技術職だが、意見や議論することも業務の一つ

――まずは現在の業務内容についてお聞かせください。いまはTBSテレビからTVerへ出向されていますが、そこではどのような業務をされているのでしょうか?
「TVer」は、民放テレビ局が連携した配信サイトを運用をしている会社です。その技術開発や、スポーツのライブ配信にまつわる作業が主な業務です。
僕はもともと2015年にTBSテレビへ入社して、数年後に出向しました。現在も所属はTBSテレビです。
――TBSテレビ入社当初はどのようなお仕事をされていたのですか?
入社後の半年間は研修期間です。まず入社1カ月目は新入社員研修があって、次の2カ月はテレビ番組がどのように作られているのかを見せてもらいました。残りの3カ月は一般職と技術職で分かれて、僕は技術職としてカメラや音声、回線など技術の部署を回りながら勉強していましたね。
研修後は中継時に送られてきた映像や信号を最初に受け取る回線部に配属され、その後、拡張領域事業部に異動しました。この部署は主にTBSテレビのホームページを作ったり、番組とインターネットで連動した取り組みをするところです。
――具体的にはどのようなことをされたのでしょうか?
2017年の世界陸上のときに、ウェブサイトで見ることができる「世陸bot」を作りました。これは例えば「ボルト 100m」と入力すると記録タイムが返ってくるというように、選手の情報や競技の結果をbotが教えてくれる企画です。
他にも、年末年始の「ニューイヤー駅伝」を会社で初めてウェブサイトとテレビで同時配信したときには、そのリーダーのような役割を担当させてもらいました。そこから配信にまつわる業務にシフトしていきましたね。
――もともとインターネットと連動した仕事をしていたことが、現在のTVerにつながっていったのですね。出向された時期や、具体的な業務を教えてください。
本格的に出向したのは2018年の7月からです。TVerはテレビ局5局で運営しているので、他局の方々と打ち合わせをしたり、技術的に解消できる課題があれば開発を担当したりしています。またTVerをより良いサービスにするためにはどうしたらいいか、という話し合いもよくしていますね。技術職ですが、会議などで誰かの意見を聞く機会が多いです。
――技術職ではあるけれど、ご自身が手を動かすよりも、「どういうことをやるのか」という指示をすることが多いのですね。
そうですね。どちらかというと、僕らは仕様を確定してやることを定義する側で、実際の開発は外部に委託している部分も多いです。
ただ、僕らは人が少ないからそうせざるを得ない部分もあって。最近はなるべく内製化できるように、僕らが手を動かすことも増えてきています。
――となると、技術職の人材がもっと欲しいということですね。
はい、どんどん内製化していきたいと思っているので技術の人は欲しいです。しかし先ほども話したように、ただ手を動かしているだけではダメなんです。こうしたらもっとサービスが良くなるとか、こういう機能があったほうがいいといった視点で考えられる人が理想ですね。
生活に密着したサービスを作れることがやりがい

――今のTVerの仕事で、藤居さんはどんな点に面白みややりがいを感じますか?
やはりインパクトが大きいことですね。先ほど話した世界陸上やニューイヤー駅伝は単発で終わってしまいますが、TVerは広く使われているので、生活に密着していると感じられます。 自分の開発したサービスが一般の人に使われているのは、やりがいを感じます。
――逆にこれまで働いてきた中で、大変なことや、失敗したことはありますか?
最初は「技術職として入社したのだから、技術を高めていけばいい」とばかり思っていたんです。しかし最初に配属された回線部は人とのコミュニケーションが重要な部署で、そのギャップには苦労しました。
基本的には適切なオペレーションが行われているか黙々と管理する部署だったのですが、大きな中継イベントでは中継側の人と積極的にコミュニケーションを取らないといけなくて。人と人が話し合って良いものができていくので、技術職でも人と連携することが必要なんだと気づきました。
技術職でも番組作りに深く携われるという喜び

――藤居さんはもともとテレビ局に入りたいと思っていたのですか?
もともとはIT企業やメーカーをなんとなく目指していました。僕は工学部だったのですが、研究室にいた頃から、「研究は楽しいけど、これって世の中に必要なのか?」という葛藤がずっとあったんです。だから就活では「ビジネスを成功させるために技術が必要なんだ」というような、分かりやすくてインパクトがある仕事がしたいと思っていました。
そんなとき、研究室の同期がテレビ局に行くと聞いて。自分も調べていく中で、テレビ業界は一般の方に感動を直接届けられる仕事だと気づきました。
テレビはもともと好きだったし、その業界を技術で改善できるならと思ったのが選んだきっかけですね。
――TBSテレビに入社する前後でギャップはありましたか?
入社するまでは、テレビの技術職はカメラマンや音声の仕事しか思い浮かびませんでした。でも、実際には技術職と一言で言ってもさまざまなんですよね。
技術職には、番組に対する思い入れがなく淡々と仕事をこなすイメージもありました。でも、先ほど話した回線部や世界陸上に関わっていたときにも、周囲にいたのは番組をどう見てもらうかにすごくこだわる人たちばかり。技術職でもこんなに番組作りに深く携われている、というのは驚きでしたね。
それを強く感じたのは、「音楽の日」という番組に関わったときです。歌い終わった方々を写真で撮ってTwitterにアップする仕事があったのですが、そこでは演者の方と話す機会がありました。技術職だけど、演者の方と触れ合うことがあるんだ! と感動したことを覚えています。
TBSテレビは人との付き合いを大事にする「人情味あふれる会社」
――TBSテレビはどんな雰囲気の会社ですか?
「人情味あふれる会社」だな、と思います(笑)。人と人との付き合いを重視している気がしますね。プレゼントキャストには電通さんや博報堂さんから出向している方もいるのですが、「やっぱりTBSテレビは人の付き合いがすごく良かった」と言ってくれて、うれしくなります。
僕も入社前の面接時に、人事担当の方に名前を覚えてもらっていました。こんなこと、他の会社ではなかなかないですよね。
――「テレビ局は激務」というイメージが少なからずありますが、実際の勤務形態はいかがですか?
最近はテレビ業界も働き方改革の影響を受けて、変わってきていると思います。上長も「基本的には早く帰ろう」と言っていますし、実際に上長自身も早く帰ります。
技術職でも週休2日ですし、リモートワークも可能です。また今の自分の職場はフレックスタイム制なので、出社時間も自分の裁量で調整できます。もちろん忙しい時期もありますが、そうでない時期はリフレッシュしたり勉強したりすることもできると思います。
技術を使って実現したいことに挑戦できるのがTBSテレビ

――「これからこんな仕事をしてみたいな」と思うことはありますか?
僕が入社したときからテレビ業界は下降気味だと言われていたのですが、コンテンツに関してはまだ可能性があると思っているんです。面白いものはきちんと評価されていると感じるので、「テレビ放送を見る」以外にテレビのためのアプローチがないか、模索したいと思っています。
その結果の一つが配信で、TVerなのだと思います。今後は24時間ずっと同時配信という方向も考えられるので、その実現に向けた研究開発には非常に興味がありますね。
――23年卒の理系学生の方に向けてアドバイスはありますか?
今目の前にあることに本気で取り組む、ということですね。僕は入社するまでで一番頑張ったことを聞かれたら「研究です」と言えます。すごく辛かったですが、苦労した経験を含めてやってよかったと思っています。なので、「今までで一番頑張ったことは何ですか?」と聞かれた時に、答えられるものを持っておいたほうがいいと思いますね。
あとは就活をする際に何を軸にするか、も考えておくといいと思います。勤務地とか給料とか、何でも構わないのですが、自分は何に興味があるのか、何を大事に今後の人生を歩んでいきたいのかを考えておくといいです。
――最後に、TBSテレビの技術職の魅力を教えていただけますか?
TBSテレビはやりたいと思ったことをやらせてもらえる会社です。技術が好きで、こういうことを実現したいという思いがあれば、僕が3年目ながらニューイヤー駅伝の同時配信でリーダーを務めたように、若手でも仕事を任せてもらえます。難しいことはありますが、それを積極的にカバーしてくれる仲間がいっぱいいる会社なので、興味がある人はぜひ挑戦してみてください。
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編集後記
テレビ業界の技術職と聞いて、黙々と作業に取り組むイメージは確かに強いだろう。しかし藤居氏の話を聞くと、コミュニケーションを求められたり、番組にも深く関わったりなど、イメージが変わった人も多いのではないだろうか。
衰退していると言われることもあるテレビ業界だが、業界の内部ではさらなる発展のために多くの人が次の切り口を考えている。その具体的な例がTVerなのだと感じた。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2023年5月公開)