自前の発電所を持つ唯一無二の鉄道会社

――入社前はどんな分野を研究していたのでしょうか。
石井:学生時代は電気電子工学専攻でした。電力は世の中に不可欠だと感じたことをきっかけに、高電圧によるプラズマ発生などの化学反応に興味を抱き、大学4年から大学院2年までプラズマを使った水処理などを研究しました。
就職を考えたとき、電力関係の知識を生かしてサービスを提供するインフラの仕事に関心を持ったんです。電力に注目すると、JR東日本は発電所や送電ネットワークなど電力会社のような機能を持ち、自営電源供給が可能。これは他の鉄道会社にはない大きな特徴です。発電から消費までトータルで電力に関わる環境で、専門性を生かして活躍したいと入社しました。
皆藤:高専から大学3年に編入し、大学院に進んで太陽光発電システムの制御方式を研究しました。就職活動では最初、電力会社を考えていたのですが、あるとき自分は日常的にお客さまの顔が見える仕事が向いているのではと思ったんです。そこで、お客さまとの接点として「駅」がある鉄道会社に可能性を感じ、当社を選びました。
「解決策は必ずある」と挑んだ大型プロジェクト

――お二人は、東京で2010年代にはじまった「品川開発プロジェクト」に参画されたそうですね。どのようなプロジェクトか教えてください。
石井:品川駅周辺の街づくりとしてビルや公園などの新しい施設を建設しながら、並行して隣の高輪ゲートウェイ駅と駅前エリアの開発も行う非常に大掛かりなプロジェクトです。複数の鉄道会社、東京都、UR都市機構など多くの組織が関わっていて、壮大な都市計画の段階から、具体的な細部まで、当社も含めた関係者が提案しながら計画していきました。
品川は交易の玄関口として歴史のある土地で、車両基地もあったため、まず開発の課題について議論や交渉が必要でした。数年かかる線路の移設、駅拡大のための地盤作りと建物の新設など、さまざまな計画が複合的に進行しています。高輪ゲートウェイ駅は2020年に開業しましたが、今後、プロジェクトI期のまちびらきが2024年度末に控えています。
――お二人が担った役割についてお聞かせください。
石井:私は高輪ゲートウェイ駅や品川駅の開発や線路上空の道路建設など、線路に近い部分のプロジェクト工事の電気関係に関わりました。電気関係だけでも電車線、配電、変電、送電、信号、通信、ビルの7系統があり、私は系統間の人員や意見の取りまとめ、予算・工程管理、関係者間の橋渡し役を担当しました。
電気以外に、土木、建築、機械、保線などの部署もあります。電気系統の仕様が全体構造に影響する部分では、まず電気系統の担当同士で話し合ってから他部署と調整するなど、質・量ともに高いコミュニケーションが求められました。
皆藤:私は駅の配電設備の仕様決定や設計を担当しました。当社では駅構内の照明や電源、運行状況を表示する発車標などをまとめて配電設備と呼びます。約10人のチームで配電設備を設計し、当社の監督員や請負会社まで、配電系統の設計方針策定や取りまとめを行いました。
設計では、鉄道としての「安心安全」を最優先しつつ、建築意匠に合わせることも求められます。駅らしさと独自性を両立するデザインを、若い設計者たちとともに手がける中で、若手の目覚ましい成長を見ることもできました。
――東京でも有数の利用者規模の品川駅に加え新しい駅ですから、途方もない作業量かと思います。携わった期間を通して、どんなやりがいを感じましたか?
石井:期限内の決定を担当者に促しつつ、スケジュール通りに人が動いてくれる方法をいつも考えていました。常に課題が満載でしたが「協力すればできないことなんてない。必ず解決策はある」と思って取り組みました。
約3年このプロジェクトに関わり、今や高輪ゲートウェイ駅は山手線の一つの駅です。新駅の開業は珍しいことなので、自分が携わった駅が話題になっているのを聞くと、「やってよかった」と思えます。完成に向けて、膨大な数のステップを踏む仕事の規模感も大きなやりがいでした。
皆藤:私も2018年から約3年、このプロジェクトに従事しました。高輪ゲートウェイ駅は起工が2017年、竣工が2020年3月なので、ほぼ全期間携わっています。この駅は世界的な建築家、隈研吾氏による設計。明確なビジョンがある建築意匠に対して、鉄道会社としての安全性と経済性を考慮しながら時に再検討のお願いなどもして調整をしていく、非常にやりがいの大きい仕事でした。
特に照明が駅の印象を左右する建築でしたので、隈先生には何度か現場に足を運んでいただき、照明器具の配置や角度等について細かくアドバイスをいただきました。照明以外にも、先生の建築に対する強い思いを随所に感じました。例えば、「お客さまからケーブルが見えないように」という強い思いを実現するために、建築部門や監督員、請負会社、照明デザイナーやメーカーを巻き込んで、ケーブルがほぼ見えない構造を実現しました。そういったことを積み上げて、駅とまちが一体に感じられる高輪ゲートウェイ駅ができたのかなと思います。駅開業の1カ月前に隈先生の最終確認が終わり、改札前で関係者が揃って写真撮影をした際は、プロジェクトの完了を感慨深く思いました。
当社のリーダーシップで歴史あるエリアの街づくりを進め、高輪ゲートウェイ駅を街のランドマークとして作り上げた社会的インパクトは大きいです。この先、駅を起点に街づくりが進み国際ビジネス交流拠点なども作られていきますから、日本に新たな価値を生んだと自負しています。
異動の希望がかなって建設工事の職場へ

――お二人はこれまで、どんな業務を経験してきたのでしょうか。
皆藤:入社から3年は、鉄道電気設備の保守を行う現業部門に所属していました。その後、現業部門を統括する支社企画部門に異動し、電気関係のルール策定等に従事しながら、電気に限らず鉄道全般の知識を習得しました。次に建設工事部門で新幹線指令所や駅の電源設備等の設計を担当しました。
その後、「工事区」と呼ばれる工事監督を行う現業部門に異動し、技術的な業務以外にも、人材育成や勤務管理等のマネジメント業務も行うようになりました。工事区は監督員として設計部門や請負会社等と連携し、鉄道運行を守りつつ、大規模工事を推進する職場ですが、業務を通じて若手社員を一人前の社員に育てる役割もあります。工事区では、人を育てる責任感や、プロジェクトの先頭に立って現場を指揮する面白さを知りました。
再び設計部門に異動してからは、グループリーダーとして品川開発プロジェクトの他に東京駅などの配電設備設計も担当。主要駅では一つの電気トラブルが及ぼす社会的影響が大きいため、スケジュール管理や仕様に気を使いながら、若手の育成にも励みました。現在は石井と同じ本社電気ネットワーク部で、電気部門の予算の取りまとめや、電気関係のプロジェクトの計画策定、意思決定のプロセスなどに参画しています。
石井:私は入社当初、列車への電力を供給するための「電車線路設備」の保守を担当していました。3年目に保守部門から建設工事部門へ異動し、担当設備も電車線から配電へ。最初は中規模の駅の配電設計を手がけながら技術を身につけました。
そのうちに、プロジェクト工事の計画から実行の流れに興味を持ち、プロジェクト上流の意思決定方法などが知りたくて異動を希望したんです。設計を始めて3年後、プロジェクト工事の予算や工期の「計画」の仕事を担当できることに。プロセスの決定方法や計画のまとめ方も勉強し、どんどん建設工事の上流の業務を経験していきました。
やがて品川駅などの大型プロジェクトの取りまとめを担当するようになり、配電でも複数の電源設備を念頭に試行錯誤するなど新しい経験も。規模の大小は仕事の重要度と関係ありませんが、貴重な経験でしたし、大規模な仕事ならではの面白さを知りました。
人と関わりながら、人の暮らしを支える仕事

――転職かと思うような多様な仕事に、社内で取り組んでこられたことがうかがえます。社内制度や福利厚生など、働きやすさはいかがですか?
石井:大枠のスケジュールは決まっているものの、その中では自分のペースで仕事を進められ、自由に意見が言える職場です。育児休業制度を利用する社員も多く、制度面も充実していますね。
仕事の種類も豊富で、現在はインドの高速鉄道プロジェクトなども進行中です。海外事業展開に伴い、語学研修制度での留学、毎年のTOEIC受験、オンライン英会話レッスンなどもあるので、仕事を楽しみながら自分磨きもできますよ。資格取得後に受験料が全額返還される支援制度もあります。
皆藤:当社独自の福利厚生として「カフェテリア・プラン(選択型福利厚生制度)」があり、付与されるポイントを使って育児や介護支援サービス、人間ドック、宿泊施設やレジャー施設などが利用できます。各地に社宅や寮がある他、賃貸物件の家賃補助もあります。
――最後に、今後どんな人と働きたいか教えてください。
石井:さまざまな人と相談しながら一緒に進めるプロジェクトが多いです。人と関わることが好きで、人の生活という社会の根幹を支えることにやりがいを感じる人と働きたいと思っています。
皆藤:社会を支える電気技術者として、さまざまなフィールドで多種多様な考えを持つ人と仕事をするので、視野や知見が広がります。社会の安全や安定を守ることを変わらぬ使命として真摯に取り組みつつも、仕事にオリジナリティーを出せる人が活躍できると思います。
東日本旅客鉄道株式会社の 「企業情報」をチェック!
品質管理・メンテナンスの募集要項は こちら
編集後記
男女を問わず、柔軟に経験値を高めながら大型プロジェクトに従事できる面白さは、社会的インパクトの大きい事業を手がけるJR東日本ならではだろう。知的好奇心から配属希望を出せる点や、充実した支援制度や福利厚生など、働きやすさも満点の環境で、技術者としての成長を実感してみてはいかがだろうか。