パナソニック エナジーが返済不要の「MIRAI奨学金」と「女性技術者コミュニティ」で描く未来とは?

インタビュー

LabBase Media 編集部

パナソニック エナジーが返済不要の「MIRAI奨学金」と「女性技術者コミュニティ」で描く未来とは?

車載や社会インフラ向けの電池事業を展開するパナソニック エナジーが、2024年から理系学生を対象に返済義務のない「MIRAI奨学金」を開始した。奨学金の対象者には、電池領域につながりのある分野の学生だけでなく、電池事業に強い関心を持つ学生も含まれる。ユニークで画期的な奨学金の構想意図と、ポジティブなキャリア形成のための「女性技術者コミュニティ」の始動で同社が目指す未来の形を、新卒採用の担当者に聞いた。人の育成にかけるパナソニックグループの熱い思いに注目だ。 パナソニック エナジー株式会社: パナソニック エナジー株式会社は、日々の便利で快適なくらしを支える乾電池事業や、幅広い分野の社会インフラを支える産業用電池、車載用電池等のBtoB事業をグローバルに展開しています。「幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現。」がパナソニックエナジーの使命です。強い使命感を持ち、仲間と連携しながら未来を切り開いて参ります。

キャリアの悩みを共有する女性技術者コミュニティ



――香山さんの所属や仕事内容を教えてください。


パナソニック エナジーの人事・総務センターで、新卒採用・キャリア採用と障がい者雇用推進の責任者を兼務しています。新卒採用のチームでは、従来の採用活動に加え、これまでにない二つの取り組みとして、若手社員の交流促進とキャリア支援のための「女性技術者コミュニティ」と、学生の研究を支援する「MIRAI奨学金」が進行中です。


――女性技術者コミュニティとは、どんな集まりですか?


2022年4月、パナソニックは事業別に分社化しグループの再編を行いましたが、これにより社員も自身のキャリアや働き方などを誰に相談すべきか見えにくくなってしまいました。そこで、特に技術部門の女性の悩みや迷いを受け止める場として立ち上げたのが「女性技術者コミュニティ」です。


若手5人を立ち上げメンバーとし、約60名いる入社1〜3年目の若手社員とキャリア入社の女性技術者に参加いただく予定です。


――参加者は若手が中心なんですね。


当社の女性社員比率は14.7%ですが、そのうちの大半はキャリアのなかで子育てを経験した40代後半〜50代が占めています。あえて年齢層を絞ることで、若手社員が身近なロールモデルをみつけやすくし、今後のキャリアイメージを描く助けになればと考えています。


ちなみに当社は時短勤務や在宅勤務などができる制度が既に整っており、ライフステージの変化に対応しやすい環境です。そのため結婚や出産による離職は少なく、育児休業を利用して職場復帰する女性がほとんどです。


――充実した労働環境の中で、女性技術者がより明確にキャリアをイメージできるようにするためのコミュニティということですね。コミュニティではどのような活動を予定していますか?


まずは、仕事の焦りや不安を共有・相談できる場にしていく予定です。社内の技術者から話を聞ける機会を作るほか、若手女性社員が「今会いたい」と考える方を外部講師に招くなど、他社で働く技術者との交流会も検討中です。


また、コミュニティのもう一つの重要な役割として、「MIRAI奨学金を受ける学生に、女性技術者のロールモデルを提示する」ということがあります。奨学生には学生のうちからさまざまな働き方に触れていただき、キャリア選択の幅や視野を広げる場にしていただきたいです。


さらにコミュニティメンバーは、パナソニック エナジーにおいてゆくゆくは各技術分野のリーダーになるであろう人材です。社会の先輩として学生と交流しながら、自らのキャリアを主体的に考える機会にしてほしいですね。


返済不要のMIRAI奨学金で人材を育てる



――MIRAI奨学金についても詳しく教えてください。


奨学金への応募は、理系の大学3年生・大学院1年生の方で、今後の電池業界の発展に貢献したいと考えている方を対象としています。応募があった方のなかから定員20人に対し、返済義務のない50万円を支給します。


返済免除の条件として入社を確約させる他社の例もありますが、当社では「学生自身のキャリアの選択肢を広げてほしい」という思いから、あえて入社を前提とせず、完全給付型の奨学金制度にしていることが特徴です。


奨学金という支援の形を選んだのは、研究を諦めないでほしいから。研究活動費を想定した50万円ですが、使用用途に制限は設けていません。モチベーションを上げるための活動に使っていただき研究のヒントを得るなど、より有意義な使い道を見つけられるのであれば、大いにこの研究活動費を活用してほしいです。


まずは研究に没頭できる環境を学生自身が整えつつ、先輩社員が運営するコミュニティ活動に参加することで、自らのキャリアと向き合う機会を持ってほしいですね。


――入社を問わず返済不要とは、実にオープンマインドですね。


当グループには、創業者である松下幸之助氏の「事業は人なり」という考えが底流しています。私たちは社会の公器であり、世の中からお預かりした大事な人材を育て、事業を通じて社会貢献につなげていく組織です。


実はMIRAI奨学金の構想を提案した時、パナソニック エナジーの経営陣から「世の中のためになるならやろう」とすぐOKが出たんです。その決断スピードの速さと使命感の強さに、当社の「人への投資」にかける熱い思いを感じました。


奨学金を受ける学生が、私たちとの交流を通じて、当社の人材育成への強い信念と社会貢献の姿勢に共感し、その結果入社したいと思ってくださればうれしいです。


――MIRAI奨学金の受給条件はあるのでしょうか?


受給条件として、当社のコミュニティ活動と年度末の成果報告会への参加があります。成果報告会では、奨学金を受けた1年間の自身の成長や研究の進捗を発表してもらう予定です。


社会貢献度の高い電池分野で働く醍醐味



――MIRAI奨学金制度の立ち上げ前にどんな課題を認識していましたか?


パナソニック エナジーはESG(環境・社会・ガバナンス)経営を事業戦略の重要な要素と捉えています。その中でも社会課題の解決への寄与を通じて従業員のエンゲージメントを高め、一人ひとりが活躍して幸せになれる組織を目指しています。


パナソニック エナジーにおいて材料系・化学系出身の女性が活躍している事例はあるものの、分かりやすく花形である家電領域と比較すると人数は決して多くありません。理系分野を学ぶ女性の絶対数が少ない中で、いかに当社のことを選んでもらうかを考えた際に、研究に集中できる学生時代の学びを支援する「奨学金」というアイデアが浮かびました。


――技術者にとって、電池領域の魅力は何だと思いますか?


電池事業はBtoBビジネスなので、自分が設計開発に携わった電池が、さまざまなメーカーの製品に搭載される汎用性の高さが魅力です。さらにお客さまを限定しないため、活用方法がいくらでも拡大し得るという面白さもあります。


また、一般的に電気の利用には送電線が不可欠ですが、私たちの「電池」があれば、電気が通っていない地域や自然災害で不安な日々を過ごしている被災地にも、「電気」を届けることができます。


現代の生活に絶対必要な「水」と「空気」と「電気」。そのうち「水と空気は自然のものだが、電気だけは唯一人間が生み出したものだ」と当社の社長は言います。人間が生み出した電気を作り、さらには電池として貯めておくことで、新たな世界を創り出せるのが電池事業の面白さですね。


――今後ますます需要拡大が予想される分野でもありますね。その電池を作る女性技術者のコミュニティに関わる香山さんご自身は、どんな経緯で現職に就いたのでしょうか。


大学で統計社会学を学びましたが、就職活動では分析やマーケティングより営業職に興味を持ちました。さまざまなメーカーを受ける中で、自力で顧客を開拓するBtoBの面白さに目が向きました。そして、2002年にパナソニックの前身の松下電器産業に入社し、アメリカで販売管理業務にあたりました。


しかしアメリカでの苦労を経て、入社前の選考段階で「人事の方が向いている」と言われたことを思い出し、帰任を機に採用部門に異動。当時は初配属も会社が決めていた時代だったので、その大事なファーストキャリアに関われる採用の仕事にやりがいを感じました。


――他の職業も経験されたそうですね。


当時も女性活躍は推進されていましたが、時代的にどの会社も制度や働き方は発展途上。結婚後は自身の働き方を見直し、2007年から第1子の妊娠までは人材関連会社で転職希望者や求人企業の支援を担当しました。


出産後は育児と家事に専念していたのですが、社会から取り残される気がして再就職にトライ。地元の市役所に入りましたが、新しい挑戦がしにくく、もっと自分のスキルを活かして課題を解決できるところで仕事したいと思うようになりました。その頃に当グループの障がい者雇用推進の求人を見つけ、2019年に再入社しました。


焦らず自分らしくキャリアを育んでほしい



――香山さんが働く女性の等身大の悩みを体験したことが、今の活動につながっているんですね。


コミュニティが生まれた背景には、参画メンバーの一人である男性社員の声も非常に参考になりました。


彼の奥様は元技術者でしたが、「子育て中は技術の最前線ではなく、少し落ち着いた部署で働いた方がいいのではないか」という社会の固定観念のなかで、技術部門から企画管理部門へと職種が変わりました。「技術職を続けたい。でも、どうしたら続けられるのか分からない」と葛藤し、誰にも相談できずにキャリアを諦めた過去を、その男性社員が教えてくれました。


その話を聞いた時、「なんでキャリアを諦めなければいけないのか、方法によっては続けていく方法もあるのではないか」と思い、若い世代が働き方について情報収集し、相談できる場の必要性を確信。コミュニティ設立が加速しました。


――女性の課題に直面した男性が動き出したことも素晴らしいですね。コミュニティ運営を通してどんな未来を実現したいですか?


コミュニティ設立のキックオフイベントで、開発部門の女性責任者が「今の若手の悩みは、20年前に私が感じていた悩みと全然変わらないね」と話していたのが印象的でした。20年以上も解決されずに放置されてきた「ライフイベントと働き方の悩み」という社会課題を、今こそ私たちが改善するんだと再認識しています。


奇跡的に仲間になった一人ひとりが、自己実現を諦めずに活躍できる組織にすることが目指す未来です。そこから事業貢献の思いが育ち、社会に還元できれば理想的ですね。


――人事として理系学生に届けたいメッセージをお聞かせください。


当社の電池事業で働く社員は電池関連について学んできた人が2割で、8割は別の分野の出身です。さまざまな領域の人材が活躍できる事業だからこそ、MIRAI奨学金を通して当社を知ってもらい、「あなたの専門性を発揮できる場は電池事業にありますよ」と伝えたいです。


当社のVision「未来を変えるエナジーになる。」は、決して電池事業のことだけを指しているわけではありません。世の中を変革しながら前に進める「人」そのものが、未来を変える「エナジー」です。


この記事を読む学生のなかには、自身が取り組むテーマが世の中でどのように必要とされるのかを、周りから疑問に思われた経験をした人もいるかと思います。しかし当社では、これまでの努力や経験、成功や失敗は必ず全てが未来へつながると考えています。自分を信じて物事を進めていける人を、当社は社員コミュニティや奨学金でサポートし、一緒に歩んでいきたいです。


――香山さん個人の思いもぜひお聞かせください。


私も過去に履歴書の空白を恐れ、成果を焦っていた時期がありました。今の若い人も、成長しなければとプレッシャーを感じることが多いのではないかと思います。


私が通っているジムのトレーナーはよく「今、このトレーニングをやれば、昨日の自分より一歩前進するよ」と声をかけてくれるのですが、これは仕事にも共通していますよね。少しでも前を向いて行動すれば何かしら成果があり、自分自身を褒めてあげることで次への意欲が生まれれば、それは前進です。焦らず、自分らしく進んでいってください。


編集後記


パナソニック エナジーでは男女を問わず自分らしいキャリアを創造できる環境が整備され、技術者のライフステージや思いに寄り添う取り組みが進められている。転職やキャリアに悩んだ経験も糧にして管理職を務める香山氏やコミュニティメンバーが、良きロールモデルとして若手に未来の可能性を示してくれるだろう。人を大切にするパナソニック エナジーの価値観が凝縮されたMIRAI奨学金や女性技術者コミュニティを通して、その魅力をぜひ体験してみてほしい。


パナソニック エナジー株式会社の 「企業情報」をチェック!


あわせてご覧ください:
パナソニック エナジーが女性技術者コミュニティ設立へ! キックオフイベントをレポート


※所属・内容等は取材当時のものです。(2024年5月公開)


研究をまとめて優良企業からのスカウトを獲得しよう!


  • 理系大学院生シェアNO.1スカウト型就活サービス 「LabBase就職」
  • 上位大学の理系院生4人に1人が登録!
  • 研究と就活の両立が実現!! 

登録は コチラから!

ライター
水田 真梨
カメラマン
千々和 恵
X Facebook

企業情報

パナソニック エナジー株式会社

パナソニック エナジー株式会社

<Mission / Vison/ Will> 私たちPanasonic ENERGYが果たすべき「使命」、将来の「展望」、 そしてそれを実現させるために不可欠な「意志」を下記のように定義しています。 ■Our Mission 幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現 ■Our Vison 未来を変えるエナジーになる ■Our Will 人類としてやるしかない 詳細については下記動画をご参照ください https://www.youtube.com/watch?v=2-7DppOHdpQ <事業内容> 一次電池(乾電池、マイクロ電池)、車載用リチウムイオン電池、小形二次電池、蓄電システム等の開発・製造・販売 <エナジー社から皆様へメッセージ> 幸せの追求と持続可能な環境が矛盾なく調和した社会の実現。 これが私たちパナソニックエナジーの使命です。 あらゆるものが電気になるこれからの時代におよそ一世紀磨き抜いた 電池の化学技術、生産技術に制御やソフトフェアなどのデジタル技術を かけあわせて進化させながら、 世界中に届けようとしています 地球環境の維持は待ったなしです。 これ以上見て見ぬふりすることはできません。 社員としてではなく、人類として、やるしかない。 心からそう思える全ての人が、私たちの仲間です。 意志こそが未来を変える無限のエナジー。 あなたの意思を、ぶつけてください。