製造メーカー=ものづくりの経験必須、ではない

――まずはお二人の自己紹介と、これまでの業務経験のお話をお願いします。
M:大学時代は電気電子工学を学んでおり、就活時には学生時代の知識を生かしてメーカーでものづくりがしたいと考えていました。前川製作所に就職してからはまず、食肉向け機械システムの制御などを担当。その制御を通じて、制御装置・PLC(Programmable Logic Controller)を活用して自動機械のプログラムを作ったり、制御回路を設計したり、食肉機械の画像処理をしたり、さまざまな業務に携わってきました。現在は、冷凍機の故障の予兆診断や異常検知の機械学習についての研究を行っています。
T:学生時代は工学全般や制御などのロボット技術を学んでいました。新卒では精密モーターを作る会社に入社し、その後前川製作所に転職。当社に入社してからは守谷工場でチキン骨付きもも肉全自動脱骨ロボット「トリダス」の組立業務を経験し、その後、大学時代のスキルを活用できる現在の部署に異動しました。
現在は、セルシステムなど画像処理関連の開発に携わりながら、ディープラーニングの研究開発などを担当しています。ディープラーニングはもともと関心の高かった分野で、比較的自由にしたいことをさせてもらっています。
――学生時代に学んでいたことが入社後すぐ生かされたのでしょうか?
M:入社後すぐに携わった食品機械の制御や電気設計では、電気電子で学んだ知識が生かされたと思っています。現在担当している画像処理・ディープラーニングでは、もちろん新しく学ばなければいけないこともたくさんありました。ベースとなる数学や物理の知識があればスムーズに業務に入れると思います。
「製造メーカーはものづくりの経験がないと活躍できない」と思っている方も多いですが、全くそんなことはありません。知識や経験はあったほうが有利ですが、理系学生が学ぶ基礎部分さえ身についていれば、応用方法などは入社後にしっかり学べます。
T:学生時代に少し学んでいた画像処理やC言語の基礎は入社後に役立ちました。私の場合は本当にかじっているくらいでしたが、ある程度学んでいる方であれば即戦力として働けると思います。特に情報系の知識を持っている人は社内に多くないので、トップ人材として活躍できますね。
学びたい知識や技術の習得はもちろん、自主的な取り組みも

――お二人の現在の具体的な業務と、それをどのように習得したか教えてください。
T:セルシステム開発で画像処理におけるミスの改善業務を担当しています。もともと、ハムダス-RXなど食肉向けの機械システムは統計的なデータを使った処理や、エックス線画像を使ったルール・ベースの画像処理で対応していましたが、どれも難しくなかなか精度が上がりませんでした。というのも、生肉は対象物としての難易度が非常に高いんです。これはセルシステムに関しても同じですね。
そこで、より精度を上げるために開発チームで着目したのが、当時ちょうど黎明期だったディープラーニングでした。開発チームで試行錯誤しながら始めたディープラーニングですが、想像以上に良い結果が出てしまい、「これはやってしまうしかないな(笑)」と。会社に掛け合い、本格的に研究させてもらえることになりました。今思い返せば本当に思いつきだったのですが、ディープラーニングを活用することで精度も安定性も抜群に上がったので、貢献できて良かったと感じています。
M:最近では、セルシステムで研究したディープラーニングを、既に開発されていたハムダス-RXの精度を高めるために実機導入しました。現在は、冷凍機の運転での故障予兆や能力の診断技術の開発をしています。具体的には、機械学習や統計データを使って解析や診断を行うための技術構築を行っていますね。制御・情報系技術のアプローチで研究開発していますが、冷凍機の時系列データを解析するためには、冷凍機に関する機械ハードウェアや熱サイクルの基礎知識が必要になります。そうした知識や技術は、会社内にあるトレーニングセンターで学べます。
ちなみに、トレーニングセンターの研修は強制的に組み込まれているわけではありません。「〇〇が必要なので、△△をしたいです」と自主的に申し出ることで研修をアレンジできます。
小さな思いつきが大きな成果につながる

――業務で大変だったことや、逆にやりがいを感じたエピソードなどはありますか。
M:開発された製品が客先で稼働するといろんな状況が起こるので、大変なことはたくさんあります(笑)。ただ、トラブル発生時もお客さまに迷惑がかかってはいけないので、スピーディーに解決する体制で取り組んでいます。何かあった際には守谷工場と佐久工場、製造部門や営業部門などをつないで、トラブル解決の方向性を決めていきますね。
やりがいは、やはり他社に類を見ない装置のものづくりに携われる点。そもそもロボットを使って肉を切る・脱骨をするというシステム自体が珍しいですし、そのためにエックス線撮像や画像処理、ディープラーニングが関わっているというのは、ものづくりが好きな人間としてもワクワクしますよね。これまでいろんなお客さまが求めていたであろうものを形にできているので、社会の役に立っていると肌で感じられる機会も多いです。
プログラミングやソフトウェア開発、信号処理の結果が機械で分かる点も楽しいです。ソフトとハードの両方に携われる点も魅力ですね。
Celldas 動画~ディープラーニングと画像処理〜
「セルシステム “CELLDAS” での豚もも肉の寛骨・尾骨の除骨」
認識ユニットで三次元形状とエックス線撮像を行い、ディープラーニングでマスクを生成。生成したマスクによって画像処理で正確にポイント検出。カットをするセルにローディングされて再び三次元撮像、認識ユニットで取得した情報と重ね合わせカットポイントの三次元位置情報をロボットに送る。3本のロボットアームが衝突回避制御をしつつ協調して動作し、尾骨と寛骨を除骨していく。
・ディープラーニングと画像処理は認識ユニットでの正確なポイント検出で使われている。[動画前半]
T:開発は新しいことへの挑戦の連続のため、日々、新しいことに挑戦しています。大変なんですけれども(笑)。ただ、先ほどのディープラーニングしかり、日々のちょっとしたアイデアや思いつきが大きな成果につながることも多いので、刺激的で楽しく仕事できています。未知の領域だからこそ、トライアンドエラーを繰り返さなければ正解は見つからないと思いますし、良い意味で自由に、自分で考えながら仕事していますね。
私が今の部署に配属された頃は、AIのAの字もないような状態でした。私自身はもちろん周囲も知識を持ち合わせていなかったので、学びながらセルシステムを改良していったのですが、どんどんできることが増えて、周りからも「すごいね」とお声がけいただけたときはうれしかったですね。自分自身のアイデアが会社をちょっとずつ良くしていけていると実感できます。
すごく自由度が高く、チャレンジングな環境

――お二人が感じる前川製作所の魅力は何ですか。
M:当社は「産業用圧縮機、産業用冷凍機を作っているメーカー」と紹介されることが多いですが、実際には肉を切る機械はじめ、さまざまなことをやっているので、その分さまざまな成長ができます。ものづくりを通して多様な業務に携われることがすごく魅力的だと思います。
T:自由度が高く、いろんな経験ができる点ですね。前職は別の業界だったのですが、「こうしたい」「こうしたほうが良い」と思っても、どこかでストップがかかってしまい実現できないことが多々ありました。しかし、前川製作所では、良いアイデアならどんどん挑戦させてもらえます。特にディープラーニングに関しては、裁量を任され、新しいこともどんどん試すことができています。その分結果も求められますが、のびのびやりたいことを突き詰められるのは大きな魅力だと思います。
――最後に、一緒に働きたい人の特徴や、現在就活中の学生にメッセージをお願いします。
M:画像の撮像でいえば、特に物理や光学に詳しい方は理想的です。プログラミングや機械学習、ディープラーニングなどの経験があれば非常にうれしいですね。とはいえ、それらはマストではありません。基本的な数学や物理の知識があれば十分ですし、好奇心旺盛な方であれば今の知識やスキルに関係なく成長できると思います。チャレンジできる社風でもあるので、能動的に動ける方であればすぐに活躍できると思いますね。
T:マエカワの魅力はやっぱり、新しいことにどんどん挑戦できるという点です。もちろん自分で考える部分も多く大変ではありますが、ハマれば仕事感がないというか、自分の興味関心があることに没頭できると感じることも多々あります。それでいて、装置の大きさはもちろん、世の中への価値という観点でもかなりスケールが大きいので、やっていて面白さを感じられると思います。私も、今持っているスキルうんぬんより、好奇心や探究心の強い方と一緒に働きたいと思っています。 普段の何気ない生活の中で、「これ面白そうだな」とさまざまなことにアンテナを張っているような人が重宝されると思います。
業務でも毎日何か新しいことに取り組む状態がずっと続いているので、「ずっと同じ作業をやりたいんだ」という人は、ひょっとするとこの会社では厳しいかもしれない。何かしら新しいことに興味を持っている人であれば、毎日楽しく仕事できると思いますし、そういう人に来ていただけるとうれしいですね。
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編集後記
世界最先端の技術に関わる開発者に共通するのは「強い思い」。どれだけ知識や経験があったとしても、「思い」がなければ新たな価値創出にはつながらない。「まだ見ぬ新たなものづくりに関わりたい」と考える学生にとっては最適な環境ではないだろうか。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2024年4月公開)