第一印象は「提案に前向きに応えてくれる会社」

――学生時代の研究や就職活動についてお聞かせください。
樹脂など有機物の物性について、とりわけ強誘電体という特殊な材料を使った不揮発性メモリの研究をしました。メモリの書き換えを行うごとに特性が下がるという大きな課題があり、結晶構造を評価してメカニズムを探っていたんです。とても面白い研究テーマだったのでそれを生かせる企業で働きたいと思い、就活では半導体デバイス開発のような小さな素子を扱う総合電機メーカーなどを検討しました。
パナソニック インダストリー株式会社の営業として勤めていた先輩にも社風などを尋ねたところ、「人事部に詳しく聞いてみるよ」と言ってくれて、そこから学生数人向けに見学会を実施してくれることに。提案を前向きにくみ取り、こちらの意欲に応えてくれる会社だ、と非常に好印象でした。採用担当者からも責任感の強さが感じられ、地に足をつけて真面目に働きたい自分に合いそうだと思えたことが決め手になりました。
――入社から現在まで、どのような業務を担当してきましたか?
入社から昨年までは光関係の半導体開発に関わりました。プロジェクターなどに使う特殊なレーザーを出すモジュールも開発し、材料開発や結晶構造の分析なども担当しました。
さらに、レーザー自体の応用にも携わりました。アプリや小さなモジュールの照明関係でのレーザー応用の検討では、モジュールに組み込んだ際の経時変化などの評価を担当。非常に細くて鋭い光というレーザーの特性を生かした物の加工の領域では、事業化を前進させることができ、グループ会社にプロジェクトを移管するに至りました。こうした業務移管は自分たちの研究の形が見えてきた証しなので、とてもうれしい大きな区切りです。
現在は、当社のACサーボモータの制御などに使う光学モジュールの開発に取り組んでいます。ACサーボモータはあらゆる装置や機械に使われるモータで、特に高精度な応答が求められる半導体装置やロボットなどの産業用機器に需要があります。
学生時代の研究経験と物理の基礎知識が下支えに

――研究開発の中で、能崎さんが果たす役割について教えてください。
昨年までの光半導体開発での主な役割は、レーザーを使う装置の材料として使われる結晶の研究です。肉眼では見えないものを分析・評価し、起きている現象を長期間かけて緻密に整理することで、最終的に装置開発につながります。実際にモジュールを動かした結果から「内部で結晶にこういう現象が起きているのでは」と仮説を立て、論証し、その結果をフィードバックして研究を進めることも多いです。
時には、材料からモジュールへの移行過程で緻密な流体設計が必要になるなど、業務が自分のスキルの範囲を超えるケースもあり、プロジェクトの周辺の人たちと協力する機会も増えています。
――仕事に必要な高い専門知識や技術は、どう習得してきたのでしょうか。
物性の研究室での学びは現在の業務に直接生かされていますし、学生時代に体系的に身につけた電磁気学や電子回路などの基礎知識も下支えになっています。私は学生時代から物の成り立ちやメカニズムを考えることが好きで、仕事でも「なぜモジュール化したらこの出力や明るさになるのか」といった興味は尽きません。仮説に対し論理的に調査や情報収集を行い、チームで共通理解に合意しながらプロジェクトを進めるという評価のプロセスには、長く慣れ親しんでいると思います。
新たなスキルは社内外のセミナーで学ぶ他、先輩から教えてもらいやすい環境もあり、責任感を持って周りをサポートする企業文化を感じます。当社は専門性の高い人材が多く、仕事で悩んでも誰かに話せば巡り巡ってエキスパートにたどり着けるなど、横のつながりの広さも知識習得に役立っています。
――最終的に事業化・商品化を目指す研究職として、意識していることはありますか?
一つは、研究開発部門の独自性を他部門の人に分かりやすい形で提示すること。技術開発を追求していると視野が狭くなり、目的を見失うのは研究者にありがちです。定期的に顧客視点に立ち返り、「この研究が成功したら世界のここが変わる」というポイントを説明できるよう意識しています。
もう一つは、事業部との連携です。お客さまのリアルな課題と直接向き合う事業部と技術本部が連携することで、アウトプットの質を高めることができます。具体的には、ただ商品化を目指すだけでなく量産性まで加味した構造を提案するなど、事業部と技術本部の二つの視点に立ち、目的やアウトプットを明確にしてプロジェクトに臨んでいます。
BtoBならではの「共創」は研究開発の喜び

――パナソニックグループ全体が持つBtoC事業のノウハウは、パナソニック インダストリー株式会社のBtoB事業にどう生かされていますか?
技術を広範囲に広げながら手探りで進めるBtoC事業と、技術を蓄積しながら着実にプロジェクトを進めるBtoB事業とでは、アプローチの方法が異なります。そのため、BtoCならではの技術の幅の広さや技術的な飛躍の経験は、BtoBのメリットになるんです。
現在のBtoBのチームにはBlu-rayの光ピックアップの経験を持つメンバーがいて、その知見からACサーボモータに使える技術を提案するなど、幅広い技術を持ち、それを生かす場があることが当社の強みだと感じます。
お客さまとのシビアな折衝も多いBtoBの世界ですが、それゆえにパートナーとして一緒に作り出すという「共創感」があります。お客さまの課題意識をしっかりくみ取ったものを作れるのは、BtoBならではの喜びです。そのためには信頼や実績が前提とされるため、愚直な仕事が報われることもやりがいですね。
――技術者の目線で、「技術者に求められる資質」は何でしょうか。
好奇心が重要だと思っています。例えば、知らないことを社内に聞いてまわることも、昔の経験を生かせる場面を見つけることも、好奇心を持ってアンテナを広げてこそできること。仕事に直接関係ないことにも関心を持つ資質は、変化の多い現代の技術者にますます求められるはずです。
当社の技術者には、好奇心のベクトルを上下に広げることが求められます。自分が担当するのが1部品の1要素技術であっても、その技術がどう使われ、その部品が世の中で何に役立って社会がどう変わるか、といった構造全体に目を向けるということです。上流から下流まで視野を広げると、技術の深掘りも可能になります。
――技術責任者としての今後のビジョンをお聞かせください。
中長期的には、新たな事業を軌道に乗せ、当社の新しい軸を作ることを目標としています。メカニズム好きの技術者としてサイエンス寄りの興味も尽きないので、サイエンスとエンジニアリングの境界を行き来するような新しい原理が入ったデバイスの領域を形にするなど、次の時代のための種まきもしていきたいです。
技術者の「好奇心」が新たな価値を生み出す

――パナソニックグループには共通の行動指針「PGC」があります。PGCの8項目の中で、能崎さんが特に大切にしている項目を教えてください。
自分にとって「価値共有」はもっと磨いていきたい部分です。完全な一枚岩というより、「チームに共通する価値はこれ」とメンバーに明示できるようになりたいと思っています。
現在担当しているプロジェクトでは、光学、回路、制御、AI画像処理など、横断的な分野の技術者が一つのことに取り組んでいます。専門分野が違えば常識も見えているものも違いますが、「ここだけはブレちゃいけない」という共通の価値があれば同じ方向に進むことができます。「この技術は面白い」「これができたら世界が変わる」といった技術者として分かりやすい価値を、チーム内で共有していきたいです。
――部署内の若手技術者との関わりでは何を大切にしていますか?
以前の上司が「前向きなチャレンジはやらせてあげよう」と、興味の赴くまま裁量を持って研究に取り組ませてくれたことが成長のプラスになったので、私も踏襲しています。同時に、チーム内で新たな取り組みや変更の提案が出たら、「変えない理由がないなら変えてみよう」と積極的に採用しています。若い人は新しいITツールになじむのも早く、彼らから学ぶことも多いですね。
――最後に、未来のチームメンバーへのメッセージをお願いします。
当社の技術部門では「不定形」な業務が多く、若手でも指示を待つより仕事の目的を自分なりに咀嚼(そしゃく)して何をやるべきかを考え、課題意識を持って提案までできる自立した人が活躍しています。
今後入社してくる人には、好奇心を持って未知の分野や人と接しながら、自分が胸を張れる得意領域を作り出してほしいです。好奇心が行動につながれば、仕事で期待以上の成果を出すための情報の深掘りや、追加の実験が新たな価値を生み出します。自分の仕事に深い好奇心を持って、「この技術でこんなこともできるんです」と自慢するような人とぜひ一緒に働きたいですね。
私は物事の仕組みを知ることが好きというベースを大事にしながらキャリアを歩んできたので、仕事やキャリアの選択に迷う人には、「自分のやりたいことをしっかり考えて」と伝えたいです。
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※所属・内容等は取材当時のものです。
編集後記
要素技術の先にある製品の社会的な役割まで、透徹した視点を持つ技術者を育んできたパナソニック インダストリー株式会社。自身の研究経験を生かして働きたい理系就活生は、BtoBという形で社会と深くつながるからこそ実現できる共創の醍醐味をかみしめながら、同社で技術者としての豊かなキャリアを積み重ねてほしい。