北海道大学大学院 情報科学院 情報理工学コース
山嵜聖也さん
研究内容>人工生命。コンピューターシミュレーション上で、鳥のさえずり文法が自然と出来上がるようなモデルを作り出すことを目標とした研究。言語の起源、特に文法の起源に関して、計算機シミュレーションを用いることで、そもそもどうしたらこのような構造が生まれるのかを研究。
内定先企業>株式会社ARISE analytics
就活全体スケジュール
- M1・4月:LabBaseに登録。
- 7月:ARISE analyticsからスカウト。博士進学と迷っていたため辞退。
- 8月~9月:博士進学を断念。気になる企業(主に大企業)とWEB面談。
- 9月:ARISE analyticsから再スカウト。WEB説明会に参加。
- 10月~3月:合同説明会、体験会、インターンに複数参加。
- 11月:ARISE analyticsオフィス見学。
- 2月:ARISE analyticsにES提出、選考に進む。
- M2・4月:約10社にES提出。
- 3月~4月:東京開催の合同説明会などイベントに合わせて面接、オフィス見学を設定。
- 5月:ARISE analytics内定。
大学院では研究に没頭。国際・国内学会での発表も自信に。
———山嵜さんの研究内容について教えてください。
ウグイスの鳴き声を思い浮かべてください。“ホーホケキョ”ですよね。これが、どうしてこの順序になったのかというところに目をつけました。実は鳥同士は声を真似し合うと言われていて、真似するだけではみんな同じになってしまって都合が悪い。なので、真似する一方で、真似されないようにもしているのではないか、我々はこの仮説を敵対的模倣と言っていますが、深層学習を用いて様々なシミュレーションなどしながら研究をしています。

———その研究を選ばれたのはどうしてですか?
最初は人間の心理や感情に興味がありました。
人間の感情がどのように生まれるのか、感情のモデル化の研究を研究したいと教授に相談したところ、いきなり感情を扱うのは難しいからまずは言語からアプローチしてみてはどうかと言われました。もう一つは、AIを勉強して、将来社会に役立つような研究者になりたいなという思いもありました。その2点です。

———国際学会や国内の学会でも受賞されていますね。
国際学会は修士1年の7月で、ポスター発表を行いました。国内の学会もポスター発表で、他の発表者と比べてAIをどこに生かすかというテーマ設定が変わっていたようで、異色の論文が受けたんだと思います。ほとんどが研究内容を社会へ応用しようとするものだった中での鳥の鳴き声の研究というところで(笑)。
初めは給料軸。企業と会って話す中で、仕事軸に。
———では実際の就活について詳しくお伺いします。就活開始当初、軸はどんなところに置いていましたか?
M1の4月か5月ごろ、就活を始めたころは給料軸でした。そんなに裕福な家庭ではなかったので、どんな仕事でも環境でも、お金さえあればなんとかなると思っていました。なので、大企業であれば基本的には給料もいいので間違いないかなと考えていました。今思えば、暴論ですね(笑)。それが、WEB面談や説明会で企業担当者や先輩社員をみているうちに、給料だけじゃないんだな、給与よりも仕事が楽しい方がやりがいがあるし、好きな仕事をやりたいなと思うようになりました。
———実際にどんな企業とどんな形でお会いになりましたか?
LabBaseに登録してプロフィールを入力したのがM1の4月、POLのインターンの方が研究室に来てくれたことがきっかけです。それからいろんな企業からスカウトをもらうようになって、実際にWEB面談を始めたのが8月、9月くらいです。
そこまでは、まだ博士進学も念頭に置いていたため就活のアクションをそこまで取る気になれなくて…。でも、学振が取れるかどうかも確信が持てなかったため、就活を決意しました。
10月からは、合同説明会や体験会に何度か参加しました。大手通信会社の1DAYインターンに参加したのもこのころです。このときにSEの仕事体験をさせてもらい、ちょっとイメージと違ったというか、自分には合わないなと感じました。
そこから徐々に企業の方々と面談する中で、給料が大事だと思っていたけれど、仕事の内容の方が大事なんだということに気づきました。就活軸がはっきりと変わったのが3月ごろです。

大手なら安心と思っていた。インターンで気づいた違和感と気持ちの変化。
———インターンでは具体的にどんなところに違和感を持ちましたか?
大手通信会社でいうと、SEとしてロールプレイングのようなことをしたのですが、技術的な知識はさほど必要でなく、ベンダーが持っている情報を取り寄せればいいだけで、実際の業務は予算と組み合わせて提案するとかマネジメントに近いことなんです。プログラミングと言えばルーティングテーブルを作るくらい。上流工程だから考えてみれば当たり前なんですが、自分が思っていたSEの仕事ではありませんでした。「SE=技術」と思っていましたから。ここから、自分は最新の技術に関わっていたいんだという価値観に気づきましたね。
金融企業のクオンツについてのインターンにも参加させていただいたのですが、講義と演習みたいな感じで、ちょっとお堅いイメージで正直つまらない印象でした。
3月までにいろいろな企業のインターンに参加しました。家電メーカーや工作機械メーカーなど、複数インターンをしてみて、自分はどんな仕事がしたいのか考えが深まってきたと思います。大手であっても、使っている技術が古い場合は物足りなさを感じましたね。
———インターンでの経験を経て、どんな仕事がしたいと思いましたか?
基本的に、自分のやってきた研究に少しでも触れるような仕事がいいなということ、そして最新の技術に触れたいということです。現時点では、プロジェクトマネジメントのような上流工程より、自分が最新の技術をゴリゴリ動かしたいんだと認識しました。

“働いている人の魅力”も重要な判断軸に。
———アプローチする中で、おもしろいと思った企業、惹かれた企業を教えてください。
ザイマックスさんとは長い間連絡を取り合っていました。不動産投資を中心にビジネス展開している会社です。札幌での体験会では不動産マネジメント業務を体験し、仮想M&Aを考えたりしました。
———ご自身の専門とは領域が違いますね!?
そうですね、まったく違います(笑)。でもせっかく自分に声をかけてくれたので、視野を広げるのもいいかなと思って参加してみたんです。体験会で社員の方のお話を聞いたり、食事に連れて行ってもらったり…。技術はそれほど最新でもないし、自分の専門分野ではなかったのですが、会う人がみなさんすごくいい人で、優しくて話しやすいんです。コミュニケーション能力が本当に高いんですね。ザイマックスさんに出会って、就活の軸に“働いている人の魅力”が加わりました。仕事への情熱もすごく伝わり、一緒に働けたらなと思いました。二次面接まで進みましたが、先にARISE analyticsさんの内定がもらえたのでお断りしました。
———通信、金融のインターン、不動産への応募と幅広く見られてきた印象です。他にどのような企業アプローチをしましたか?
M2の4月から10社くらいにエントリーシートを出しました。メーカー系5社、データサイエンス系2社、ザイマックスさんとARISE analyticsさんです。大学院の推薦枠がいくつかありましたが、推薦で受かったらそれ以上の選択肢がなくなること、また、結果が出るのが遅いという理由でエントリーはしませんでした。その辺りの話は研究室の友人とよく話しましたね。メーカー系を受けたのはなんとなく、先輩が受けたり就職したりしているのをみていたからで、決定的な理由はありませんでした(笑)。面接の練習にもなってよかったです。
地方就活の苦労も…。
———たくさんの企業の選考を北海道でとなると大変ですね!
M2の3月~4月は面接がたくさんありました。メーカー系はほぼ東京だったので、交通費を出していただける企業の面接に合わせて他社の面接を入れたり、交通費支給の企業説明会と組み合わせたりという工夫をしながら、なるべく出費を抑えて、という感じでしたね。北海道で一次面接できるという企業もありました。
研究内容をちゃんと聞いてくれるかどうかが企業の印象を左右する。
———面接での手ごたえや、選考が進むにつれての気持ちの変化など教えてください。
研究内容に興味を持ってもらえたか否かはその企業の印象を決める判断軸になりました。その点ではARISE analyticsさんは一番興味を持ってくださって、質問も的確でまるで学会の質疑応答のようでした(笑)。例えば、「カオス時系列ができた」という結果に対して、「そもそも」の質問をしてくださって。答えづらい質問もありましたが、それは研究内容を理解し、興味を持っていただいているからこそ出るものですよね。僕も「どう思いますか」と逆質問するなど、ディスカッションのような面接になって手ごたえもありました。
逆に、別の企業では質問のポイントがずれていたり、こちらの回答を理解せず同じ質問を繰り返されたこともあったので、そういう企業に対しては志望度合いが下がっていきました。
———ARISE analyticsさんに決めた決め手はどんなところでしたか?
最初にスカウトをいただいたのはM1の7月で、一度辞退してからの説明会参加という流れでしたが、終始いい会社だなという印象でした。会社見学もできたので、どんな業務か、働いている人はどうかなども確認することができました。
ベンチャー企業ですが、KDDIのデータリソースとアクセンチュアの技術を扱うことができます。そんな潤沢な環境でデータサイエンティストとしての経験を積めることは魅力的に思えました。また、若いうちはデータサイエンティストとして実績を上げて、30歳、40歳になったらコンサルに移るなど社内でジョブチェンジできることもいいなと思いました。
社会に役立つ仕事ができるように、主体的に仕事に取り組みたい。
———就活を始めたころは大企業を志望していましたが、ベンチャー企業に心配はありませんか?
知名度もなく、何をやっているのか不透明な会社、企業コンプライアンスに対して意識が低い会社などは心配ですが、ARISE analyticsさんに関してはその心配はありませんでした。
また、ベンチャーは自分が勉強しないと仕事が成り立たないところも魅力的です。大企業だと与えられたタスクをこなすというイメージがあり、情報や技術を自分でキャッチアップしていく必要がある環境の方が自分に合っていると思いました。
———今後のキャリアについてどのように考えていますか?
今はまだ具体的に何をしたいということはありませんが、社会に役立つものを作れる人になりたいなと思っています。まずは頭も体も若いうちに、データサイエンティストとして打席にたち続け、実績をあげたいですね。その後は、コンサルなど社内でキャリアの幅と選択肢があるので、しっかり検討していきたいと思っています。
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