決め手は、グローバル志向の開発ビジョン

――大学での研究や就職活動の経験をお聞かせください。
学生時代は画像認識を研究していました。視覚障害者をサポートするシステムの構築がテーマで、そこからソフトウェア開発に触れ始めました。
私が学生の頃はスマートフォンが普及する前でしたが、ネットワークに関わるソフトウェアの仕事に興味があって。当時のACCESSは、インターネットテレビやワープロ専用機に搭載する「インターネット閲覧ソフトウェア」を開発して国内市場を牽引していました。さらに、携帯電話用の「コンパクトHTMLブラウザ」も開発し、ドコモのiモード向けに提供するなど、アグレッシブに開発を行っているなという印象でした。
その頃、国内のネットワーク関連の仕事は大手のネットワーク系商社がほとんどを占めていました。私が大手でなくACCESSを選んだのは、説明会で聞いた「日本から世界に向けてソフトウェアを開発・提供する」というビジョンに引かれたからでした。
――実際に入社していかがでしたか?
夢があってすごくワクワクする会社だと感じた、入社前のイメージそのままでしたね。いきなり新卒で海外の大手電子機器メーカー向けのブラウザ開発チームにアサインされ、グローバル規模のプロジェクトでエンジニアとして働き始めました。
ブラウザの標準開発の経験を積んでいき、開発チームで技術リーダーを務めた後、新規事業の検討などいくつかの業務を担当。現在はブラウザチームに戻り、「組み込みブラウザ」という製品開発のマネジメントに関わっています。海外の開発チームとの連携や、お客さまへのブラウザの説明、新規提案、要件定義などが主な仕事です。
PCやスマホ用とは違う「組み込みブラウザ」の面白さ

――組み込みブラウザとはどんなソフトウェアなのでしょうか。
組み込みブラウザはテレビや車載などで使われるブラウザで、一般的にイメージするPCやスマートフォンのウェブブラウザとは別物です。テレビや車という動作環境では、使えるメモリやCPUのサイズが限定されるため、「ローエンド環境でも動く」ことがポイントの一つ。テレビだとチューナーとの連携などテレビ特有のハードウェアとの連携するための独自仕様があり、それらがブラウザ上で動作するための拡張も行っています。また、最近ではコネクテッドTVとしてDisney+やABEMAなど動画配信サービスをみる需要も増えており、そのようなサービスをテレビで見られるようにするということも行っています。
もともと組み込みブラウザは当社が独自に開発していましたが、最近はオープンソースで開発する方式に変わりつつあります。当社には標準版の製品が3種類あり、個々の動作環境向けのカスタマイズや組み込み先に合わせた独自機能との連携を加えます。プラットフォームとブラウザをつなぐ移植層の開発の他、テレビや車載の独自ウェブサービスの閲覧機能の追加などにも対応していますよ。
ブラウザ開発は、ウェブの標準仕様のアップデートに合わせてバージョンアップを続ける必要があるため、終わりがありません。アップデート時の追従しやすさを考えた設計や工程の管理も重要です。
――開発目線で、組み込みブラウザのどんなところに将来性を感じていますか。
「車」が一つのキーワードですね。以前、アメリカで行われる世界最大級の家電・IT見本市「CES」で、車内の前面にフル液晶画面のブラウザを搭載していて、動画鑑賞やリモート会議に使える電気自動車の展示がありました。それを見て、渋滞の時間も有効活用できる未来が近いと感じましたね。トレンド化しているVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスも、今後は車載分野にも広がっていくでしょう。
自動運転が普及すれば、車内のプライベート空間で有意義な時間を過ごすために組み込みブラウザの需要が高まるはず。さらに現在、スマートフォンで操作しているように、組み込みブラウザで車の内外の連携ができるようになれば、車全体がスマート化します。当社は既にお客さまと協力して、こうした新たなブラウザ利用を提案中です。
「深掘りしたい領域」の専門性を追求

――組み込みブラウザ開発の具体的な進め方や、若手エンジニアの関わり方を教えてください。
組み込みブラウザの開発は、お客さまの要望のヒアリングが起点です。オープンソースのロードマップに沿ってブラウザがアップデートするタイミングで、当社もお客さまのニーズに合う新しい機能やインターフェースの追加をグローバルで議論し進めていきます。
ブラウザはOSなどと同様に、大がかりな開発が必要なソフトウェアで、ソースコードは1000万行を超えるほどです。そのため、1人で全てを把握することはできません。新卒などの若手エンジニアは、デバッグやバグフィックス、調査を経験してブラウザに慣れてから、徐々に作業領域を広げます。
その中で、自分の専門領域を作ることも大切です。メディアやネットワークに関する機能、JavaScriptといわれるウェブコンテンツの機能など、領域は細分化されています。好きな部分や得意な部分を見つけて、「ここを深掘りしたい」と感じる領域のスペシャリティを目指してもらうようにしています。経験値が上がれば独自機能の開発やお客さまへの新規提案なども任されますが、最初は先輩の同行や指導があるので安心です。
――エンジニアの学習意欲に応える社風や制度はありますか?
「やりたい」と手を挙げればやらせてくれる文化があるため、興味を持ったことに取り組みながら成長できます。非常に優秀な技術者も多く、私も若手の頃は先輩や上司にコードレビューをしてもらいました。できなかった設計ができるようになり、自分の成長が実感できてうれしかったですね。
「スペシャリスト制度」という仕組みの下、当社に在籍する各分野のトップエンジニアを講師に迎え、勉強会を毎週開催しています。ブラウザ分野ならACCESSのブラウザ製品の開発状況やOSSのロードマップの確認、ドキュメントやソースコードの輪読、若手の勉強のアシストなどを行い、各人のスキルやノウハウの高度化に努めています。
――成長の機会が豊富な環境ですね。ものづくりの組織体系はどうなっていますか?
主にドイツ、韓国、台湾に子会社があり、ブラウザは日本、ドイツ、台湾の3カ国合同チームで開発しています。時差はありますが、合同開発を始めて十数年なので進め方も確立されており、気軽にコミュニケーションを取りながら開発しています。コロナ以前は年1回集合してディスカッションを行っていましたが、最近はデイリーミーティングやスクラムミーティングを主体にしています。
海外のお客さまも多いため、現地にチームがある利点は大きいですね。各拠点に標準知識があることで、メンバー全員が責任を持ってお客さまに自分たちの製品を提案できることがメリットです。日本から海外拠点のサポートに行くこともあり、グローバルな活躍のチャンスもありますよ。
ブラウザ開発には技術的な喜びと社会的インパクトがある

――エンジニアにとって、ACCESSの仕事のやりがいは何でしょうか?
ブラウザを扱う企業は世界でもごくわずか。グローバルかつ独自性のある最先端技術に関わりながら、ブラウザという大規模なソフトウェアを理解する技術的な喜びは大きいです。当社にはブラウザ開発の十分な知見があるため、お客さまの要望に対して将来を見据えた提案ができるのも醍醐味ですね。
――今後チャレンジしたいことはありますか?
お客さまがいて、動かすサービスがあるからブラウザは必要とされます。当社製品だけでなくお客さまの最終製品を一緒に盛り上げることで、エンドユーザーにとってより価値ある開発ができたらと思っています。
車載についてはブラウザの価値や優位性をお客さまに提案し、各車に合った使い方を見いだしたいですね。テレビや車載以外の幅広いお客さまにACCESSのブラウザを使っていただくことも目標の一つです。
――最後に、一緒に働きたい人材像やメッセージをお聞かせください。
難しいことに挑戦するマインドを持ち、技術を楽しめる人とぜひ一緒に働きたいです。プロジェクトにアサインされるのを待つ受け身な人よりも、自らやりたいことや挑戦したい気持ちを発信できる人のほうがやりがいを感じやすいはず。自分から新技術を調査し、質問して周りを巻き込める人なら、どんどん成長していけます。
組み込みブラウザはBtoBtoCの分野で、多くのサービス、社会、人を「縁の下の力持ち」として支えるプラットフォームです。目立たなくても、実はさまざまな機器に搭載されており、世の中の役に立っています。難しい動作環境でもACCESSの技術でお客さまの実現したいサービスを動かし、事業を動かす力になる喜びを感じてみてください。
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#### 編集後記
組み込みブラウザは、IoT社会の発展とともに需要の高まりとハイスペック化が予想される。世界でも数少ない組み込みブラウザ開発の現場では、深みのある技術の習得と、エンジニアとしての飛躍が期待できそうだ。ACCESSという世界標準の技術者集団の一員となってスキルを磨き、ブラウザ開発の道を究めてみてほしい。
※所属・内容等は取材当時のものです。