
「機械科卒のほかの学生とは違うことをしたい」と思った
――まずは、お二人のプロフィールについてお聞かせください。大学時代はどのように過ごしていましたか。
鷲崎:慶應義塾大学大学院の流体研究室で、粘性流体の流れについて研究していました。機械科のなかでもかなり厳しい学部だったので、平日は泊まり込みで研究することも多々ありましたね。凍結面の形状に関する学位をとって、修士論文は粘弾性流体の解析について書きました。東洋製罐グループに入社後も、九州大学大学院に通って圧縮のカップの形成に関する研究で学位を取得しました。
中村:私は小さいときからものづくりが大好きで、工業高校の機械科で勉強しました。大学は東京工業大学の工学部4類という機械系の学科に進学し、炭素繊維に関する研究をしていました。大学卒業後は大学院に進学し、炭素繊維と非破壊検査の研究をしていました。修士では、渦電流探傷という電気を使った検査方法などをやっていましたね。
――中村さんは就職活動で、どのような軸で企業選びをされたのですか。
中村:一般的に私のような炭素繊維を研究した学生は、航空業界や繊維メーカーに就職するケースがほとんどですが、私自身「他の人と同じではなく違う分野に挑戦してみたい」という思いが強く、機械系の学生を求める食品メーカーを志望していました。
そんななか、「食品を包む容器を作る会社がある」ということを指導教員の知り合いに教えてもらい、東洋製罐グループの存在を知り、研究所を見せていただけることになったんです。
実際に綜合研究所に入ると、雰囲気や設備の配置が大学の研究室と似ていて、大学に近いかたちで研究できるのではないかと感じました。雰囲気の良さはもちろん、「他の人との差別化も図れて、これまでの研究を生かせる」と感じて、東洋製罐グループのみに焦点を当てて就活しました。
――再びお二人に質問です。東洋製罐では、どのような業務に携わってきたのでしょうか。
鷲崎:缶詰の接着タブ、耐熱圧ペットボトル、ペットボトルのキャップの圧縮形成の研究開発を10年ほどやっていました。その後は解析の部署に異動し、缶蓋の強度解析や流体の計算などを行いました。異動当初はまだまだニッチなジャンルで苦労も多かったのですが、缶を巻き締める機械で缶内部の空気を不活性ガスで置換する解析をした際に、自分の解析している技術がCO2の排出量を削減できるということが明らかになって、活用されている実感がわいてきました。今では多くのビール会社に使用されています。
他にもユニークなものでいくと「液だれ防止ノズル」でしょうか。飲料メーカーより依頼いただいて開発したのですが、液だれって非常に難しいんですよね。何度も何度も協議を重ねて、環状溝を緻密に設定してなんとか液だれを防止することができました。
中村:入社してすぐは主に新規事業に関する業務に携わっていましたが、現在は、煩雑な操作が必要な業務を機械化・自動化するためのプログラムを書いたりシミュレーションしたりといった「機械学習」の業務に従事しています。
具体的には、ホールディングス全体のさまざまな部署から相談が来て、実際に困っていることをヒアリングします。その中で機械学習やプログラムを活用することで解決できるとなった事案に関しては詳細な検討を進めていき、アプローチしていきます。
生産者や消費者に愛されることが何よりのやりがい

――続いて、東洋製罐グループが提供しているプロダクトやサービスについてお伺いします。たくさんあるとは思いますが、東洋製罐グループの代表的な技術について教えてください。
鷲崎:東洋製罐グループでは、食べ物や飲み物を包む金属製品やプラスチック製品、エアゾール製品などの製造や販売を行っています。日常生活を支える各種包装容器の製造販売を中心に事業を展開しています。
一番分かりやすいものでいえば、チューハイの缶の外側にたくさんついている「ベコベコ」ではないでしょうか。あのベコベコは本来、缶コーヒーのようなスチール缶の強度を増し、軽量化を実現する技術でした。逆にこれを缶チューハイの様なアルミ缶に適用することで、フタを開ける際の形状変化や「クシャッ」という音が良いと評価され、今では国内大手の飲料メーカーで使用される技術へと進化しました。
――誰もが知る技術を世の中に提供することを通し、やりがいに感じることはどんなことですか。
鷲崎:自分たちの関わった商品がコンビニやスーパーに並んでいるのを見るのはうれしいですね。また、お客さまからいただく声は何よりもやりがいにつながります。お客さまに満足いただくためには、性能だけではなく値段などさまざまな課題がありますが、いかによいものを作るか常に考え、自社だけではなく取引先とチームになって団結することに仕事の面白さが詰まっていると思います。
中村:私が今取り組んでいる機械学習は、まだまだ直接容器に関わる業務ではなく、どちらかというと生産現場で働く人々を助けるための業務です。世の中には無数の容器があり、その容器を作っている方もたくさんいらっしゃいます。
東洋製罐グループは、プログラムを作る会社でも作業効率アップのための解決策を出すコンサルタント会社でもありませんが、包装容器を扱うメーカーならではの視点で、生産工程を少しでもシンプルにできるよう見直したり、人の手を介さずにできる業務を増やしたりするお手伝いをしています。私たちが行う機械学習で、生産者さんの行う業務が少しでも楽になるようなサポートができれば、何よりうれしいですね。
専門家もいないなか、独学で機械学習を取り入れる

――東洋製罐グループは、歴史ある企業というイメージが強いですが、機械学習など新しいことにも積極的に挑戦されている点が印象的です。いつ頃からそのような雰囲気になったのですか。
鷲崎:会社の編成などによる変化はもちろんありますが、研究所に関しては基本的にはあまり変わりありません。根底にある思いは「よいものを作ること」なので、そのために必要あらば新しい技術も習得しますし、機械学習のように勉強しながら進めていくこともあります。
研究所にいるメンバーの分野もさまざまです。機械はもちろん、金属や樹脂、プラスチックの材料や分析、医療関係を専門にしているメンバーもいます。中村さんのように、入社後新たなスキルを身につけている人も多く、いろんな分野が広がりを見せていますね。
――中村さんは、機械学習の勉強などは学生時代からされていたのですか。
中村:いえ、入社2年目で機械学習のプロジェクトにジョインするまではやったことのない分野でした。そもそも、機械学習が企業に取り入れられ始めたのが2016年ごろなので、専門家自体はもちろん、経験者は社内にほとんどいませんでした。プログラミングなどもやったことがなかったので、全て独学で習得しましたね。
機械学習プログラムの実装には、Pythonや「C#」を用いて開発をしています。C#は現場の人に見てもらえる、簡単に操作できる画面のあるプログラムを作りやすいため、現場の人にも予測結果やどのように作業効率が上がるかを見てもらえるんです。ときには社内の制約条件にあったかたちでプログラムを作り直すこともあります。
失敗もポジティブに捉え、一歩ずつ前へ

――お二人が考える、研究所で活躍している人の共通点はありますか。また、どんな方と一緒にお仕事したいですか。
鷲崎:私たちが行う研究は、容器を作る生産者さんや、その容器を利用する人々の生活をより便利にしたり、快適にしたりするものです。だからこそ、相手の視点からものごとを見たり考えたりできる技術者が求められます。一つの考えに固執するのではなく、第三者視点を大切にしている人は活躍しているイメージがありますね。
中村:研究や開発など、私たちの行う仕事はすごく地道で成功までの道のりは決して短いものではありません。たとえ失敗しても「次はどうしたらいいかな?」「どうすればうまくいくかな?」と前向きに考えることはとても大切です。失敗を怖がらず、切り替えて前に進める人はきっと活躍できるでしょう。
――ありがとうございます。では最後に、就職を考えている理系学生にメッセージをお願いします。
鷲崎:仕事では、職場の雰囲気が一番大切だと思います。研究所メンバーは家族のような一面もあれば、しっかりと仕事を任せてもらえる雰囲気もあるのでメリハリを持って働けます。あとは、メンバー全員が個人個人の成長を気にかけてくれるので、新入社員の方も安心して入社していただけると思います。
中村:就活って、いろんな情報が出回っているので自分にあった企業を探すのは大変だと思います。でも、本当に大切な情報は表に出ないことのほうが多いので、目の前の情報に惑わされないことが大切です。
私が就活をした際には、食品メーカーに絞っていたのですが、もっといろんな業界を見てみてもよかったのかなって。就活生の皆さんは、気負わずいろんな分野の企業を探してみてはどうでしょうか。
東洋製罐グループは新しいことにもどんどんチャレンジできるので、大手の安心感と挑戦環境が両方ある場所を求める学生にはぴったりだと思います。
東洋製罐グループホールディングス株式会社の 「企業情報」をチェック!
※所属・内容等は取材当時のものです。
編集後記
普段何気なく使っているビールやチューハイの缶など、日常生活を支える包装容器の製造販売を行う東洋製罐グループ。歴史ある大企業ながらもシミュレーション、IoTや機械学習など革新的なサービスに取り組む背景には、「よりよいものづくり」をしたいという熱い思いがある。世の中をよくするサービスを作りたい、という学生にはぴったりの環境ではないだろうか。