「やりたいことは一貫して電気系」と気づいてJTへ

――学生時代の専攻とエンジニアとしてのキャリアについて伺えますか。
大学ではレーザー生成プラズマの研究をしていました。電気系の専攻ですが、研究としては物理寄りの内容で、プラズマから生成される電磁波の計測をテーマに修士まで進みました。
卒業後は、高精度な技術を使った製品開発に携わりたいと思い、就職活動では技術にフォーカスできそうなBtoB企業を志望していました。入社した精密機器メーカーでは師匠と呼べる主席研究員の下で学ぶことができ、技術的にもとても面白かったのですが、次第に会社のルールや予算の都合などでやりたいことができなくなり、転職を決めました。
2社目も同じくBtoBを扱う企業でした。高精度なFAシステムの開発部門に電気系エンジニアとして入社しましたが、実際には技術分野の異なる機構設計の業務を担当しました。そこで機構設計を担当してそれまで携わってきた電気系から離れたことで、「電気系に軸足を置いた研究開発をしたい」と改めて気付かされました。
異動も難しい状況であったため、再び転職を考えて電気系の開発者を募集していたJTに入りました。展示会で加熱式たばこデバイスのカットモデルを見たことがあり、私が身に付けてきた電気系の要素技術を役立てることができ、さらに周辺技術も学べて楽しそうだと思ったのが理由です。
――JTの開発部門でのエンジニアの役割や業務の流れを教えてください。
まず、マーケティング部門より提示された製品企画を基にプロトタイプを製作します。次にプロトタイプやさまざまなデータをマーケティング部門と共有して、改良案を議論します。そして、また、プロトタイピングと議論を重ねていき、新しい要素を製品に組み入れたり、機能をブラッシュアップして完成を目指し、開発を進めていくという流れです。
加熱式たばこデバイスは、いかにたばこを加熱するかが開発におけるポイントになります。たばこの味・香りをデリバリーするには温度が必要ですが、高温にするほど電力消費が増えて、お客さまの使用時間が短くなり、ユーザビリティが下がってしまいます。
味・香りの豊かさ、電池の持ち具合、デザイン性など、全ての仕様を実現できるようにメンバーで知恵と工夫を持ち寄って開発し、製品仕様を達成したら量産体制の立ち上げをサポートするところまでが開発部門の仕事です。
ある程度、マーケティングプランがかたまっている次機種に向けた製品開発と、その次の製品を見据えた要素開発という複数のプロジェクトを同時に進めることもあります。要素開発は、まだ実用化したことのない基礎技術からスタートすることもあるので、最先端の技術を調べるなど、常にアンテナを張って新技術の情報収集や検証を行っています。
成長市場の加熱式たばこ、いかに勝つかを考えて開発する

――加熱式たばこの開発には、どんな魅力があるのでしょうか。
加熱式たばこはさまざまな要素技術が集まってできているので、自分の専門分野以外の技術にも関わっていけるのが魅力ですね。私は今まで加熱という領域を扱ったことがなかったので、電力から熱への変換など未知の技術的な知識を吸収できることが楽しいです。ちなみに、私は喫煙者ではありませんが社内で特に肩身が狭いこともありません(笑)。
加熱式の特徴としては、やはり温度を扱うので電気安全性が重要です。保護が何重にもなっていて、それらの機能検証をどのように行っていくかという点が難しいところだと思います。ただ、自分で開発した製品が完成したときの喜びは何ものにも代えがたいものがあります。
――たばこ業界でエンジニアとして働く面白さは何だと思いますか?
従来の紙巻たばこから加熱式たばこへの移行が進み、マーケットが拡大している中で、競合メーカーの製品性能や市場を見つつ、どのように挽回して勝つかを考えています。開発メンバーのモチベーションは総じて高く、負けないぞという気持ちを楽しんでいます。市場で売られている他社製品を分解してリバースエンジニアリングを行うなど、競合メーカーで使われている技術の分析を行っています。また、加熱式たばこは海外市場での発展の余地も十分あるので、さらなる拡大を見据えて開発や研究に取り組むことにやりがいを感じます。
――前職まではBtoB企業とのことでしたが、開発研究のフィールドがBtoCに替わったことで、変化はありますか?
市場投入前にマーケティング部門が実施するお客さま調査での反応も含めて、お客さまの声が直接分かるのはエンジニアとして面白いと感じます。コンシューマー製品として私が初めて関わった製品を店頭で見たときには、人知れず工場に並ぶBtoB製品とは一味違う感動がありました。
ボトムアップも可能な柔軟性を兼ね備えた組織

――エンジニアとしての働き方や、職場の実態についてお聞かせください。
コアタイムのないフレックス制なので、ワークライフバランスをとりやすいのがとても助かっています。ちなみに前職では、1社目はフレックス制がなく、2社目はフレックス制だったものの実質的には使いにくい制度だったので、当社の場合はきちんと制度を活用できるのが非常に良いですね。
機密品を扱うような場合には出社しますが、リモートワークも有効に活用しています。開発部門は製品のローンチに向けて忙しくなりますが、そこを越えると次のプロジェクトまで少し落ち着くので休暇や研修に時間を使うことができます。プロジェクトごとにメリハリのある働き方ができていると思います。
私が所属する部署では意思決定についてはトップダウン型でなされるため、議論から決定までが非常に迅速で、物事がなかなか決まらない大企業体質とは縁遠く感じます。また、 定量的なデータなどで論理的に根拠を示せばボトムアップの提案が可能なので、柔軟性を兼ね備えた組織だと思います。新製品の立ち上げに必要な分析機器などの設備も、必要性を説明できれば容易に導入可能なので、やりたい事を効率的に構築できる環境が整っています。
――技術面ではどのような成長環境がありますか? 新技術を学ぶ上で心がけていることも教えてください。
要素技術などを新たに学ぶ際は、その分野のスペシャリストがいるため、話を聞きながら学べるのが心強いです。もちろん、電気系については私が専門家の立場なので、責任を持って自学自習を行い、人に教える立場になることもあります。
専門技術の勉強については、技術書を読む以外にメーカーの技術メルマガに登録しておき、気になるものに目を通して新技術をチェックしています。半導体メーカーのホワイトペーパーやアプリケーションノートは、製品プロモーションも兼ねているので具体的な設計事例に加え、新しいチップの使い方も示されていてお勧めですよ。
大学の基礎研究と比べて、仕事では「使える技術」が必要という違いはありますが、学生時代に培った研究へのアプローチや学ぶ姿勢は異分野でも大いに役立つと思います。
――開発者としてのキャリア面では、どんなポイントがあるでしょうか。
当社は、「何をやりたいか」「どんなポジションで働きたいか」といった希望を自分で検討してジョブマッチングする仕組みを含めて、主張すればそれを尊重してくれる会社です。やりたいことに対して、予算を付けてもらえることもあります。
加熱式たばこの開発に関わる幅広い職種やポジションがありますし、開発部門や製造現場からも話を聞き、その上で自分のやりたいことを発信し、選択できるのはとても魅力的です。会社都合の人事でキャリアが決まる企業と比べて、当社ではやってみてもし合わなかったら異動の相談もできますし、一つのポジションに縛られない柔軟性は大きなポイントだと思います。自分次第でいくらでもキャリアの厚みを増やせる環境ですよ。
就職活動での会社選びは「やりたいことができるか」を軸に

――開発部門では共に働きたい人とは、どんな人でしょうか。
開発はチームのメンバーと協力して進めることが多いので、他人を尊重しながら、同時に自分の意見もきちんと主張できるような協調性が必要です。私の組織では、自分の意見だけを主張するような人や、感情だけでぶつかり合うような人は見かけません。
自分で考えて行動できる人は多くのチャレンジができると思います。大企業だと惰性で会社にいるタイプのエンジニアもゼロではないと感じますが、自分が持っている技術に執着せず、どんどん新しいものを持ち込んでくれるような人と一緒に働くのが楽しいですね。
――最後に、この記事を読んでいる理系就活生にメッセージをお願いします。
修士当時の私がもし、業種や会社にこだわらず、本当に「やりたいことができるか」を軸として考えたとしたら、JTは就職先の選択肢に入った会社だと思います。
大学での研究は数年間であるのに対して、社会人人生はその先にずっと続くもの。学生時代に学んできたことよりも、社会人になって学ぶ量のほうが圧倒的に多いと、私自身感じています。ですから、両者が必ずしも完全に一致しなくても、自分がやりたいと思えることに飛び込んでみても良いと思いますよ。
日本たばこ産業株式会社の 「企業情報」をチェック!
#### 編集後記
まだ新しい業界を切り開き、市場を動かしていくプロダクトを開発するという挑戦は、エンジニアとしてのやりがいとキャリアの充実を両立する上で最適といえるだろう。エンジニア視点で見て働きやすい環境から、「やりたいこと」を実現するキャリアをスタートさせてみてはいかがだろうか。
※所属・内容等は取材当時のものです。