EdTech(エドテック)で教育はどこまで個別最適化するか。注目企業3選+α

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LabBase Media 編集部

EdTech(エドテック)で教育はどこまで個別最適化するか。注目企業3選+α

大学入試改革、プログラミング必修化など、時代に合わせて日本の教育は今、大きく変わろうとしています。カリキュラムだけでなく、アクティブラーニング(能動的な学習)やアダプティブラーニング(適応学習)といった新たな学習スタイルも、義務教育課程から本格的にスタート。さらに、教育現場の課題に対するソリューションとしてのビッグデータ活用や、教員の働き方改革にも期待が高まります。 変化の激しい時代に対応すべくあらゆるシーンで多様性が重要視される中、教育もその例外ではありません。個々人への最適化が求められる教育現場で今、注目されるているのが教育×AI、教育×テクノロジーを意味する「EdTech(エドテック)」です。理系就活生にとって押さえておきたいEdTech市場で注目される企業、実際の教育現場での取り組みを概観しながら、EdTechに求められているものを読み解いていきましょう。

人とつながり、学びを包括的にサポートする「Classi」


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2014年にベネッセとソフトバンクが設立したClassi(クラッシー)は、ICTを活用した教材やサービスを学校・家庭の両方の教育シーンに向け開発するEdTech企業。同社が提供する学習支援クラウドサービス Classi は、プラットフォームへのログインを通じて生徒、教師、保護者の三者がつながる仕組みです。


Classiの魅力は「インタラクティブ性」。教室で電子黒板とのリンクが可能なノート機能を使うことで、授業中に入力した解答をスクリーン上でリアルタイムにシェアできるなど、双方向的かつ能動的な学びが可能になります。


クラウド上での演習テスト結果は、自主学習の内容に反映させることも可能です。Classiを通じてデータを蓄積することで、生徒個々人に最適化したアダプティブラーニングにも役立ちます。


また、教員同士が授業スタイルや教材などをオンラインで共有できることで、紙媒体の用意や会議にかかる時間を減らして仕事を効率化できるなど、教育者側にも改革をもたらすプラットフォームなのです。


Classiは現在、日本の小学校から大学まで80万人以上に利用され、新機能の追加も続々発表されています。子どもの教育だけでなく、生涯学習や就業トレーニングなど幅広い学びの場への利用拡大のポテンシャルも秘めたクラウドサービスとなりそうです。


Classiの募集要項は こちらから!
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テクノロジーで才能を開花させる「RISU算数」


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従来の学校教育は与えられた問題を解く能力に重点が置かれがちでした。しかし、AIが存在感を発揮しつつある時代を迎え、人が積極的に育むべきはクリエーティブに発想する能力であるという見方が強まりつつあります。


楽しみながら自発的な学びの姿勢が身につく注目の タブレット教材 RISU算数 は、「考える力」の涵養に一つのソリューションを提供しています。


生徒の学力レベルに合わせるだけでなく、苦手分野を最短で解消できるように最適化された出題や動画解説によるフォローと、マンパワーによるきめ細やかな保護者サポートの両立を実現するRISU算数。ハイレベルな教育機関にアクセスしにくい地方エリアの子どもや病児などにも教育機会を提供し、すべての子どもたちの「考える力」の底上げを図ります。


運営母体であるRISU Japanは、RISU算数の他にも、プログラミングや数学的思考が身につく教室を運営するなど、時代に即したサービスを展開中です。また、2018年10月時点でアメリカの公立小学校への導入も決定。北米への事業導入実績は20校を超え、グローバルに期待されているサービスであることがうかがえます。


参考: 日本教育ベンチャー初。アメリカの公立小学校のクラスへRISUを導入


アプリで教育格差を変えるリクルート


リクルートマーケティングパートナーズは、小学生から社会人までの幅広いターゲットユーザーに向けた学習アプリを開発しています。


2012年に同社が開始したオンライン予備校サービス 「スタディサプリ」は、4万件の講義を用意し、安価な月額制を採用することで、 格差社会における地域や所得による教育格差をなくすことを目的としています。


教科書の基礎的な内容が授業時間外でも学べるようになれば、授業の多くをディスカッションやプレゼンテーションなど、能動的な学びの時間に充てられるようになります。スタディサプリに代表される非対面型の教育の普及は、これまでの教室の風景を一変させるかもしれません。


また、海外展開に注力している点も要チェック。フィリピンでは2016年から大規模な教育改革が始まり、それに伴いスタディサプリのフィリピン版「Quipper Video」が現地の高校に導入されました。プロ講師により、高校1〜2年生相当のフィリピン語、数学、理科、英語の動画が低価格で提供されています。一国の教育そのものに関わるというインパクトの大きさは、リクルートならではといえるでしょう。


リクルートはこの他にも、教員向けの校務管理サービス、社会人の英語学習者や資格取得を目指す人向けのサービスなどもリリース。ICTを活用した教育へのアプローチをさらに広げています。


EdTechを導入する日本の教育現場


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外国語教育にAIロボットを導入-埼玉県戸田市


英語の授業で、ロボットと会話をしながら学び親しむ……そんな光景が現実のものとなっています。埼玉県戸田市の教育委員会は2017年から、 ソフトバンクC&Sのサポートの下、米AKA社製の英語学習AIロボット・Musio(ミュージオ)を小中学校の外国語の授業に導入。コミュニケーションした内容を記憶・学習する機能を持ったMusioは、リアルな英会話ができるほか、英語ネイティブのような発音のチェックなども可能です。


また、ロボットが会話相手になり心理的抵抗が薄れることで、スピーキング練習の活発化も期待できます。人手不足が嘆かれる学校教育の現場へのAIロボットの導入は、今後加速していく見込みです。


教育にもビッグデータ活用-岐阜県岐阜市


限られたリソースの中で効率的に良質な教育を提供し続けるために、ビッグデータを活用する試みも進んでいます。 ベネッセは岐阜県岐阜市の協力の下、家庭でのタブレット端末を使ったデジタル教材の利用データを蓄積し、学校教員の教育指導方法の改善などに生かす計画を2016年に開始しました。


学習時間の可視化により教師からフィードバックを得やすくなった子どもたちは、学習意欲や自己肯定感がアップするなど、既に ポジティブな結果が出ていることも明らかになり、今後は教育の幅広いシーンでビッグデータの利用が進みそうです。


おわりに


限られた予算や地理的アクセス、人材不足といった課題を抱える教育現場において、EdTechツールやサービスの導入は、確実に変革をもたらしています。少子化に伴い、さらに個別最適化のニーズの高まりが予想される日本だけでなく、教育熱の高まるアジア諸国のマーケットでもEdTechはますます重要なポジションを獲得し、既存のシステムにとらわれないクリエーティブな人材が今後も求められていくはずです。

ライター
水田 真梨
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