「音」一筋の学生生活を経て、憧れの研究職に

――学生時代はどんなことに取り組みましたか?
「音」と関わり続けた学生生活でした。情報理工学部で画像や音などのメディア情報処理を学び、音情報処理研究室で「音響イベント検知」を研究しました。スマートスピーカーなどのデバイスで人が倒れる音や赤ちゃんの泣き声などを検出し、特定の環境での異常検知を目指す研究です。
学業以外では、さまざまな学部から100人以上が集まる交響楽団の活動を通じて、同じ「音」でも人によって異なる着眼点から捉えていることを知りました。例えば、映像学部生の「この音を強調すればより魅力的な響きの演奏になる」という意見は目からうろこで、「対象を多角的に見る」ことを意識するきっかけとなりました。
――NECへの入社経緯を教えてください。
「自問自答しながら考えを深めていくこと」が好きだったので、研究職に憧れていました。大学の研究室で企業との共同研究に参加して「研究の成果を社会に還元したい」と思うようになり、就職活動を始めました。
自身の専門性を発揮しやすいと考え、音に関する研究テーマを持つ企業に狙いを定めて応募していました。なかでもNECは専門性の追究と事業化を両立する学会発表が多く、研究内容にも興味があったので当初から第一志望でした。
事業化を目指し、多角的視点で挑む現場重視のデータ活用

――担当業務の簡単な説明をお願いします。
入社以来、音や振動から周辺環境や状況を認識するためのセンシング技術の研究開発に取り組んできました。現在は、既存の通信用光ファイバケーブルに加わる音や振動、熱などの現象を計測・分析する技術「光ファイバセンシング」の事業化に取り組んでいます。
例えば、高速道路に埋設されている光ファイバケーブルに加わる音や振動のデータからは渋滞状況が、異常な高温状態からは火災の発生が検知できます。従来は定点カメラで視認しないと分からなかったことでも、センシング装置が1台あれば100kmにわたる全線の状況の把握が可能です。交通流(高速道路網)ではすでに商用化が実現しており、今は新たな適用領域を探っています。
特に私は洋上風力発電と鉄道など広域なインフラに着目し、どこまでインフラ状況の理解ができるのか挑戦中です。具体的な業務として、取得してきたデータを分析するための前処理方法の検討や、データがもつ意味の正確な理解、お客さまにとって価値のあるデータへの変換方法の検討と提案に取り組んでいます。
集めたデータを正しく解釈するには、実際のケーブルの設置状況や現場で起こっている事象を自分の目で確認することが重要です。また、お客さまにとって価値のあるデータとはどのようなものか仮説を立て、検証する必要があります。そこで、私自身が発電施設や線路などの現場に出向いて機材を調整し、お客さまと一緒にデータを見ながら「このデータはこのように解釈・応用できませんか?」と議論しています。
――現在の業務に活きている学生時代の経験があれば教えてください。
交響楽団で養った「物事を多角的に見る姿勢」が役立っています。例えば、長大な開発期間の末に世界最高峰のセンシング精度を実現させても、コストが高すぎて使われなければ意味がありません。お客さまが求める要素、他社との優位性が示せる要素など、複合的な視点からどのような性能の技術を開発するかの見極めが肝要です。
もちろん、多くの人にヒアリングすれば多様な意見を集められますが、その分技術開発のスピードは落ちます。一方、自分一人でさまざまな観点からの利点・欠点を想像できれば、それぞれのバランスを取りながら時間のロスなく開発を進められます。
私が所属する研究所には、研究者以外に開発担当のエンジニア部隊とマーケット情報を集めるコンサルタント部隊も在籍しているので、いまもディスカッションを通じて自分に足りない視点を学んでいます。
――「音」以外の知識はどのように身につけましたか?
振動や温度に関わる知識は社内のスペシャリストとの相談や議論を通じて習得しました。現在の業務に必須の「光」の知識も、NEC 北米研究所の研究者と議論しながら獲得し、日々の研究に応用しています。
また、私が普段やりとりしている洋上風力発電や鉄道のメンテナンス担当者の方たちは各領域のスペシャリストです。小さなパーツの不具合がどんな影響をもたらすかなどを細かく把握しています。彼らのような現場の専門家にも納得してもらえるよう、業界特有の知識も学び、データの見せ方や意味の解釈を工夫しています。
暮らしの安全・安心に貢献する技術の社会実装を牽引したい

――いまの業務のやりがいと大変さをそれぞれ教えてください。
学生時代から環境認識に関わる技術を安全・安心のために活用したいと考えていたので、自分の研究が暮らしを支えるインフラ部門の効率化に貢献していることは大きなやりがいですね。
例えば洋上風力発電では、メンテナンスコストの削減でエコな次世代エネルギーの低価格化が実現すれば、地球温暖化問題対策にもなります。また、鉄道運行が効率化すれば、将来働き手が減っても安全性確保と列車本数の維持が両立できます。現在直面している事業化のための課題の解決が「安全・安心な社会」につながると意気込みながら日々働いています。
研究は常に順風満帆ではなく、行き詰まることも。原因がドメイン知識の不足の場合、一人でどれだけデータ解釈を考えても突破できないので、現場や研究所内の専門家を積極的に頼り、議論することを心がけています。しかし、専門性の異なる専門家と議論するには、考え方の前提条件を示すなど事前準備が不可欠です。自分の研究だけに全力を注ぐのではなく、議論を交わす下準備にも時間を費やすなどペース配分には苦労していますね。
求める情報をうまく聞き出すため、「この人はこれが専門で、着眼点はこの領域にあるな」とコミュニケーション相手一人ひとりの「コア」を見つけ出して、会話の糸口につなげるように工夫しています。
――キャリア面で、今後どんな目標や理想を持っていますか?
自分が発明した技術が社会実装される過程を経験したいですね。プロジェクトの事業化を実現し、お客さまからリアルなフィードバックをもらうまでの「事業化サイクルの全て」を体験し、今後に活かしていきたいです。いずれはたくさんの人を巻き込んで大きなプロジェクトを牽引できるリーダーを目指しています。
プライベートも大切にしたいと考えており、子育てと少人数プロジェクトのリーダーを両立している先輩の働き方を参考にしています。男性ですが、お子さんが生まれたときに育児休業を取得し、復職後はチームを引っ張りつつ業務をうまく分散してプロジェクトを進めています。オンオフのバランスを取りながらチームを牽引する姿が魅力的で、私もそうなりたいと思っています。
――お話にあった先輩のほかにも、仕事と育児を両立している人は多いのでしょうか?
私の周りでは多くの人が育児休業を取得しています。会社も取得を推奨しており、男性で数カ月の育児休業を取得する人も。復職後も朝夕の保育園の送り迎えの時間には打ち合わせが入らないようにしたり、お子さんの発熱で病院に行くため時間休を取得したりと調整しているようですね。介護と仕事を両立させている人もいます。
研究所では裁量労働制とスーパーフレックスが導入されているので、「オフィスにいなければいけない時間」がありません。周囲との調整次第で自分の通院などの都合もつけながら働けます。
誠実に、前向きに。「外向きの好奇心」で応用研究を楽しもう

――NECの研究職を選んで良かったと思うのはどんなときか、教えてください。
顔なじみになったお客さまから「この分野でもなにかできないかな?」と提案をいただき、新たな事業が生まれる様子を目の当たりにすることが多くあります。大企業としての歴史に裏打ちされた信頼があってこそ声をかけていただいていると思うので、そんなときはNECに入って良かったなと実感しますね。
誠実で前向きな人が多い研究所の雰囲気も好んでいます。例えばインターン生のプレゼン内容をもとに研究方針を議論する際、技術的な新規性が弱かったとしても面白い着眼点があればそこをとことん掘り下げてくれます。また何かに挑戦した結果、良い面と悪い面が同時に起こるようなときにも、積極的に良い面を活かす考え方を提案してくれます。
先輩たちが築いてきた「誠実かつ前向きに仕事に取り組む」雰囲気で働けることを幸せに思い、今後も受け継いでいきたいと考えています。
――インターン生との関わりから、皆さんの人柄の良さが伝わってきますね。読者の学生が美島さんやほかの研究者の方々と直接お話ができる機会はありますか?
研究所の見学会などの採用イベントに参加すれば社員と話す機会はあるでしょう。NECの研究者は学会にも頻繁に参加しているので、そこで話しかけてみるのも一つの手です。OB・OGとして研究の紹介と採用イベントの告知のため母校を訪れることもあるので、理系の学生さんならNECの社員と会う機会は多いと思います。
また、NECでは毎年中・長期の研究インターンシップを募集しています。最先端の研究開発にチームの一員として取り組んでもらうので、専門知識や最新技術を話題にたくさんの社員と議論を深められるでしょう。
――就職活動中の学生へのメッセージをお願いします。
NECでは、研究室でひたすらデータを見るのではなく、専門知識を新たなフィールドに応用することが求められます。特にセンシング領域では、センサーを持って現場や学会に出向くことが多いので、体力も必要。好奇心旺盛で、外向きの姿勢で専門知識の現実世界への応用を楽しめる人は、毎日楽しく仕事ができると思います。
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編集後記
現場に足を運び、現実に即した課題の特定やデータの解釈を重視する美島さん。事業部や顧客企業の視点から到達すべき技術水準を定める考え方からも、「技術の事業化=社会実装」というゴールを常に意識して研究に取り組んでいることがうかがえた。
自分の研究成果で社会にインパクトを与えたいと考えるなら、技術力の高さと事業領域の広さを強みに応用研究に力を入れるNECの研究職は天職だろう。少しでも興味を持った学生は、まずは研究インターンシップで応用研究の何たるかを体験してみてはどうだろうか。
※所属・内容等は取材当時のものです。(2024年3月公開)
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