費を医薬事業にかけている。同事業の売上は、7年連続右肩上がりで成長中だ(2017年度現在)。


こうした背景には、鳥居薬品(株)と共同開発したリオナ錠などの医薬品の承認が順調に進み、国内売上が伸長したことや、海外製品のロイヤリティ収入の増加などが挙げられる。研究に特化した環境づくりが功を奏した形だ。


また2014年、JTはバイオやアグリ、環境・エネルギー、医薬・医療機器などを含む、さまざまな分野での地球や人類の課題解決を目指すベンチャーキャピタルファンド「リアルテックファンド」の出資者となった。


同ファンドにおいて、JTはヘルスケア分野等での共同開発・ノウハウ支援も行っており、自社の技術的なレベルアップや新たな知見の獲得を目指すと同時に発展途上の企業も援助している。その裏側にあるのは、自社の参入は難しい分野に取り組む企業の支援を通し、社会に貢献できればという思いだ。


グループ企業との連携やベンチャー支援といった方法で、高い技術や人材を貪欲に集めるJT。医薬事業の自社売上に占める割合は、今後成長が期待できそうだ。


理系生積極募集中の企業は こちらからチェック!
「興味あり」を押せばスカウト獲得可能性UP!


おわりに


JTは、たばこ事業を通して企業としての基盤を培い、医薬事業にも積極的に投資をすることで、社会への成果還元を目指す。事務系・研究系問わず、理系の素養が活かせる事業や職種がそろっているため、理系就活生はさまざまな形で活躍できるだろう。


自身の専攻や研究対象はもちろん、適性や職種への興味を加味したうえで、ぜひ広い視野で企業とその職種を分析してもらえたらと思う。


LabBaseプロフィールを充実させて、スカウト獲得可能性を高めよう!
スカウト獲得可能性をUPさせるコツは コチラでチェック!

ライター
スギモト アイ
X Facebook