損害保険は「理系×金融」の隠れた最前線!? 三井住友海上での理系人財の活躍とは

インタビュー

LabBase Media 編集部

損害保険は「理系×金融」の隠れた最前線!? 三井住友海上での理系人財の活躍とは

理系と縁遠く思われがちな損害保険業界。実際には災害モデルの検討やリスク評価に基づく商品開発、また全社員にデジタルスキルを育成させる方針もあり、理系の素養・専門性を備えた人材が部門を問わず求められている。三井住友海上火災保険株式会社で若手ながら理系知識を生かして活躍する3人に話を伺った。 三井住友海上火災保険株式会社: 世界屈指の「MS&ADインシュアランスグループ」の一員として、損害保険業界をリードしてきた三井住友海上。世界中のあらゆるリスクと向き合い、挑戦を支えてきました。損害保険の提供価値は「事故発生時の補償」だけでなく、「事故を予測し発生させない」「事故発生時の影響最小化」に今後ますます注力していきます。 社会課題の解決を実現するイノベーション企業を目指す当社で、あなたの力を発揮してみませんか?

「人」の魅力が入社の決め手



――皆さんの自己紹介と、入社までの経緯をお話しいただけますか。

池田:学部で経営工学を、大学院では人間工学を専攻していました。ヒューマンエラーと安全マネジメントを研究し、企業の現場でのデータ収集・工学的分析で課題解決をサポートすることも。個人的には工場が好きだったのでメーカーへの就職を考えていましたが、友人の付き添いがきっかけで金融業界を調べ、ヒューマンエラーが損害保険の鍵であり、仕事を通じて永遠に関わっていくことができる業界として興味を持つようになりました。

最後までメーカーへの就活も続けましたが、最終的に三井住友海上を選んだ決め手は「人」でした。 一緒に面接を受けた学生は、ライバルであると同時に将来同期の可能性もありますよね。勇気を出して話しかけ、食事に行ったりするうち「 この人たちと一緒に仕事したい」と思いました。

金谷:私は情報理工学科で情報処理を学びました。周囲の助言もあり、「多くの業界を知るチャンス」と業界を絞らず就活をするうちに「 グローバルで、社員に魅力があり、仕事に誇りをもてる会社で働きたい」という就活の軸が定まりました。

総合商社なども考えていたところ、お恥ずかしい話ですが三井住友海上の面接で身だしなみを注意されることがありました。そのことが 「自分のことをしっかり考えてくれている」とグッときて。最終面接後に当時の人事部長が「ぜひ当社に」とすごい目力で言ってくださったこともあり、「ここだ」と決意しました。

中塚:大学院で脳神経手術ロボットの開発・設計プロジェクトに参加し、脳腫瘍の切除用の繊細で効果的なロボット作りに取り組みました。就活もメーカーなどを見ていましたが、次第に専門知識をそのまま生かすより、理系の考え方を生かせる仕事がしたいと考えるように。

そのときに「アクチュアリー」という損害保険分野で事故・災害の発生頻度や損害額などを統計的に分析して商品開発を行う専門職の存在を知りました。三井住友海上では医学部の学生も採用していると知り、 活躍されている方のお話を聞いて「楽しく働けそうだ」と思ったのが決め手でした。


商品開発、海外現地法人 、IT推進。三者三様の「理系」人材の働き方



――続いて皆さんの所属と業務内容を教えてください。

中塚:私は入社3年目で、新種保険部の責任保険チームの所属です。万が一顧客企業が第三者に迷惑をかけてしまった際、その企業は賠償金を支払う義務を負うことになります。そのリスクを補てんする賠償責任保険という分野で保険の商品開発と引受を担っています。

保険は基本的には約款という契約書から成り立っていて、どんなときにどれくらい保険金を払うかが決まっています。保険の商品開発においては、その約款に加えて、申し込みに必要な申込書やシステム、さらには保険料などさまざまな要素を決める必要がありますが、なかでも、お客さまが支払う保険料の金額設定をするときにアクチュアリーが専門職として真価を発揮します。また、開発した保険商品を実際に販売し始めた際に引受可能かを審査する業務も担当します。

事故が多ければリスク評価も比較的簡単ですが、事故そのものが少ないとリスクの有無やその大小の評価は非常に難しいんです。リスク評価専門の関連企業と提携したり、自分でモデルや仮説を立てたりと方法はさまざまですが 業務には常に理系的な思考能力が必要で、 統計学や確率論の知識を総動員しています。

金谷:私は入社7年目で、2020年4月から中国現地法人の広東支店に出向中です。中国本土に進出している、または今後進出予定の日系企業様向けに日本語と中国語を駆使してさまざまな提案を行っています。

当社には手厚い海外研修制度があり、手を挙げればチャレンジできます。入社直後は個人および中小企業様向けの保険営業をしていましたが、4年目に研修でインドネシアのジャカルタの現地法人に1週間、翌年には語学研修と事業研修で1年間中国に派遣されて今に至ります。

四川省、重慶市や湖南省を含む華南地域が担当エリアで、火災保険など天災時に財産を守る保険が主力商品ですが、賠償責任保険の販売にも注力しています。

並行して、デジタライゼーションの取り組みも強化中。もはや日本をしのぐ 中国のデジタル技術を本社でも活用できないか模索するのも駐在員としての役割だと意気込んでいます。当社は「CSV」×「DX」で社会課題を解決することを目指していますから、大学時代に専攻してきた情報関連の知識が生きる場面も多くあります。デジタル分野に強みがあることは、営業職として非常に武器になりますね。


池田:私は入社8年目で、会社としてのIT戦略やシステム部門の方針の検討などを担当するIT推進部のIT企画チームに所属しています。新システム構築時には複数社から提案された見積もり内容を確認し、希望のサービスが適切な価格で提供されているかを検討することもあります。 ITの知識やExcel関数など大学時代に身につけた数値分析のスキルを活用し、提案内容をうのみにせず、 維持費も含めた中長期的な視点でコスト変動の予想を立てて分析・確認しています。

デジタライゼーションも担当しており、2020年2月にはAIを活用したMS1 Brainという代理店業務の支援システムをリリース。今年4月には コロナ禍での非対面の手続きを行うリモート版もリリースしました。


「もう一回就活しても入社したい」やりがいに満ちた環境



――働いていてやりがいを感じるのはどんなときでしょう。

金谷:駐在員として現地法人社員と切磋琢磨する中で、日本での営業経験を現地スタッフに伝えグローバルな強い会社を作る役目は責任重大ですが、そのぶん挑戦のしがいがあります。

また、保険は万が一のときのためのものなので、当社を信頼して契約してくださっているはず。 その信頼に応えられるがどうかが自分の働きに任されているということは大きなやりがいです。 お客さま自身が気づいてすらいなかった問題を解決できたときは喜びもひとしおです。

私はもう一回就活をしていろいろな会社を見ても、最後は当社に入りたいと思うくらい良い会社だと思っているので、 この会社で働けていることがいま本当に幸せです。

中塚:当社には挑戦をさせてくれる社風があります。 周りの人を巻き込んだ改善アイデアに取り組み成功したときや「昨日できなかったことが今日できた」というときには成長を実感できます。

商品の中には、開発時にはそもそも事故自体が少ないものや、新しいデータがないものもありますが、だからこそ、事件の発生頻度や被害内容に関する情報をできる限り集めて、予測して「これくらいの保険料を設定すれば収支相当するだろう」と設計することが必要です。商品を売り出したときに開発時の想定通りの収入と支出になったときは達成感があります。

池田「人に恵まれている」と強く感じます。入社時の上司は今でも定期的に「最近どう?」と気にかけてくださいます。指導担当でお世話になった先輩がシンガポール駐在のときには同期と遊びに行ったことも。最近の異動で、私がこの先輩にちょっとしたことを教える立場になることもあり、これから 会社に自分の経験を還元していきたいと考えています。


若手のうちから挑戦できる。変化を恐れず前向きな姿勢で



――保険業界について入社後に感じたギャップや、「こんな専門性の人が活躍している」という傾向はありますか?

中塚:「厳しくお堅い仕事」というイメージがありましたが、若手のころからいろいろなことに挑戦できるという良い意味でのギャップがありました。農業経済、自然災害、数学系に工学系と 理系のあらゆる分野の人が活躍していますが、過去の研究内容をそのまま業務に生かしている人と、違う分野で応用している人の2パターンに分かれます。

個人的なキーワードは「温故知新」。現在の自分の業務がなぜそのように行われているのかという 基礎的なことをきちんと理解したうえで新たな付加価値を提供できるような人が活躍していますし、そんな人と一緒に働きたいですね。

金谷:なんといっても、早くから海外で働けること。周りを見ても同年代の駐在の方は少ないので、若手のうちから海外で駐在ができるのも当社の魅力の一つだと思います。営業でいろいろな業界のお客さまとお話しできるのも非常に面白いですよ。活躍しているのは、いろいろなことに好奇心、探求心を持っている人だと思いますね。

池田:私は入社後6年間、MS&ADシステムズという関連会社への配属で周囲に文系の人が多かったので、本社に戻った時に「理系の人材が多い」と感じました。IT推進部や、デジタル戦略部、最近創設されたビジネスイノベーション部などは 理系が4割くらい。IT部門のデータサイエンティスト職には一定の分析スキルが必要ですが、 理系の人は楽しそうに分析をしている印象があります。

とはいえ、理系の知識があれば即活躍できるというわけではなく、状況をきちんと把握したうえで自分の知見をどう活用できるか考える思考が大事だと思います。保険商品の内容や収支状況は日々変動しますし、コロナ禍でニーズも一変しました。ITは技術発展も速く、1年前の情報が使えないということも。だから、現時点では知識がなくても、 探求心をもって楽しんで情報収集ができ、変化を恐れず改善をしていくことができる人なら活躍のチャンスはあると思います。


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※所属・内容等は取材当時のものです。


編集後記


理系人材が活躍している印象のなかった保険業界のイメージが、3人のお話を伺うことで一変した。アクチュアリーとしてリスクの発生確率を分析する数理・統計のプロフェッショナルはもちろん、そもそもどんなリスクがありうるかを正確に評価するうえで、顧客企業の取り扱う最先端技術などを正確に理解し、サイバー技術、自然災害、気候変動などの各種リスク要因を評価できる幅広い分野の理系人材が必要とされることだろう。

全員が「人」の魅力に言及し、チャレンジすること、価値提供に意欲的であることの重要さを語っていたのも印象的だ。仕事を通じて未知のことにもチャレンジし自分を成長させたいと考える理系学生は、三井住友海上火災保険でこれまでの研究で身に付けた専門知識や理系的な思考能力を生かした働き方ができないか調べてみてはどうだろうか。

ライター
三輪 愛
カメラマン
編集 部
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企業情報

三井住友海上火災保険株式会社

三井住友海上火災保険株式会社

【インフラのインフラ】 世界で8番目の規模を誇る「MS&ADグループ」で中核を担う三井住友海上。 激動の現代、日本および世界各国の発展を支えていくという使命に燃えて、人や企業が直面する様々なリスクと向き合ってきました。「宇宙保険」をはじめ、「サイバー保険」「臨床研究保険」「ドローン保険」「ビットコイン盗難保険」など、あらゆる新技術の誕生を支えてきた損害保険は、すべての産業を根底から支える「インフラのインフラ」として、これからもすべての挑戦を支え続けていきます。 【グローバリゼーション】 欧州、アジア、南米と世界中49か国に展開し、常に事業領域を拡大しています。また、2017年にはシンガポール最大手のファーストキャピタル社を買収し、ASEANでNo.1の地位はより強固に。さらに、アフリカやロシアにおいて、現地大手保険会社と戦略パートナーシップ契約を締結し、海外へ進出する日本企業を支援サービスの強化に注力しています。 Fortune500にランクインし、スペシャルティ保険等に強みを持つ米国大手保険会社W.R.Berkley Corporationと、2025年に提携・協力関係を結ぶとともに、同社に約5,650 億円を投資。新種保険(スペシャルティ保険)にかかる協業機会を追求し、更なる企業価値向上に取り組んでいます。 【「Risk」×「Technology」 「RisTech(リステック)」の推進】 ビッグデータと分析アルゴリズムを活用して、社会や企業の課題解決を図る「RisTech」取組を推進しています。データサイエンティストが、保険契約や事故データに加え、取引先企業から提供されたデータ、外部に流通している統計データも活用しリスク分析や予測モデルの開発、提供を行うことにより、企業の枠組みを超えた社会との共通価値創造を目指しています。