[ NECで、はたらく ]今日よりも明日。できることが増えるたびに自分に自信がついてゆく

インタビュー

LabBase Media 編集部

[ NECで、はたらく ]今日よりも明日。できることが増えるたびに自分に自信がついてゆく

日本初の外資系合弁企業として1899年に設立されたNEC。 創業以来、120年以上にわたってテクノロジーで 社会に変革をもたらしてきました。 歴史を、未来をつくり続けるNECには多様な社員がいます。 今回、お話を伺ったのはバイオメトリクス研究所の渋谷恵さん。 NECの研究者としては少しめずらしい 文系から研究者になったという経歴を持つ渋谷さんが、 NECで働く理由を語ります。


自分の研究を ダイレクトに社会実装につなげる そして素敵な論文を書き続けたい


「憧れるのをやめましょう」──。
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝前、大谷翔平選手が発した言葉として有名ですね。


ちょっと前の私は、この言葉がどこか他人事のように感じていました。でも、いまなら真意がわかるような気がします。もう、〝憧れる側〟でいるのはやめよう。自分で自分の天井を決めない……。


こんなふうに思えるようになったのは、NECに入社後、自分なりに一つひとつの経験を積み重ねてきたからだと思います。


面接で胸に響いた「もっと夢を大きく」


正直、学生時代の私は自己肯定感が低いほうでした。そんな自分に少しでも自信をつけるために博士号を取得したかった。「博士」という学位があったら少しは箔がつくかな、なんて思っていたんです。


でも、博士課程に進むにも、当時の私はとにかくお金がなくて(笑)。とはいえ、奨学金を借りて大学院に通い続けても、私の場合は研究に打ち込めない気がしたんです。そこで、経済安定性を確保しようと就職の道を選びました。


ほかの研究者にはよく驚かれるのですが、私は文系出身です。


大学の専攻は心理学で、大学院でも社会心理学を研究していました。修士のころは「対面とオンライン上とのコミュニケーションの違い」といったテーマで実験をしていました。


そのため、就職するならシンクタンクなどの会社かなと思っていました。ところが、就職活動を続ける中、NECが理系・文系問わず、いろんな人が集まるアイディアソンのようなイベントを実施しているのを見つけ、参加してみたんです。しかも、私の専門を活かせるポジションの募集もあって、その後、研究者として採用していただきました。「文系でも研究者になれるんだ」とびっくりしたのを覚えています。


いまでも忘れられないのが、NECの最終面接です。


私が「入社後も、学会発表を積極的にしていきたいです」と言ったら、面接官が「もっと夢を大きく持って。海外の学会でもどんどん発表して、世界にはばたいてください」とおっしゃったんです。


当時、自分がそんな高みをめざせるとは思っていないし、そんな言葉をかけてもらったのも初めてだったので「私も夢を持っていいんだ」「世界と戦えるかもしれないんだ」と気持ちがたかぶった瞬間でした。


渋谷さん画像


入社後役立った学生時代の研究


入社すると、私以外の人はみんな理系で、博士号を取得した人が半数ほどいました。自分の研究についてすごく楽しそうに話す人ばかりだったのが、印象的でしたね。AIに関する「おすすめの本」などをいろいろ教わり、かなり勉強ができました。


また、入社して比較的すぐに社会心理学を生かせる場面も訪れました。そのころは新型コロナのパンデミック前で、東京オリンピック開催を控え「オリンピックが始まると、東京は混雑する」「通勤時、公共交通機関がストップする可能性がある」と言われていました。そのため、NECは世間に先立ってリモートワークを進める準備をしていました。


一方で、NECは当時、約90%の人が出社していたので、リモートワークが会社に与える影響については未知数でした。そこで、「在宅勤務が心身に与える影響」を調べる実験を、全社横断で行うことが決まり、実験の設計から効果測定までの一連の流れを私が担いました。この結果についてまとめたレポートは、情報処理学会にも採択していただき、やりがいを感じました。


一方で、課題だったのは、社会心理学についてアップデートしたいと感じた際に、社内に話せる相手がいなかったことです。なので、通っていた大学院のゼミに顔を出し、常にアンテナを高く立てるように心がけました。


研究職に就きながら博士号取得をめざす


実は、入社と同時に博士課程にも進んでいました。入社後はしばらく休学していたのですが、コロナ禍に大学院の授業がオンラインになったので、そのタイミングで一気に単位を取得しました。


NECは時間ごとに休みをとれる「時間休」やフレックスタイム制を導入しているので活用しました。単位をすべて取り終え、現在は論文をまとめて博士号を取得しようとしているところです。許可を得れば論文に会社の研究成果を使うこともできるので、研究職に就きながら博士号取得をめざすことは、決して不可能な道ではないと思います。


並行して、研究者としてもキャリアを積み重ねていきました。2020年には、生体情報からストレスを推定する研究チームに合流、ユーザーに適切なフィードバックをするようなシステムの構築をめざしました。


また、東北大学病院との共同研究で、医療現場の働き方改革プロジェクトも担いました。病院業務の実態調査です。


医師の作業をストップウォッチで計測する地道な調査を繰り返してみたら、医療文書の作成に時間がかかっていることがわかりました。私の調査結果をもとに、研究所と事業開発チームが連携しAIを搭載した電子カルテシステムの開発に成功しています。システムを用いた場合と、手入力した場合とでは、作成時間を平均47%削減することにつながりました。


TOEIC450点だけど33歳で単身留学へ


これは、いまでは笑い話になっているんですが……。以前から会社に留学制度があるというのは、ぼんやり知っていて、機会があれば行きたいと考えていました。ですが、まさか私が選ばれるとは思っていませんでした。
 
なぜなら、当時私はTOEICの点数が450点ほどしかなかったんです。もちろん、学生時代に留学経験もありません。それなのに、定期的に提出するキャリアレビューで、ずっと「海外志望」と書き続けていました。すると、ある日部長が「留学、挑戦してみる?」と声をかけてくれたんです。 留学にはTOEIC600点以上が要件なので、そこからはもう必死に勉強をしましたね。仲間には「450点でアプライしようとするなんて、ほんとに大丈夫?(笑)」なんて心配されたのも、現在ではいい思い出です(笑)。
 
留学先は、アメリカ・ヒューストンのライス大学でした。アメリカに降り立った第一印象は、道も建物も、人も話し声も、何もかもがとにかく大きい! エレベーターで会った知らない人に挨拶をしたり、突然、道行く人に着ている服を褒められたり……。


カルチャーショックを受けたというより、いろいろな違いが楽しいと感じました。


幸い、受け入れ先の研究室の教授は日本人でした。その方はマサチューセッツ工科大学で博士号を取った権威。だから、渡米前は「まったくついていけないのでは?」と不安でした。


でも実際には、英語の論文も書き上げましたし、あるとき、同じ研究室のアメリカ人学生が、私が作成した図を自身の研究資料に使ってくれました。その資料を見たとき「言語は劣っているけれど、アウトプットは認められた!」と、心の中でガッツポーズをしました。


もう憧れるのはやめて夢をずっと追い続けたい


私が取り組んでいる病院の働き方改革プロジェクトには、留学前からかかわっていました。留学前は医療現場の方とコミュニケーションをとると、ストレスを感じました。医師と研究者では立場や目線が違います。留学前の私はちょっとした対立や衝突に、うまく対処できない面があったんです。


けれども、留学を経て自身のマインドが大きく変わったように思います。たとえ知らない医療用語が出てきても、「教えてください」と素直に言える。反対に、AIについては、なるべくわかりやすく伝えられるようになりました。


留学で「相手と私は前提条件が違う」と身を持って学ぶことができたので、「そもそも、日本語だし」と気軽に構えられるようになったんです(笑)。


入社して間もないころ、「ダイバーシティコミュニケーション」という研修に参加したことがあります。講師の方に「目を閉じて、友達の名前を10人挙げてみてください」「その中に、外国人は何人いましたか?」と尋ねられ、ハッとしたんです。当時の私が上げた名前は日本人だけ。いかに日本人の中だけで生きているかに気づかされました。


一つひとつは小さな経験かもしれません。でも、「昨日はできなかったことが、今日はできた」という事実が、私に自信を与えてくれたのだと感じます。


今後の目標は自分の研究をダイレクトに社会実装につなげることと、素敵な論文を書き続けること。


実は、最初にお話ししたWBCは、留学先で観ていたんです。優勝した瞬間、心から感動しましたね。


私はもう〝憧れる〞のをやめました。20代で気づいていたらもっと人生が変わったかも……とも思うのですが、いま気づくことができて本当に良かった。これからも、どんどんチャレンジを続けていきます。


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