競争から共創へ。「知的財産」を活かし、ハイレベルな仕事に挑める三菱電機の魅力とは

インタビュー

LabBase Media 編集部

競争から共創へ。「知的財産」を活かし、ハイレベルな仕事に挑める三菱電機の魅力とは

高度な技術力を誇る三菱電機では、知的財産の手厚い保護を行っている。豊富な知財実績を活用し、パワー半導体(高電圧や大電流を扱える半導体)の新チップ構造などより高度な技術開発を実現している。保有特許の有償開放で新たな価値の「共創」を推進する三菱電機で働く魅力を、知財部門で活躍する理系人材に聞いた。 三菱電機株式会社: 複雑化する環境問題や社会課題の解決に貢献するため、家電から社会インフラまで多岐にわたる事業を展開しています。「幅広い事業フィールドがあるからこそ、社員一人ひとりが輝ける仕事と出会える」それが三菱電機の大きな魅力の一つ。「想い」「やりがい」「強み」「多様な価値観」を持った社員が自分に合った働き方で活躍しています。

三菱電機の技術を守る知財戦略



――後藤さんが所属されている知的財産センターについて教えてください。


知的財産センターは、特許や商標、意匠などの知的財産権を総合的に管理し、知財戦略の立案・推進を担う部門です。本社か事業所のいずれかにのみ知財部門を構える会社が多いなか、三菱電機は本社機能である知的財産センターに加え、全国各地の事業所にも知財部門があるのが特徴。数百人規模の知財専門人材を擁し、二段構えの知財基盤を備えています。


各事業所は特定の技術分野に特化しているため、知的財産センターでは部門間の橋渡しによる価値創造も担っています。例えば、最新のエアコン製造のためにエアコンと半導体の各事業所の技術・知財部門相互の連携支援を行うのも私たちの仕事です。


――三菱電機では知的財産の保護に力を入れているんですね。


家電製品から宇宙・防衛関連まで、三菱電機が展開する事業範囲と保有する開発技術は多岐にわたります。他社との競争で優位に立ち、事業の収益性を確保するために、特許取得などを通じた知的財産の保護には早期から注力してきました。


近年は、パートナー企業とのオープンイノベーションにも取り組んでいます。「自社技術を守りながら社会や消費者により良いものを生み出す」ため、引き続き積極的に知的財産の適切な保護に取り組んでいきます。


競争から共創へ。知的財産の有効活用で目指す新たな価値の創出



――三菱電機の特許実績と、それを支える御社の強みを教えてください。


三菱電機は、ライフ部門(ビルシステム事業・空調・家電事業)をはじめとする複数のビジネスエリア単位での経営を展開しています。各ビジネスエリアの事業本部は、独自のキー技術を知的財産権で保護するため、積極的に特許出願をしています。


2022年のPCT国際出願(特許協力条約(PCT)に基づく全加盟国への出願)件数は世界第4位。上位5位以内に入るのは14年以降9年連続で、日本企業としては三菱電機が15年からトップを保っています。こうした豊富な特許実績は、三菱電機の高度な技術力に支えられています。


――三菱電機の高度な特許技術が、さらなる革新的な開発に活用された事例はありますか?


民生・産業向けのパワー半導体が2000億円以上の売り上げを誇る半導体・デバイス事業本部が2023年5月末に世界学会で発表したパワー半導体の新チップ構造には、当社が特許を保有するSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体設計技術が応用されています。


従来のパワー半導体には、サージ電流(瞬間的に定格電流を超えて発生する過電流)の集中のため、熱による絶縁破壊が生じる問題がありました。この問題に対し、通常はサージ電流の発生を防ぐ試みがなされるかと思いますが、当社では「絶縁破壊が起こらないよう、電流を分散させよう」と発想を転換。サージ電流が集中するメカニズムを研究し、世界で初めて解明に成功しました。


その結果開発されたのがサージ電流を分散し、従来比5倍以上の耐量を実現した新チップ構造です。チップの寿命が大幅に延長したことで、製品全体の低価格化が実現されます。これはまさに、三菱電機の技術部門の柔軟な発想と、それを最大限に活かす高度な技術力の相乗効果で最先端の開発を実現した好例です。


――近年では知的財産の「保護」から「活用」に戦略の重点がシフトしていると伺いました。その経緯と、三菱電機での具体的な取り組みをご説明いただけますか?


先程説明した通り、従来の知財戦略の要は特許の保護による競争優位性の確保・維持でした。しかし、サステナブル社会の実現など現代的な課題解決のためには社内外の技術の掛け算で新たな価値を創出する「共創」のアプローチが不可欠となりつつあります。


そこで、三菱電機は2021年から「Open Technology Bank」活動を始めました。当社の技術資産を必要とする人に有償開放する「ライセンス提供」を通じて、パートナー企業と共同で新製品・サービスの開発や新事業を創出するオープンイノベーションの取り組みです。Webサイト上で、当社が保有する特許技術を社内外の人に分かりやすいよう課題・テーマごとに分類・タグ付けして公開しています。


この知的財産の「見える化」で、三菱電機の高い技術力が世の中で広く活用されることがこの活動の理想ですね。社内外を問わず、既存技術を応用した新たな技術革新が生まれ、パワー半導体のような応用例が増えると良いと思います。


技術者・研究者にも、最低限の知的財産の知識は必須



――理系出身の後藤さんはなぜ、三菱電機の知的財産部門で働こうと思ったのですか?


学部では微細な構造の生体検査を可能にする細胞分離装置の開発に取り組みました。教授の勧めにしたがって特許出願書類の作成の際に実験データや図面を提供した結果、私も発明者に名を連ねることができました。この特許取得経験をきっかけに、画期的な発明をした人の権利を守る特許の仕組みに興味を持ちました。


その後大学院で電気系の研究に取り組みましたが、次第に就職を意識するように。三菱電機の知的財産センターなら、電気系の専門知識を活かしながら特許に関わることができそうだと思い、入社を志望しました。


――後藤さんの日々の業務内容を教えてください。


特許出願書類の準備や、特許庁の審査に関わる対応業務など、特許取得までの手続き全体に携わっています。とくに特許出願書類は、日常では使わない用語を使うことも多く、記載方法にも独特なルールがあります。そのため、発明者の意図を正確にくみ取ったうえでいかに効率的に特許用の文章を作成するか、日々知恵を絞っています。


「新しい発明ができたから出願する」という受け身の姿勢ではなく、プラスアルファの価値創出にも取り組んでいます。市場動向や他社の特許出願状況を分析し、「こういう特許を出願していけばよさそうです」と技術部門にアドバイスしたり、「ここの部分、特許を取れそうですよ」と知的財産を「発掘」するのも私の任務です。


――入社時点で知的財産に詳しい理系学生は珍しいかと思います。研究・開発部門の社員にとっても、知的財産の知識は必要なのでしょうか?


確実に特許を取得するためには、発明者自身にも最低限の知的財産の知識が求められます。例えば、特許出願前に学会発表をしてしまうと、要件の一つである「新規性」を有しないと判断され特許が認められなくなってしまう可能性があります。そこで、技術者向けの社内講座を開き、「特許出願より前に学会・論文発表をしてはいけません」など注意点を伝えています。新入社員向けと、さらに詳しい発展的内容の講座が毎年1〜2回開催されていますね。


また私のような知財専門人材を目指す人向けに、特許の基礎から学べる社内講座も用意されています。その後、OJTコースで「国内法の詳細」や「特許文書の書き方」、「特許庁対応スキル」など関連知識の習得が可能です。


挑戦と成長を繰り返し、ハイレベルな仕事を楽しもう



――働くうえで大事にしているマインドと、仕事のやりがいを実感する瞬間を教えてください。


「部分ではなく、全体に目を配ること」を心がけています。仕事で関わる一人ひとりの考えや作業スピードは異なるので、「どんな順番で、誰に何をお願いし、自分は何をすれば最良の結果が得られるだろうか?」を常に考えています。


入社当初は、自分が特許出願書類を書いた特許が認められ、発明者からお礼を言われたときにやりがいを強く感じていました。最近はプロジェクトのまとめ役を担うことが増えてきたこともあり、プロジェクトの中で全員がある程度納得できる結論や成果に到達できたときに達成感を得ています。


――後藤さんから見た三菱電機で働く魅力は何ですか?


幅広い事業分野で研究から製品開発まで行っているため、やりたいことに挑戦できる点が魅力ですね。人材の流動性が高く、研究者がものづくりのため事業所に異動したり、技術者が研究所に異動したりすることが珍しくありません。何かしら自分の興味・関心にマッチする業務に携われるでしょう。


また世界各地に拠点があるので、海外で働くチャンスもたくさんあります。私自身も複数回の海外出張や3年間の米国駐在を経験し、各地の知的財産の専門家と直接やりとりをしました。


――最後に、読者の学生へメッセージをお願いします。


三菱電機は「結果に至るプロセス」を重視する会社です。たとえ失敗することがあっても、積極的な挑戦の結果であればまずは挑戦したことを評価してくれます。頭ごなしに失敗を叱るようなことはありません。「失敗から学び改善すること」を社員の成長と企業価値の向上のために重要なプロセスとして受け入れている失敗に寛容な風土があります。


社会も事業も刻一刻と変化するので、変化を楽しみながら失敗を恐れず挑戦し続ける人にぜひ入社してほしいですね。


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編集後記


「これまでにない進歩的な発明」に認められる特許。その取得には、高度な技術力と複雑な法制度の正確な理解・運用が求められる。全世界で数万件という特許取得数は、三菱電機の高度な技術力を如実に示すデータといえるだろう。自社の特許技術を開放し、社内外でのさらなる価値創造を推進する三菱電機株式会社は、最先端技術を扱い、高度な専門性を活かした仕事をしたいと思う理系学生にぴったりの就職先ではないだろうか。


※所属・内容等は取材当時のものです。(2023年10月公開)


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ライター
三輪 愛
カメラマン
上田 真希子
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企業情報

三菱電機株式会社

三菱電機株式会社

◇◆地球規模の社会課題へ挑戦を続ける◆◇ 創立は1921年。以来、発電・送電・水道・通信・交通など様々なインフラづくりに関わり、社会の心臓部分に機能してきた三菱電機。コミットメント“Changes for the Better”の理念の下、変革を続けることで、新たな価値を生み出してきました。 そして現在、社会の発展と共に地球温暖化やエネルギー問題など、新たな課題も生まれています。社会のコアな部分を支えてきた三菱電機だからこそ、やらなければならないことがある。先進性と品質が世界で評価され、世界各国に拡大したネットワーク。今日よりももっと素晴らしい明日のために、私たちはこれからも挑み続けます。 ------------------------------------------------------------------------- ◆経営理念・ビジョン 強い事業をより強く、そして強い事業を核としたソリューション事業を強化する、それが三菱電機の戦略です。地球規模の課題に挑んでいくためには、総合電機の総合力を結集させ、新しい価値をつくることが必要です。三菱電機には、次世代の電力網「スマートグリッド」や、自動車機器と宇宙システム事業双方の高い技術力を掛け合わせることによって生まれた「自動運転システム」といった先進的なプロジェクトがあります。各事業分野を代表するメンバーが集まり、実用化に向けて日々多くのプロジェクトが進行中です。世界をつくってきた技術やノウハウが集まり、生まれているシナジーは、三菱電機にしかつくれない価値へとつながっています。 ◆技術力・開発力 三菱電機といえば、エアコンなどのホームエレクトロニクス領域を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかしそれはほんのひとつの面にすぎません。1921年に神戸で造船所の電機製作所を母体として誕生して以来、使命としてきたのは社会のインフラとなる「電機」づくり。まだまだ欧米からの輸入に頼っていた時代から、自分たちの技術でこの国の社会をつくり、支えることを事業の使命としてきました。 事業領域は幅広く、発電所の発電機や送変電設備、鉄道車両用電機品や運行管理システム、上下水道処理システムといったインフラから、世界中のものづくりを支えるファクトリーオートメーション機器、エアコンや冷蔵庫といった家電まで、電機に関わるあらゆる技術を有しています。国内外に生産拠点は60以上、研究所は10以上あり、その一つひとつが強い個性を持ち新たな技術を生み出しつづけています。また各領域の技術交流も活発に行われており、そこから新たなソリューションも誕生しています。 ◆今後の展開 社会をつくり、社会を支えてきた三菱電機の使命感は、CO2削減などの環境保全から、災害・テロなどの社会不安の解決、そして宇宙の開拓まで、今も社会全体の課題解決のため新たな一歩先を見つめています。これからも社会課題をきりひらく企業として、限りないチャレンジをつづけていきます。