1.はじめに
医薬品研究職7年目のゆーたろー ( @Utaro_Cambridge ) と申します。
研究職での海外出向は博士号持ちの研究員であるのが一般的ですが、博士号なし・TOEIC700程度の英語力から海外赴任の機会を掴み取り、イギリスにて1年半の海外駐在を経験しました。
海外出向・英語学習・研究などを主テーマに発信していたところ、光栄にも株式会社POL LabBase編集部から寄稿依頼をいただき、理系学生の皆様に「英語」を切り口に執筆する運びとなりました。正直なところ、自分の戦略に再現性があるか分かりませんが、自分の経験が少しでも誰かの参考になればとの思いで筆を執った次第です。
当記事では「なぜ英語を学ぶ必要があるのか」をお伝えすると同時に、実際に僕が取った戦略、海外での苦労話や海外生活による影響、僕がおススメする英語勉強法について纏めております。決してこれが唯一絶対の解などではありませんが、読者の方が少しでも英語を味方につけて今後のキャリアを構築する一助になれば幸いです。
2. 僕が英語を勉強する理由

なぜ僕が英語を勉強するか。
それは「専門性」のみでは差別化できないと判断したからです。
例えば就職活動のグループ面接。あなたは修士卒の研究職志望で、隣にいる博士卒の研究職志望よりも自分が優れていると証明しなければ最終面接に進めないとしましょう。
あなたはどうやってそれを証明しますか?研究内容?ディスカッションの仕方?
もちろんこれらは重要な要素です。しかし面接官はそこまで知識が有る訳ではありません。
完全にマッチする内容でない限り、僅かな面接時間からあなたの研究内容・苦労・創意工夫を理解してあなたの優秀さを判断するのは難しいです。そのため客観的な実績が重要となります。
学術論文、学会での受賞、特許出願などがそれにあたりますが、修士卒で博士卒と同数の実績を持つ人はそれほど多くないでしょう。
(実際には修士卒と博士卒の採用人数を事前にある程度決めていると考えられので、直接の勝負にはならないと思いますが…)。
理系就活生に分かりやすく就職活動を例に出しましたが、これが入社後に置き換えるとどうでしょう。
海外赴任のチャンスがやってきて、修士卒のあなたは博士卒の同期とその枠を取り合うことになりました。もちろん1番大切なのはこれまでの実績です。
でもそこで明確な差がつかなければ?あなたの上司はその選定理由を述べる必要があります。そうなると、客観的に優秀だと考えられる博士卒の同期が優先されるのは仕方がないのです。
だからこそ修士卒の研究者がチャンスを掴むためには、専門性以外で自分を差別化する必要があると考えます。これが、僕が英語を勉強すると決めた理由です。
3.海外赴任の機会を獲得するまでに僕がやったこと。

海外赴任のチャンスを掴みました!と書いていますが、実際のところ、その大半は運の要素だったので僕のやったことの再現性は高くないです。が、ただただラッキーだった訳ではなく、チャンスが来たらすぐに掴めるように (自分のもとにチャンスが来るように)努力しました。
就職活動から海外赴任が決まることにやったことを纏めます。
◼︎ 就職活動
この時点で海外出向までを見越していた訳ではありませんが、「鶏口牛後」を軸に就職活動した結果が海外赴任に繋がりました。会社員はその会社の歯車に過ぎませんが、絶対に替えのきかない歯車になってやると心に決めていました。
そのため、「自分の専門性と完全にマッチして即戦力になれる」「ライバルである博士号取得者の比率低め」「企業規模も業界的には少し小さめ」を理由に今の会社に決めました。
◼︎ 入社1年目~2年目
専門的な知識では先輩たちにも引けを取らない(アカデミアよりの内容では自分の方が詳しい)、機器も大半が研究室の頃と同じ、という環境だったので即戦力として仕事を始めることが出来たと思います。
そして、就業後にはオンライン英会話を始めました。幸運なことに、この部署の先輩方の多くが英語に苦手意識を持っていたため、オンライン英会話を始めただけで「英語出来るキャラ」を確立することが出来ました (ちなみに毎日受講していた訳でもなければ、意識高く受講していた訳でもありません)。
◼︎ 入社3年目
この部署から海外学会への参加は僕の入社以降1度もなかったのですが、この年に学会参加の機会が到来。社内全体を見渡すと海外出張は社歴を積んだ社員が行くのが通例で、入社3年目で行くことは皆無だったとのこと。
しかし「英語出来るキャラ」と普段からガツガツするタイプだったため、上司に「コイツなら何とかなるかも」と思わせる事に成功。「海外出張に行った」という経歴を残しました。
◼︎ 入社4年目
社内の手上げ制の英語研修の機会があり参加希望を表明。募集定員超過のため試験での選抜でしたが無事に合格。「英語研修受講」という経歴を残しました。
◼︎ 入社5年目
これは本当に偶然ですが、同じ部署の別プロジェクトで海外赴任の機会が到来。
別プロジェクトで仕事をしていましたが、これまでに培った「英語が出来るキャラ」、「海外出張経験」、「英語研修受講」という客観的な選定理由が集まったおかげで、博士号なし・TOEIC700点程度にも関わらず海外赴任のチャンスを掴むことに成功しました。
この海外赴任経験が今後のキャリアにどのような影響を与えるのか現時点ではわかりませんが、後述の通り自分の価値観をガラッと変える素晴らしい経験となりました。
4.海外生活での苦労話

渡英前、英会話学校のネイティブ先生とも問題なく会話出来ていたため、自分の英語力に自信を持っていました。が、この自信は渡英初日に一気に崩れさりました。「聞き取れない」&「伝わらない」で全く意思疎通が出来ずでした。
出向先の方は、僕と話す時には意識的にゆっくり話すので受け答えは出来ましたが、ネイティブ同士の会話は全く聞き取れない(TOEICとは全く比べ物にならない)。
そして最も辛いのがこちらの発音が通じなかったことでした。テニスが趣味でテニスクラブを探していたのですが、誰に聞いてもtennis clubなんて知らないと言われました。
後に友人から聞いた話では、僕の発音ではtennis “crab” に聞こえていたようです (つまり「テニスをするカニ」だったようで、そりゃ誰も知らないですよね…笑)。
発音に関しては僕もまだまだなのですが、「音節」・「アクセント」・「子音と母音の出し方」・「イントネーション」・「リズム」の5点を意識するようになってからは比較的通じるようになりました。
5.海外生活が自分に与えた影響

1年半イギリスで研究をして、「海外でも研究が出来る」という自信が得たことが1番大きな収穫だと思います。直接的にこの経験が今後のキャリアにどう影響するのかは分かりませんが、この自信は今後のキャリアを歩む上で自分の支えになると思います。
研究以外でもこの海外出向で学んだことは多く、日本の素晴らしさを再認識できたこと、多様性への感受性が高まったことは特に人間として成長できた部分だと思っています。詳しくはこちらのnoteに纏めていますのでもしご興味があれば。
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6.おすすめの英語学習法

ここからは僕の英語学習法をお伝えします。合う/合わないはあると思いますが、少しでも参考になれば幸いです。
英語で重要なのは言うまでもなくReading, Listening, Writing, Speaking で、僕はこれにVocabularyを加えた5つの項目をバランスよく伸ばすことを意識しています。Vocabularyを伸ばす方法としてこの記事を参考にしています。
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英語中級者に絶対やって欲しい、ネイティブレベルに近づく英会話上達法
僕が英語学習に利用しているのは、1.オンライン英会話、2.TEDトーク、3.海外ドラマの3つです (鍛えられる度合いを◎、○、△、×の4段階で評価。R:Reading, L:Listening, W:Writing, S:Speaking, V:Vocabulary)。
1.オンライン英会話 (R:○、L:○、W:○、S:◎、V:△)
英語学習においてアウトプットの機会が重要なのは言うまでもなく、オンライン英会話は最適です。オンライン英会話のおすすめの利用方法は2つあります。
1つは「記事を読んでその内容についてディスカッションする」です。記事は何でも良いですが、DMM英会話のDaily Newsは丁度良いです。難易度別に10段階に分類されていること、テーマ別に分類されていること、文章が長すぎないことがおススメの理由です。
授業の受け方としては、記事の朗読→発音の修正→内容に関するディスカッションが有意義な25分間だと思います (もちろん必要に応じて単語等の予習復習も効果的です)。
もう1つは、自分で書いた英作文 (僕の場合は日記)の添削およびその内容に関するディスカッションです。この方法でWritingを強化します。
フレーズが出てこない、思った通りに相手に伝わらないことが多々あるので、先生に添削してもらうのは非常に有益です (添削はネイティブ講師、フレーズが出てこない時は日本人講師がおススメです)。
ちなみにオンライン英会話はDMM英会話とBizmatesがおすすめです。
2.TEDトーク(R:△、L:◎、W:×、S:○、V:○)

移動時間での英語学習としてはTEDトークが最高の学習ツールだと思います。テーマが幅広く自分の興味があるものを選べます。また、皆さんプレゼンが上手なので聞いていて面白いです。
どんなテーマを選べば良いか悩む人は、とりあえずツイッターで「#TEDログ」もしくは「#TED学習」のタグで面白そうなテーマとその簡単な要約を見つけられます。
TEDトークをおススメする理由が2つあります。
1つはアプリを携帯に入れておけばダウンロードできるのでオフライン環境で視聴することが出来ます。もう1つは、TEDアプリはバックグラウンド再生出来るので、スマホで他の作業をしながらでも聞くことが出来ます。「ながらリスニング」でも、同じトークを何度も聞けば英語に耳が慣れます。
おすすめなのでぜひお試しを。
3.海外ドラマ(R:×、L:◎、W:×、S:△、V:○)
単純にドラマは面白いですよね。ネイティブスピードのリスニングや言い回しに慣れるのに最適です。僕は半分勉強、半分楽しみで海外ドラマは欠かさず毎日見ています(今はGossip Girlを見ています)。
おすすめの学習法は「日英同時字幕」の利用です。日本語字幕だと意味が分かっても英語を聞き取れない、英語字幕だと逆に英語が分かっても意味が分からない。そんな時には日英同時字幕を使ってみて下さい。僕の知る限りではHuluとNetflixにはこの機能があります (初期設定には無いので要検索)。
海外ドラマの注意点としては、わからない表現全てを覚えようとしないこと。スラングかもしれないし、ビジネス英語という観点では覚える必要がない場合も。全部の表現を調べるのに莫大な時間がかかって3日坊主になるぐらいなら、簡単な目標を決めて継続するほうが効果的です。
7.おわりに

ここまで英語学習の重要性を伝えてきました。僕が海外赴任するチャンスを掴めたのも英語のおかげです。転職エージェントとも定期的に連絡を取っていますが、多くの案件で「英語力」を問われます。どれだけGoogle翻訳の精度が高まろうとも、我々世代が仕事をする上ではコミュニケーションとしての英語は必須スキルと感じています。
しかし一方であくまで英語はツールです。 あなたの専門性を拡張させるにすぎません。「専門性×英語」と言われるように、専門性がゼロではどれだけ英語が出来てもゼロのままです。実は「英語が話せない」よりも「英語で話すコトが無い」の方が致命的です。「英語で話すコト」とは、つまりあなたの専門性です。まずは自分の専門性をしっかりと高める。それと同時に細々と英語も頑張る (絶対に短期では伸びないのでコツコツが大切です)。
最後になりましたが、今回このような素晴らしい機会をくださったLabBase編集部の皆様に再度御礼申し上げたいと思います。これからも専門性と英語を磨き続けますので何卒よろしくお願い致します。
何かご質問ありましたらConfidential情報以外はお答え致しますのでいつでもお待ちしております。
Writer:ゆーたろー
医薬品研究職7年目。博士号無しTOEIC700程度の英語力から、運と努力の積み重ねで海外赴任の機会を掴み取りました。イギリスで1年半の海外駐在 (2017.10〜2019.3)。
帰国後はリーダーとして部門横断プロジェクトをマネジメントしてます。TOEIC985 (L495/R490, 2019.4)。twitter: @Utaro_Cambridge
note : 20時間でTOEICスコア100上げるために意識した7つのコト