審査会が開催されました――AI株価予測コンペ『Fintech Data Championship』

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LabBase Media 編集部

審査会が開催されました――AI株価予測コンペ『Fintech Data Championship』

研究者や理系学生の支援サービスを提供する株式会社POL(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:加茂倫明 以下、POL)が主催する、学生を対象としたAI株価予測コンペティション『Fintech Data Championship』の審査会が、3月4日に日本経済新聞社東京本社にて開催されました。

1月16日に行われたオリエンテーションには全国からおよそ100名のAI専攻の学生が参加。最終的にエントリーしたのはチーム24組(56名)、個人29名の合計53チーム。参加者学年は学部1年から博士コース1年まで幅広く、大学も全国規模で集まりました。その中から最終論文を提出し、審査対象として残ったのは18チームでした。


課題は、機械学習・AIを活用して日本株式のポートフォリオ(上限1000万円、5銘柄以上10銘柄未満)を組むシステムを構築(システム構築期間16日間)し、構築したシステムをもとに、株ポートフォリオによるシミュレーション運用を行う(運用期間1ヶ月)というもの。


審査基準は、シミュレーション運用でどの程度の収益を生んだかの定量評価に加え、思考プロセスやソースコードの書き方、アイデアの独創性などの定性評価が加味されます。


ポートフォリオ選別のために用いられたモデルとしては、LSTM 、VAE(変分オートエンコーダー)、CDR、GNN(グラフデータの畳み込みネットワーク)、VARモデル(多変量自己回帰モデル)など。中には、Alife(人工生命)理論の観点で整理するものなどもあり、理系学生ならではの斬新な視点が審査員の興味をひいていました。


運用期間が1ヶ月と短期間ながら、中には200万円以上の利益を出したチームも。銘柄選定や株価予測など、自分たちの専門分野の知識を金融業界に生かそうとするチャレンジングな姿勢が高く評価されました。


【審査員】順不同


  • 東京大学大学院工学系研究科 特任准教授 松尾豊氏(審査委員長)
  • 京都大学経営管理大学院 特定教授 加藤康之氏
  • アセットマネジメントOne フィナンシャル・イノベーション部 ファンドマネジャー 劔義隆氏
  • ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長 吉野貴晶氏
  • 三菱UFJ信託銀行 資産運用部 岩田雄一郎氏
  • 株式会社MILIZE 代表取締役 田中徹氏(共催)
  • 株式会社POL代表取締役CEO 加茂倫明(主催)

「チャートの画像分析をしているチームが複数ある。このアプローチは今後重要になってくる考え方。よくできているレポートも多いがやはり損益の結果も重視したい。(松尾氏)」

「AIの機能を十分に活用しているかを重視したい。その上で上位に選んだのはアイデアが斬新で面白かったもの。(加藤氏)」

「実務担当の立場から見ると、パフォーマンスを上げることが最優先。その目的に向かっていかに正確に作り込んだかが評価されるポイント。(劔氏)」

「自分の専門分野でしっかり勝負してくるところが面白い。他の分野の考え方を株価予測に適用しようとするアイデアは多いが、実際にはなかなか難しい。そのことを前提に愚直にモデル化に取り組む姿勢はとても重要(吉野氏)」

「まず4000銘柄から5〜10銘柄に絞り込むのは難易度が高かったはず。そこに自分たちのアイデアを全部盛り込んできたことを評価したい。今回のテーマである機械学習、Fintechをどれだけ活用したかも重要な評価ポイント。(岩田氏)」

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中央:東京大学大学院工学系研究科 特任准教授 松尾豊氏、右:株式会社POL 代表取締役CEO 加茂倫明、
左:株式会社POL Fintech Data Championship開催責任者 宮﨑航一


審査会では、運用実績に加え、事務局による「アイデア」「高度な手法」「論理性」「論文の質」「コードの質」の5つの観点での評価をもとに、その上位企画について審査が進められるところ、審査員の中には別のチームを評価する場面もあり、参加者の多様なアイデアに審査にも熱が入りました。金融業界における機械学習・AIの活用について、ますます可能性を感じることとなりました。


『Fintech Data Championship』審査結果の発表および表彰イベントは、3月28日、日本経済新聞社東京本社にて開催いたします。審査委員長の松尾豊氏から講評が行われる他、優勝者には賞金50万円が贈呈されます。


『Fintech Data Championship』概要


『Fintech Data Championship』とは、実際に企業が提示するデータを元に機械学習を用いてデータ分析や推定を行い課題を解く、学生対象のコンペティションです。金融分野が技術をますます重視する方向にシフトしている昨今において、日本全体で技術的な競争力を強めることを目指して開催されました。

ライター
ふるた ゆうこ
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