「地域の暮らしの中に入り、自ら課題を見つけに行く」──空き家に住み、地域の本質を掴むエンジニアが描く、テックとまちづくりの未来

インタビュー

LabBase Media 編集部

「地域の暮らしの中に入り、自ら課題を見つけに行く」──空き家に住み、地域の本質を掴むエンジニアが描く、テックとまちづくりの未来

地方が抱える課題に対し、テックコンサルティングで効果ある解決策を提供する株式会社地域科学研究所。大分県に本社を構えながら、東京の大手企業に全く引けを取らない高い技術力をもって良質なサービス提供を実現する。今回お話を伺ったのは、地方の空き家に住みながら働く「住みます社員制度」の第一号となったエンジニア・Aさん。現場に行き、自ら課題の芽を見つけ、地域の本質的な課題を掘り起こす。その挑戦的な働き方から見えてきたのは、AIでは代替できない「人と人」のエンジニアリングだった。 【株式会社地域科学研究所】 地方が抱える課題をテクノロジーの力で解決する公共イノベーション専門会社。AI・数理モデル・画像解析などの先端技術を駆使し、自治体の課題解決を通じて「豊かな地域社会づくり」に挑んでいる。それぞれの地域に合わせたソリューションを提供し、その実績は8,000件を超える。 (インタビュイープロフィール) 大学では流体力学を専攻し、農業用水路を活用した小水力発電装置の研究中に独学でアプリ開発を習得。地元の課題解決への思いから地域科学研究所に入社し、自治体向けアプリ開発や総合プラットフォームの運用保守を担当。現在は「住みます社員制度」第一号として、地方の空き家に住みながら、現場に飛び込み地域の本質的な課題を掘り起こすエンジニアとして活動中。

機械工学科から独学でアプリ開発へ


──まずは、これまでの経歴について教えてください。


大学では流体力学を専攻し、地域にある農業用水路を活用した小水力発電装置の開発と研究を行っていました。


その研究では、水流などのデータを発電装置に取り付けたSDカードに記録していたのですが、装置を水路から取り出してSDカードを抜いてパソコンに読み込ませる作業が非常に手間でした。そこで「Bluetoothで情報を飛ばし、リアルタイムにデータを取得できたら便利だな」と思ったことが、大学でアプリ開発を始めるきっかけとなりました。


──機械工学科でありながら、アプリ開発を学ばれたんですね。


はい。幸い大学は総合大学でいろいろな学部があったことから、寮生活の中で情報系学部の学生と交流する機会がありました。彼らに教えてもらいながら、ほぼ独学でアプリ開発のスキルを習得しました。「ソフトウェア開発の道に進みたい」と思うようになったのは、この経験が理由です。


──数ある企業の中から、地域科学研究所を選ばれた理由は何だったのでしょうか。

大きく二つの理由があります。一つは、地域課題への関心です。学生時代から地域のエネルギー課題について研究していましたし、実家に帰るたびに馴染みの店がなくなっていて、地元の衰退を目の当たりにしていたことから、「地元の課題を何とか解決したい」という思いがずっとありました。


二つ目は、地域科学研究所のアプローチに魅力を感じたことです。就活イベントで会社を知ったのですが、日本全国の200以上の市町村と業務を行うなかで、地元の自治体にも展開していると聞いて、「ここなら自分の夢を実現できる」と思いました。市役所に入って働くという選択肢も考えたのですが、県外で得た幅広い視点を活かし、他の自治体の事例を地元にフィードバックできると思ったのです。市役所で一つの自治体だけを相手に働くよりも、自治体の外から複数の事例を学んだほうが、地元に貢献できるのではないか。そう思って地域科学研究所を選びました。


自ら現場に飛び込む「住みます社員制度」という挑戦


──現在は「住みます社員制度」で赴任されているとのことですが、どのような制度なのでしょうか。


「住みます社員制度」は、私たち社員側から提案して、経営陣の了承を得て始まったボトムアップ型の制度です。現時点で私が第一号で、自治体の公式アプリ開発や総合プラットフォームの運用保守といった通常業務を行いながら、その地域に実際に住んで、現場の課題を直接掘り起こしていくという働き方です。


具体的には、農家さんとの間にコミュニティを作って、直接会って課題をヒアリングしたり、地元のまちづくり組織に足を運んで事業への参画を模索したりしています。昼休みには地域の食事処に行って、そこのご主人と話したり、また移住者同士のコミュニティと交流したりもしています。


──それは、いわゆるリモートワークとはどのように違うのでしょうか。


全然違いますね。リモートワークは場所を選ばず働けるという便利さがありますが、この制度の本質的な意義は「地域に住むことで、地元の方々と直に顔をあわせてのコミュニケーションがとれる」ことにあります。そうすることで、まだ地元の方々自身も気づいていない課題が見つかったり、私たちの強みであるデジタルを活かした解決策が浮かんだりすることがあります。


自治体から「こういう課題があるから来てください」と呼ばれて行くのではなく、現場に自ら飛び込んでいくことに大きな意味があると思っています。自ら手探りで、地元の同世代の農家を探し、連絡を取り、直接会って話を聞く。まちづくり組織のテナントに足を運んで、そこで何ができるか探る。そういった泥臭い活動を続けるなかで、本当の課題が見えてくると感じています。


──現在は、どのような環境で生活されているのですか。


ちょうどいい空き家を見つけて、そこに住んでいます。空いていた知人の実家を借りたのですが、最初は電気も止まっていて、電力会社に連絡するところから始まりました。冬はとても寒い地域なので最近暖房を調達したのですが、本当に「開拓」という感じで日々働いています。


この生活を通じて気づいたことがあります。大分の市街地にいた頃は、夜中でも10分圏内のコンビニで欲しいものが何でも手に入る環境でした。今はそれに比べて夜は真っ暗で空いている店もなく、不便といえば不便です。しかしそういう暮らしをするなかで「本当に必要なものは実は最小限でいいんじゃないか」と思うようになりました。


「住みます社員制度」が始まってから、スマホを触る時間やSNSを見る時間が減った代わりに、人と話す時間が増えました。また近所の方から野菜をいただいたり、地域の方と触れ合ったりする中で、人同士のつながりの豊かさを感じるようになりました。


人と人が築く信頼関係こそがエンジニアの力


──なぜ、そこまで地域科学研究所では「現場」にこだわるのでしょうか。


それは「地方で働くエンジニア」が価値を生み出し、自分自身が成長するには、現場を知ることが何より大切だからです。地方で働く私たちのようなエンジニアが仕事を円滑に進めていくには、最先端のAIの知識や高度なプログラミング技術といった「ハードスキル」よりも、人と人とのコミュニケーションや、信頼関係を築く力といった「ソフトスキル」が求められます。私はそのソフトスキルこそが、最終的にはこれからの時代に活躍するエンジニアの力となり、新しいサービス開発にも繋がると考えています。


さらなるAIの進化によって、知識を探したり組み合わせたり、情報を分析するような仕事は、コンピュータに取って代わられる可能性が大いにあります。しかし人が現場に行って、その場所の空気を感じたり、初対面の人たちと信頼関係を築いたりすることは、いくらAIが進歩しても代替できません。


大都市圏で働くエンジニアは環境が整備されており、ハードスキルを身につけやすいと思いますが、その一方で「ひとつの仕事を最初から最後まですべて自分が担当する」機会は少なく、プロセスの一部に関わることがほとんどだと思います。しかし地方では、そもそもテックに精通したエンジニアの数自体が都市部に比べて圧倒的に少なく、必然的に「仕事全体」に関わることになります。現場に行くことでエンジニアとしてはもちろん、ビジネスパーソンとしても成長できることを実感しています。


──「呼ばれる前に自ら行く」ことに意味があるわけですね。


その通りです。自治体から相談を受けてエンジニアが訪問する場合、基本的には月に1回ぐらい役所を訪問し、あとはオンラインなども使ってヒアリングしながら、システムを構築するのが普通だと思います。しかしそのやり方では、実際にシステムを使う住民の方々などの声を直接聞くことはできません。


例えば以前、ある自治体から「耕作放棄地をなんとかしたい」という相談が寄せられたことがありました。それを受けて社内で話し合い、「耕作放棄地をネット上に公開し、希望する誰かに使ってもらえるテックサービスがあったらいいのではないか」というアイディアが生まれたのですが、実際に現地の畑に行ってみると、農業用の道路が十分に通っておらず、「誰かの畑をまたいで通らないと使えない」などの理由があり、サービスの実現はできませんでした。そういうリアルな状況を知らずに、社内でいくらミーティングしても、本当の「正解」には決してたどり着けません。
農業に限らず、現場を見たこともないエンジニアがテックサービスを考えても、現実とかけ離れたものができてしまう可能性は大いにあります。だからこそ「呼ばれる前」に現地を知り、体感し、人的なつながりを作っておくことが大切になるのです。


求めるのは、わくわくする体験を生み出せる人


──地域科学研究所では、どのような人財を求めていますか。


何よりも、主体的に物事を進められる人です。失敗してもチャレンジを続けられる推進力がある人。前向きな思考を持ち、わくわくさせるような体験を作っていける人。真面目すぎず、既存のやり方に執着せず、新しいことにチャレンジできる挑戦的な姿勢を持つ人が向いていると思います。


そして何より、「現場に行くこと」を楽しめる人です。AIが生成する情報に満足せず、リアルな現実を見てゼロからイチを生み出せる人。そういう人と一緒に働きたいですね。


──社内のエンジニア文化についても教えてください。


技術的なレベルの高さはもちろんですが、学習意欲の高さが顕著です。会社の制度として学びをサポートする体制が整っていますし、業務内外で自主的にシステム開発を行う社員が多いです。余暇時間を使って新しい技術を学び、それを会社のサービスにフィードバックする文化があります。お互いが高め合う相乗効果のある雰囲気ですね。


──地方での生活に、不安を感じる学生さんもいらっしゃるかもしれません。


東京や京都にも事務所があるので、都会で暮らしながら地方にアプローチする働き方も可能です。実際、関東圏や関西圏の大学から入社する社員も多数います。田舎暮らし未経験者でも、問題なく活躍できている実績がありますので、心配はいりません。


私自身、今は子供が生まれて、妻と子供と一緒に地方で生活しています。地方での子育てにも魅力を感じており、都会と地方、それぞれに良さがあると思っています。今後の拠点については、正直まだ悩んでいるところです。人生にいろんな選択肢を持てること自体が、この会社の良さだと思います。


──最後に、就活中の学生に向けてメッセージをお願いします。


地域科学研究所では、年齢や学歴で行動が制限されることはありません。1年目から現場に入って活躍することもできますし、着実に知識と経験を重ねてキャリアを形成することもできます。個人の努力を後押しする文化が根付いていて、制度やサポートも充実しています。


都会では得られない体験や、大企業に劣らない成長環境がここにはあります。積極的に現場に飛び込む勇気、失敗を恐れずチャレンジする姿勢、そして何より「わくわくする体験を作りたい」という思い。そういうものを持った人と、一緒に新しいまちづくりにチャレンジしたいです。


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編集後記


空き家に住み、電気を引くところから始める。現場に自ら飛び込み、農家や地域の方々と直接対話する。この働き方は、一見すると非効率に見えるかもしれない。しかし、その泥臭い活動の中にこそ、AIでは代替できない本質的な価値がある。
同社は「テクノロジードリブン」を掲げながらも、最も重視するのは「人と人」のコミュニケーションだ。この一見矛盾するようなアプローチこそが、地域科学研究所の強みであり、Aさんが体現する「住みます社員制度」の真髄なのだろう。
大都市圏での華やかなキャリアに疑問を感じている“尖った”エンジニアがいるなら、ぜひ地域科学研究所の門を叩いてみてほしい。そこには、誰も踏み入れたことのない新しいエンジニアリングの可能性が広がっている。

ライター
五十嵐 裕樹
カメラマン
先方 提供
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企業情報

株式会社地域科学研究所

【地域の“今”をテクノロジーで変革し、未来を動かす】 私たち地域科学研究所は、AI・数理モデル・画像解析などの先端ICT技術を駆使し、自治体の課題解決を通じて「豊かな地域社会づくり」に挑んでいます。 目指すのは、大都市だけでなく地方もともに繁栄し、誰もが自分らしく生きられる社会。 地方には、人口減少や財政難、働き手不足など、いくつもの構造的な課題があります。 それでも、暮らしを支える行政サービスを止めることはできません。 どうすれば、限られた資源でより良いまちをつくれるのか――その答えを、データとテクノロジーで導き出すのが私たちの仕事です。 長年蓄積された予算データをもとに未来を描く財政シミュレーション。 衛星画像を解析し、地域の変化を読み解く画像技術。 社会の動きを再現する数理モデル。 これらを組み合わせ、地方行政の意思決定を支えています。 テクノロジーだけでは、社会は変わりません。 価値を見出し、活かす人の「創造力」こそが変化を生む。 だからこそ地域科学研究所には、技術を社会実装しながら成長できる環境があります。 「研究してきた技術を、誰かのために使いたい」 「社会の仕組みを変える仕事がしたい」 そんな思いを持つあなたへ。 次の挑戦の舞台は、地域の未来です。 私たちと一緒に、その未来をデザインしませんか。