入社の決め手は、アットホームかつ真摯な社風

――お二人の専門分野や入社の経緯を教えてください。
谷岡:大学院を出て機械部品メーカーに約7年勤めたあと、Uターンで約10年前にディスコに入社しました。ものづくりに欠かせない精密加工技術の最先端を切り拓くディスコの事業や取り組みの面白さに気づけたのは、技術者としての経験があったからこそだと思います。
寺本:学部と大学院を合わせて6年間、化学系の研究室でシリコン量子ドットという発光物質を研究していました。地元広島で就職先を探す中、技術力の高さとユニークな文化に興味を持ち、ディスコのインターンシップに参加しました。
バックグラウンドに縛られずに領域を広げていきたいという想いがあったので、化学だけでなく機械やソフトウェアなど、自分次第で幅広く挑戦できる環境にまず魅力を感じました。入社の決め手は、正しいことを真摯に追求する姿勢、活発なコミュニケーション、想像以上にアットホームな雰囲気など、社風にポジティブな印象を受けたことです。
――製造技術部にはどういった経緯で配属されたのでしょうか。
谷岡:前職で航空機向け部品の生産技術や品質保証に関わっており、当初は品質保証の求人に応募したのですが、生産技術での設計開発経験を買われ製造技術部での採用となりました。選考段階から個人の能力や適性を見て柔軟に対応する会社なんだと感じましたね。
寺本:新卒の場合、自分で「こういう仕事をさせてほしい」とさまざまな部署に掛け合って受け入れてもらう、または提示された仕事にオークション方式で挙手するなど、希望配属先を決めるまでのプロセスも自由度の高い仕組みになっています。
私はインターンでお世話になった製造技術部に行きたいと決めていましたが、研修期間中はさまざまなものづくりを体験しようと、できるだけ多くの現場を回れるように調整しました。先端技術を担う当社ですが、精密加工ツールの製造現場ではオーダーメイドゆえに手作業も多く、それらの効率化や品質の安定化を支える製造技術部の重要な役割を再認識しました。
「利益の源泉」を生み出す製造技術部

――製造技術部の具体的な役割をお聞かせください。
谷岡:当社は「切る」「削る」「磨く」という三つの領域に特化し、精密加工装置や精密加工ツールを製造していて、求められる技術には「製品に関わる技術」と「製造に関わる技術」があります。製品としての付加価値はもちろん重要ですが、素晴らしい製品も効率よく安定した品質で製造できる方法を確立しなければ利益は残りません。従って製造技術部は、製造に必要な設備やツールを内製することにより利益の源泉を確保しているとも言えます。また自社内製の製造技術開発は、ディスコにしかできない独自性に直結する重要なテーマでもあります。
社外から購入していた部品を内製する装置を開発し、数億円単位のコストダウンに繋がることもありますが、作業自体を見直す、違う部品や機構に変更するなど、生産性の改善策は装置をつくる方法以外にもさまざまあります。そのため、装置ありきでなく費用対効果を考えながら多角的な視野をもつよう心がけています。当部署では製造現場がある意味でお客様なので、感謝や賞賛など直接フィードバックを受ける機会も多々あります。
――生産性の改善はどのようなプロセスで進むのでしょうか。
谷岡:例えば、当社製品の精密加工装置で多用するアルミフレームの加工を以前はサプライヤに依頼しており、納期・コストともに非効率な状態でした。そこでアルミフレームを加工する工程や設備をゼロから社内で立ち上げようという話になり、検討をはじめました。穴の開け方や切断方法から考え、それらを自動化する機械装置を設計し、試作・調整を何度も繰り返して、結果的に圧倒的な納期短縮やコストダウンに繋げることができました。
成功することもあればなかなか上手くいかないこともありますが、一歩踏み出してやってみることを推奨する風土で、あまりためらわず進むことができるように思います。内製に関する技術は毎回テーマが異なるので、都度一から勉強です。ただ、やってみないと分からないことは必ず出てくるので、自分の領域に固執しすぎず、柔軟に捉えて今できることを担う、分からないことはみんなで考えて議論するなど日々試行錯誤の連続です。
――プロジェクトマネージャが進行するのでなく、メンバーの自律性を軸にチームワークが機能しているのですね。
谷岡:新しいテーマに取り組む際、個々の主体性と有機的な連携は欠かせません。私のチームは「綿密に計画をたてるより、たたき台をとにかく速く形にする」というコンセプトで、 走り出してから考えることを実践しています。前職では一つのプロジェクトに2~3年かけ、最初の半年は調査と企画書作成に終始していたのに対し、ディスコではとにかく良さそうなことはどんどんやってみようというスタンスが主流で、入社当時は非常に驚きました。
アイデアを出し、実践し、上手くいかなければ別のアイデアを試す。その試行錯誤をチーム全員で繰り広げます。もちろんやみくもに試すのではなくある程度の目星はつけますが、経験的にもやりながら小さな修正を重ねていく方が良い結果に繋がりやすいと感じています。
――そんな中、若手の寺本さんはどのように経験を積んでいますか?
寺本:製造技術部は動きのある機械装置を設計することが多く、メカ、エレキ、ソフトのプロが多数いますが、化学専攻の私はそれらの知識がゼロの状態でした。何もないところからのスタートなので、目の前のことを全力でやるしかないと思い、予習、実践、復習を繰り返してとにかく必死に食らいついていきます。先輩の仕事を見ながら「こんな複雑なものを設計、制御できたら楽しいだろうな」と、将来の自分を想像しながらやる気スイッチを入れています。しっかり自分で調べ、それでも分からない点は人に聞く。大学の勉強や研究と基本は同じなので、学生時代に一生懸命やってきたことは仕事でも生きていると思います。
内製で磨いた知見が会社を強くする

――仕事の中で、何がモチベーションになっていますか?
寺本:入社してからプログラミングを頑張って勉強しているので、自分なりに考えてコーディングしたソフトで装置が動いた時は本当にうれしいです。また、よく先輩の開発した装置製作や制御プログラミングを手伝わせてもらうのですが、その際にレベルの高い技術の一端に触れられることが日々の刺激になっています。
谷岡:普通は何年も仕事を続けていると繰り返しに陥ることもあると思うのですが、ディスコの場合、お客様がつくる半導体、自社製品、製造現場のいずれも進化し続けているため、日々新しいことずくめでチャレンジする機会には事欠きません。入社して10年、今でも技術者として初めて取り組む課題は多く、飽きることなくフレッシュな感覚で日々過ごしています。
――仕事に取り組む姿勢として、大事にしていることは何でしょうか。
寺本:入社当初、私は製造技術部にいながらメカ、エレキ、ソフトなどの知識を持っていないことを弱みと感じていましたが、今は化学を学んできたことが一つの強みだと自覚しています。どのような機械装置でもその動きには目的があり、動作しているポイントで起こっている物理現象や化学反応をしっかり理解する必要があります。ただやみくもに装置を動かしたい訳ではないので、物理化学の知識があることであるべき姿や目的をしっかり捉えて装置開発に繋げられると考えています。自分の強みとして伸ばしていきたいところ、新たに身につけていきたいこと、その両者をしっかり意識しつつ、さまざまなことに興味をもち経験値の幅を拡げていきたいと考えています。
谷岡:シンプルですがやはりチャレンジすることは重要ですね。「餅は餅屋だからサプライヤに頼もう」と思うようなことも、ディスコでは「どうすれば自分たちの手で実現できるか」と考えることが驚くほど習慣化しています。自ら手がけることで、その先の進化に繋げられるということが身にしみて分かっているのだと思います。外部に委託して開発した装置は、その委託先にお願いしないと改造も改善もできません。だからこそ進化させていきたい重要なテーマは難しくても内製し、自分達の経験値を高めていきたいと考えています。当然失敗することもありますが、その経験値は将来の自分たちの強さに繋がっていくので、チャレンジすることは技術者にとって投資とイコールの関係です。
ものづくりを裏から支える技術者のプライド

――ディスコに入社する人に期待することは何でしょうか。
谷岡:物事は考え方ひとつで面白くもつまらなくもなるものなので、何でも前向きに捉えて楽しむ工夫ができる人がいいですね。寺本のようにどんどん新しいことを吸収していこうとする新人は、先輩社員にとっても良い刺激になります。
寺本:私の同期や先輩も前向きで明るく、人との和を大事にする人が多いです。ディスコは利益や効率を重視しているように思われがちですが、自由度の高い風土でさまざまな人と繋がっていくためには、良好なコミュニケーションや人としての信頼という基本的なことが結局は重要だったりします。先輩後輩問わず、さまざまな方と接点を持ってお互いの知識や世界を拡げていきたいと思っています。
――お二人の今後のビジョンを伺えますか?
寺本:目標は「何でもできる人」になること。まずは化学や薬品のことなら寺本、と一番に思い浮かべてもらえるような存在になり、やがては「寺本に相談したら大概のことは解決できる」と言われるようになりたいですね。
谷岡:日本の製造業の強さは、工夫改善を積み重ねてより良くしていく追求力です。ディスコはKiru・Kezuru・Migakuの技術領域で愚直にそのことを実践している企業で、大事なことは何でも自力で深掘りしていきます。目的をしっかり定めつつ、自分たちの領域をどんどん拡げていこうという独特な追求の仕方が、着実に良い結果に繋がっています。企業としてより一層強く、世界中に貢献できる存在でありたいと思うと同時に、ディスコの強さは製品だけでなく、圧倒的な生産技術が支えていると言われるようになりたいと本気で思っています。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
谷岡:ディスコの内製は、構想を練るところから詳細設計や制御に至るまで、つまり上流から下流まで関わることができるので、物づくりや技術が好きな人にとっては最高の環境だと思います。考えたものの試作、修理、改良など、幅広い領域を担いますし、そもそものシーズを自ら探してくる、発見するような醍醐味も味わうことができます。ただしこれは上司や先輩から与えられるものではなく、自分で一歩踏み出してつかみ取る必要があります。自由というのは自分がしっかりしていないと使いこなせないのですが、自分次第で何でもできるフィールドでもあることは最後に改めてお伝えしたいと思います。
編集後記
機械・電気・情報・物理化学など多岐に渡る知見を要するディスコの広島事業所・製造技術部。バックグラウンドを更に伸ばし、自分の領域もどんどん拡げていく、正に挑戦し続けることができる環境はエンジニア志望者にとって魅力的なフィールドといえるだろう。ものづくりの根幹ともいえる生産技術の世界で、理系人材の可能性を思う存分試してみてほしい。
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※インタビュー日:2024年1月19日